FC2ブログ

脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

11.04.02. Heparin-Induced Thrombocytopenia (HIT)の診断と治療

目次
11.04.02. Heparin-Induced Thrombocytopenia (HIT)の診断と治療
○ 臨床的に重要なthrombocytopenia(<100,000/μL)は内科的、外科的ICUsの13-35%.
最も一般的に素因となる状態はsepsisとDIC
ICUで最も遭遇し易い血小板減少症の原因は
・Systemic sepsis---Acetaminophen,
・Disseminated intravascular coagulation(DIC)---Heparin,Quinidine,
・Thrombotic thrombocytopenia purpura(TTP)---Rifampin,
・HELLP syndrome (Hemolysis, Elevated Liver enzymes, Low Platelets)
---Trimethoprim-sulfamethoxazole
○ Heparin-Induced Thrombocytopenia(HIT)---Heparin 最も注意すべき
Heparinは血小板の上のヘパリン結合蛋白(血小板第4因子)と結びついてIgG抗体の形成を引き起こす抗原複合体を形成する。これらの抗体は血小板に結合して交差架橋cross-bridgeを形成し血小板凝集を起こす。もしも十分に重症ならばこの過程は消費性血小板減少となり臨床的に明らかな血栓症となる。
○ 臨床像:ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は典型的には50%かそれ以上の血小板数の大きな減少として、最初のヘパリンの曝露後5-10日目に現れる(以前にヘパリンに曝露されていると発症は早くなる)。皮下注のヘパリンからのHIT Ptの5-10%は注射部位周囲の発赤となりheparinn IV Ptの25%は発熱、悪寒、頻呼吸、頻拍、呼吸速拍を含む全身反応となる。
○ HITの主な合併症は血栓症であり、出血ではない。HIT Ptのおよそ75%は有症状の血栓症を起こす。それには下肢の深部静脈血栓症(Ptの50%)、上肢(10%)、肺塞栓(25%)、四肢を含む動脈血栓(5-10%)、血栓性脳卒中(3-5%)、AMI(3-5%)、副腎出血性壊死を伴う副腎静脈血栓(3%)を含んでいる。
○ 危険因子:HITのリスクは低分子ヘパリン(LMWH)より未分画ヘパリン(UFH)で大きい。
UFHからのHITのリスクは整形外科手術で大きく(3-5%)、心臓外科(1-3%)で、一方UFHを受ける内科的Ptの約1%がHITになる。LMWHからのHITのリスクは整形外科手術で約1%、その他の臨床的状況では1%以下である。
・HITの重要な像の1つは非常に少量のヘパリンの投与で起こることである。これはヘパリンフラッシュやヘパリンコーティング肺動脈カテーテルの少量でこれにより血小板減少症が起こる。
○ 診断:HITの診断には高頻度にありそうな臨床的シナリオ(すなわち、ヘパリンを開始後5-10日後に発症する血小板減少症で全身的血栓症を伴っている)と、ヘパリン―血小板第4因子複合体に対するIgG抗体の血清学的証拠が必要である。抗体assayはPt血清のサンプルに加えた14Cラベルしたセロトニンの血小板からの放出を測定する。抗体assayは陽性でもHITの確診はつけられない。なぜならこのassayはヘパリン―血小板第4因子複合体に対する非病理的IgG抗体を検出するから。それで抗体assayはHITの診断を付ける臨床的に示唆するシナリオと結びつかなくてはならない。
○ 急性期管理:HITが初めて疑われたらヘパリンの曝露を中止しなくてはならない。ヘパリンフラッシュを止め、ヘパリンコーティングカテーテルを抜去することを覚えておくべし。もしも抗凝固が必要ならば2つの直接的血栓阻害薬が使える。レピルディンLepirudinとargatroban。これらの薬物は凝固結合したトロンビンを阻害する。これらはヘパリン抗体と交差反応しない。
○ Anticoagulation with Direct Thrombin Inhibitors
Clearance (lepirudin) Renal (Argatroban) Hepatic
Prophylactic Dose (lep) 0.10mg/kg/hr IV or 25mg SC every 12h (arg)-
Therapeutic Dose
(lep) 0.4mg/kg IV bolus, then 015mg/kg/hr (max wt=110kg). Adjust dose
(arg) Start at 2μg/kg/min & adjust dose to PTT=1.5-3×control.
Max. rate=10μg/kg/ min.
Dose Adjustments:
Renal insufficiency (lep) See Appendix 4 (arg) No dose adjustment
Liver failure (lep) No dose adjustment (arg)↓initial dose rate to 0.5μg/kg/min
◍ Lepirudin:(ヒルの唾液の成分)hirudinからの遺伝子組み換えで、HITのPtの血栓塞栓症の予防と治療にうまく使える。レピルディンは腎臓で除去され、腎不全のために投与量の調節が必要である。もう1つの血栓阻害薬アルガトロバンは投与量調節がいらないので腎不全には好ましいかもしれない。
◍ Argatroban:アルガトロバンはHITのPtの血栓塞栓症を治療するのに上手く使われてきた。この薬は肝臓で除去される。肝不全では投与量調節が必要でlepirudinは調節が必要ないので肝不全の時はlepirudinが好ましいかもしれない。
○ 長期管理:ヘパリン抗体は最初の曝露後、血小板減少症が解決した後も長く100日以上長期に存在するかもしれない。血流内にこれらの抗体が存在する間できるだけ長くヘパリンは再投与されるべきでない。血小板減少症が解決した後、長期の抗凝固としてCoumadinワルファリンが使える。しかし、CoumadinはHITの急性期に使うと四肢の壊死を起こす危険性がある。
◇ Paul L Marino. Thrombocytopenia in the ICU: The ICU Book. 3rd ed. Lippincot W&W 2007: P682-685 <6/22/2012>

