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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

204.01. 開頭脳腫瘍剔出術

目次
204.01. 開頭脳腫瘍剔出術
○ 脳腫瘍に対して開頭腫瘍剔出術を行ったPtに対し、isoflurane麻酔群(ISO)とpropofol麻酔群(PROP)に分けて麻酔覚醒状態についてretrospectiveに比較検討した。
○ 2002―2005年の4年間に行われた202例の原発性脳腫瘍に対する開頭腫瘍剔出術のうちISO群77例とPROP群82例を対象とした。
・手術終了から抜管までの時間 39.5±14.6分(ISO):29.5±14.5分(PROP)、
・手術室退室までの時間 67.2±18.0分(ISO):53.9±17.6分(PROP)
・直後の意識レベルはPROP群で有意に良好であった。
・手術時間 454±141分(ISO):497±157(PROP)
・麻酔時間 600±147(ISO):635±155(PROP)
・手術室(OR)退室時抜管不能 1(ISO):3(PROP)
○ PROPでは術中尿量が有意に多かった。体温は有意に低くなっていた。シバリング、嘔気・嘔吐、痙攣は両群間に差はなかった。退院までの日数も差はなかった。
○ PROPはISOより覚醒が速く、神経学的状態が良好で抜管とOR退室までの時間が速かった。
○ [注釈] 7―8時間の手術、10時間の麻酔でOR退室時抜管不能が4例(術前JCSは3―4)というのは大変。M病院ではかなりの症例を抜菅せずに回復室に出している。

○ 開頭腫瘍剔出術の麻酔法:この論文で示されているやり方
◍手術日の朝:通常の内服薬を投与。ファモチジン20mg(is)、前投薬としての鎮静薬はなし.
◍AM8:30 OR入室、通常のモニター装着、橈骨動脈A-line。
◍O2投与開始
◍[ISO] 導入;thiopental 3―5mg/kg 、atropin 0.5mg、fentanyl 2―4㎍/kg
・isoflurane吸入;麻酔維持のisoflurane濃度は呼気終末濃度1%以上で維持する
◍[PROP] 導入;propofol 1.5―2.0mg/kg、atropin 0.5mg、fentanyl 2―4㎍/kg
・BISモニターを後頭部か前頭部(手術体位によって)に貼って、BIS値30―50で維持。
◍fentanyl、N2Oの投与はその時の判断で。Fentanylはbolus投与(体動時、バッキング)
◍vecuroniumは挿管時、術中は間欠的に、電気生理学的モニター時にはリバースした。
・supine positionでは経口挿管、prone positionでは経鼻挿管。
◍術中防寒のため躯幹をwrap、36―37℃になるように加温。
◍head pin固定に1%xylocaineEを局注。
◍マンニトール300mlはルーチンに投与
◍輸液はラクテートリンゲル液を3―4ml/kg/h。必要ならhydroxyethyl starch(ヘスパンダー)かpacked red cell濃厚赤血球を使用。
◍換気とFiO2は軽度hypocapniaかnormocapniaにしてP/F ratio>350(PaO2/FiO2)
◍BPはnormotension、mean arterial pressure MAP0>60mmHg
・エフェドリンかドパミンを適宜使用
・高血圧(収縮期血圧>140mmHgと定義)ではnicardipineかprostagrandineE1を使用。
◍血糖<150mg/dlを維持するよう適宜insulinを使用。
◍腫瘍摘出後にフェニトイン(アレビアチン)250mg/5ml/ApをIV.
◍手術終了前、皮膚縫合時に皮下に局麻注射。
◍Mayfield head holderをはずすまでISOもPROPも漸減しない。
◍残存筋弛緩薬はリバースする。
◍分時換気量、気道反射が十分に回復してから抜管する。
◍呼吸状態、循環動態が安定するまで手術台上で観察して、その後OR退室。
○ [注釈] 腹臥位の手術では唾液がダラダラと出て、挿管チューブが抜けそうになることがあり、経鼻挿管は良いと思う。Transitional opioidについては記載がない。ICUで使っているのかもしれない。
◇ Miura Y et al. Superior recovery profiles of propofol-based regimen as compared to isoflurane-based regimen in patients undergoing craniotomy for primary brain tumor excision: a retrospective study J Anesth (2012) 26; 721-727 <11/30/2012>

○ 脳外科手術Ptにおける抜管時間、それは重要か?
◍脳腫瘍に対し開頭腫瘍摘出手術を行った症例でpropofol-based regimenがisoflurane- based regimenより回復がよいというMiuraらの論文に対するLetter to the editor
1. この論文では両群ともに抜管時間が20分以上と長引いている。これは通常の臨床経験と比べても長い。両方の麻酔薬とも除去半減期は短い。脳外科手術のPtでは術後に神経学的検査を早く行うために迅速な覚醒が求められる。
2. Propofol群でN2Oが使われているがこの群ではfentanylも使われている。N2Oを使うならfentanylはいらないはず。N2Oの濃度が書いてない、そしてそれがいつ中止されたか書いてない。
3. 麻酔薬を中止した時のBISに関するdataがない。BIS値をガイドにすると抜管時間が速くなる。
・抜管の時期は重要であり、脳外科手術のPtでは有害になる。それにはいくつかの因子が関与する。麻薬の種類、補助薬の使用、代謝の因子、モニタリング方法、深部体温、外科的因子など。特に脳外科のバランス麻酔では20分以上の延長した抜管はこれらの因子を除外しなくてはならない。
◍これに対する返答reply
・我々の結果では抜管時間が延長していることは知っていた。最近のRCT研究ではsevoflurane-remifentanil麻酔でもpropofol-remifentanil麻酔でも待機的テント上開頭手術では8-10分の覚醒時間(抜管時間)となっている。
・検討した症例の手術時期が2002-2005年と古かった。その後、脳外科の手術手技も改善された。
・remifentanilの導入(採用)が日本では2007年であった。それ以前はfentanylだけを使っていた。Remifentanilが導入されてから主な麻酔薬やfentanylの使用量が減った。手術時間が長かったのとremifentanilがなかったのが覚醒が遅れた原因と思われる。
・propofol群でのN2Oの使用はopioidの使用量を減らさない。約半数のPtでは循環動態が安定するまでN2Oの使用を要した。このような場合、N2Oの濃度は50-60%。Mayfield head holderを取り外すまで使った。
・N2Oを使ったpropofol群でのfentanylは584±187㎍、N2Oなしのpropofol群でのfentanylは632±208㎍。
・BIS guide extubationは行っていない。BISは麻酔深度のモニターと術中覚醒予防に使った。
◇ Tumul Chowdhury・Ronald B. Cappellani: Letter to the editor Extubation time in neurosurgical patients: does it matter? J Anesth (2013) 27:467
◇ Y Miura: Reply J Anesth (2013) 27: 477-478
○ [注釈] 開頭腫瘍剔出手術でも術後速やかに覚醒させ、抜管することが求められているということ。   <7/5/2013>     

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