○ HITの診断と治療
・ヘパリン投与中もしくは投与後の血小板数減少(血栓症を併発する場合がある)
⇒血小板数がヘパリン投与前と比べ30%以上の減少 
or 血小板数がヘパリン投与後10万/μL以下に減少
⇒4T’sスコア4点以上でHITが強く疑われる
⇒全てのヘパリン投与中止、出血のリスクを考慮して抗トロンビン剤を開始
 (HIT抗体検査実施が望ましい)
⇒血小板数が回復し、安定するまで抗トロンビン剤を投与
○ 4T’sスコアリングシステムによるHIT臨床診断
(1)Thrombocytopenia(血小板減少症)
2点:最低値が2万~10万/μL(少なくとも30%以上の低下)もしくは50%を越えた低下(血小板最低値が2万/μL以上)
1点:最低値が1万~2万/μL未満もしくは30~50%の減少(あるいは外科手術に伴う50%を超える減少)
0点:最低値が1万/μL未満もしくは30%未満の減少
(2)Timing of platelet count fall, thrombosis, or other sequelae(血小板減少、血栓症、その他の続発症の発症時期:ヘパリン投与開始日を0日とする)
2点:投与後5~10日の明確な発症、もしくは過去30日以内のヘパリン投与歴がある場合の1日以内の発症
1点:投与後1~10日の不明確な発症(たとえば血小板数測定がなされていないための不明確さ)。10日以降の血小板減少。過去31日から100日以内のヘパリン投与歴がある場合の1日以内の発症
0点:なし
(3)Thrombosis or other sequelae (e.g., skin lesions, acute systemic reaction) (血栓症や皮膚障害、急性全身反応などの続発症)
2点:新たな血栓症の発症。皮膚の壊死。ヘパリン大量投与時の急性全身反応。
1点:血栓症の進行や再発。皮膚の発赤。血栓症の疑い(まだ証明されていない)。症状のない上肢の深部静脈血栓症
0点:なし
(4)Other cause for thrombocytopenia not event(他に血小板減少の原因が存在しない)
2点:明らかに血小板減少の原因が他に存在しない
1点:他に疑わしい血小板減少の原因がある
0点:他に明確な血小板減少の原因がある
4つのカテゴリーにそれぞれ0,1,2の点をつけて、その相輪で判断(最大8点)
HITである確率:0,1,2,3=低い、4,5=中間、6,7,8=高い
◍治療:スロンノンHI注(argatroban) 通常、成人にアルガトロバン水和物として0.7㎍/kg/分より点滴静注を開始し持続投与する。なお、肝機能障害のあるPtや出血のリスクのあるPtに対しては低用量(0.2㎍/kg/分)から投与を開始すること。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を指標に投与量を増減し、Pt毎の投与量を決定する。
◇ Warkentin TE. Heparin-Induced Thrombocytopenia, 521, 2007 ◆ 宮田茂樹:Annual Review 血液. 199-210, 2008 <6/23/2012>

○ [経験] 明らかなHITの経験はないが、脳外科の非手術例で疑診例。Case:40歳台♂。1年前から疼痛(頸部痛)等、不定愁訴で休職中。3か所の病院で受診。当院脳外科外来受診中に強直間代性痙攣を起こし、入院となった。BP150/84,P97bpm,BT36.5℃,SPO2;97%、JCS0. 痙攣に対しアレビアチン250mg(フェニトイン)1/2Ap IV、ジアゼパム5mgIV。その後、デパケンシロップ内服。頭部CT,MRI検査で右前頭葉皮質下出血、上矢状静脈洞血栓症の診断を得た。さらに痙攣ありアレビアチン250mg(フェニトイン)1/2ApIV。入院時(0日目)血液生化学検査:TP7.4, Alb4.4, ALT208, AST47, ALT127, rGTP91, LDH402, CPK94, WBC6400, RBC310, Hb11.2, Ht34.1, plt12.7であった。翌日(1日目)静脈洞血栓症に対しヘパリン(UFH)を10000単位/NS/24hrで投与開始した。2日後(3日目)血液生化学検査:TP6.3, Alb3.7, ALT145, AST30, ALT68, rGTP79, LDH379, CPK1896, アンモニア88, CPK5.89, WBC4200, RBC255, Hb8.9, Ht27.8, plt6.8, APTT26.8(control28.6)と汎血球減少とpltの約6万(50%)低下を起こしていた。HITを疑いヘパリン投与は中止した。HITの確診がつかないため抗トロンビン薬の投与はしなかった。(4日目)WBC3200, RBC241, Hb8.7, Ht26.2, plt7.3. (6日目)WBC3300, RBC256, Hb9.1, Ht27.6, plt10.5. (9日目)WBC3300, RBC232, Hb8.3, Ht25.3, plt8.2. (13日目)AST37, ALT40, LDH620, CPK251, WBC3200, RBC222, Hb7.9, Ht24.4, plt6.2,PT-INR1.03, APTT28.2,fibrinogen200.1, ATⅢ101, DD-dimer28.02. (15日目)WBC2000, RBC224, Hb8.1, Ht24.7, plt7.2. (16日目)PT6.2, Alb3.6, ALP146, AST28, ALT37, rGTP62, LDH461, CPK280, WBC2300, RBC218, Hb7.8, Ht24.1, plt5.3.
ヘパリン投与開始後2日目にplt6万,50%の低下を起こしている。アレビアチンが汎血球減少を起こす可能性あり。その後、アレビアチンの投与はなく、抗トロンビン薬も投与せずに再びplt6.2まで低下した。4Tスコアが4点でHITが疑われる。14日目からアルガトロバン投与開始した。上矢静洞血栓症が原因なのか結果なのか不明。<7/2/2012>
○ その後、HIT抗体が陽性と判明し、argatroban使用して静脈洞血栓が徐々に溶解して再開通した。臨床所見も改善した。   <7/24/2012>

スポンサーサイト



PageTop