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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

10.06.01. 喉頭鏡:ビデオ喉頭鏡


目次
10.06.01. 喉頭鏡
○ ビデオ喉頭鏡
○ ビデオ喉頭鏡は挿管困難に対して本当に有用か
◍気管内挿管困難は未だに麻酔実施上の主要問題である。気管内挿管失敗はそれ自体が生命を脅かす訳ではないが、しばしば肺内誤嚥やマスク換気の困難など重篤な合併症を伴う。加えて、繰り返し気管内挿管することにより、上気道を損傷しマスク換気がより困難になるかもしれない。実際、気管内挿管の困難さは麻酔中の重篤な気道合併症と関連した最も一般的な合併症である。
◍従来型のマッキントシュ喉頭鏡による挿管困難の頻度を減らす多くの努力がなされてきたが、頻度は変わらないように思える。その間に、気管挿管のための代替手段が発展してきた。気管支ファイバースコープは挿管困難difficult airway: DAのPtにおける最も信頼できる道具として認識されているが、スムーズに気管挿管できるためにはかなりの技術と知識が必要である。最近、硬性間接型光学喉頭鏡あるいはビデオ喉頭鏡videolaryngoscope : VLSの使用について関心が増加している。このAnesthesiologyの文献でもAzizらはDAであると予想されるPtにおけるVLSの有用性を報告しているし、Fiadjoeらは小児における他のVLSの有用性を報告している。
◍間接型光学喉頭鏡は最近、しばしばVLSと呼ばれているが、その訳はこれらの喉頭鏡LSが一般的にビデオ機能を使用しているからである。VLSで声門glottisの像はブレードの先端近くに位置するカメラの「目」で捉えられ、ビデオスクリーンに転送されるBullard喉頭鏡は1980年代後半に最初に商業的に使えるようになった用具であったが、1990年代後半にはいくつかの新しい間接型光学喉頭鏡、主にVLSが利用され始めた。
◍Azizらは無作為化比較試験でDAが予測される300例のPtでVLS(C-MAC VLS)の有効性を評価し、最初の試みでの気管挿管の成功率は、従来型のマッキントッシュLS(84%)よりVLSで有意に高い(93%)ことをみつけた。LSでの声門の見え方は有意に良好で、気管内チューブイントロデューサー(gum elastic bougie)の使用や、声門がよく見えるように喉頭を圧迫したりすることがVLSでは少なかった。にも拘らず、気管挿管に要する時間はわずかであるが有意にVLSで長かった。
◍FiadjoeらはDAであるかどうかを知ることなしに60人の乳児でMiller LSとVLS(Glidescope)で有効性を比較した。その結果、VLSはMiller喉頭鏡より声門がよく見えることが分かった。気管挿管のために必要だった時間はVLSの方が有意に長かった。挿管成功率は両群で差はなかった。
○ VLSは本当にDAであるPtで役割を持っているか。
◍Azizら、Fiadjoeら、それ以前の研究に基づいてVLSはDAに有効であり、マッキントッシュやミラー型の様な従来型の直接LSと比べていくつかの利点があるとするのは妥当である。次に我々がなすべきはVLSは本当にDAのPtで役割を担っているかどうかである。これを行うには二つの大きな因子を考慮に入れる必要がある。VLSは気管内挿管を繰り返すのを減らせるか、よりストレスが少なく損傷を負わせないかどうかである。
○ VLSは気管挿管の成功率を増加させるか
◍直接型LSでは上顎歯列から声門までの視野のラインが確保される必要がある。Ptの頭を枕に乗せ、頸の上で頭を進展させ(sniffing position)、舌とepiglottisを除ける必要があるが、これがしばしば視野のラインを妨げる。加えて、声門が明らかに見えるように甲状軟骨を圧迫することがしばしば要求される。VLSでは声門の画像はブレードの先端近くでとらえられるので、わずか数cmの視野のラインが必要なだけである。さらに補助者はビデオ画面上の声門の画像が改善されるのを確信して頸部圧迫の方向と強さを調節できる。それ故、VLSは理論的に声門のよりよい画像を得ることができ、気管挿管の成功率を上げることができるだろう。
◍DAのPtで、マッキントシュLSでは気管挿管に失敗したがVLSを使っての逸話に富んだ報告がある。マッキントッシュ型LSで挿管困難だった270例の成人例と気管挿管もマスク換気も困難と予測された23例のPtでVLS(Airway scope)を使って293例中290例で成功した。さらに無作為比較試験(Azizの報告も加えて)でマッキントッシュ型LSと比較して満場一致でVLSによる気管挿管の方が成功率が高かった。
◍小児に関してはVLSの限定された数のブレードのみが利用できる。FiadjoeらはDAでない小児でのVLSの有効性を示したがDA例での効果は不明である。
○ VLSはよりストレスが少なく損傷が少ないか
◍従来型のLSと比較してVLSはPtにとってよりストレスが少ないであろう。なぜならVLSは頭部頸部の進展屈曲を要せず頸部への圧迫、上気道へのねじれを要しないから。
◍いくつかの研究ではVLSを使っている間の頸椎の動きがマッキントッシュ型LSよりも少ないことを示した。Azizらと他の人はチューブイントロデューサーと喉頭の圧迫がより必要がなかったことを示した。これらの研究はVLSの理論的利点を指示しているが、VLSが本当によりストレスが少なく、より損傷が少ないかどうかの判定には不十分である。とりわけVLSを使っての気管挿管は(直接型LSと比較して)上気道の損傷により気道を閉塞し易くないかについて利用できるデータが少ない。
◍これまでの報告ではVLSを使った気管挿管は従来型のLSを使った場合より時間が長くかかるか短いかについて矛盾する点が多い。Azizら、Fiadjoeら両方の報告はVLSを使った方が有意に挿管時間が長かったと報告している。挿管方法よりも無呼吸時間の方が血圧と脈拍をより増やすと知られており、VLSにより長引いた無呼吸時間はPtにとってよりストレスが多いかもしれない。さらにVLSによる無呼吸時間の延長は、肥満のPtや産科の婦人や子供、DAの管理をしている間に脱酸素化しているPtなど酸素の貯えが少ないPtで低酸素症を生じるかもしれない。
○ VLSの役割を確立するための現時点での仕事
現時点での知識に基づいてVLSが本当に従来型のLSよりもストレスが少なく、損傷が少ないか無作為化比較試験を実施する必要がある。DAのPtでの役割を確立するために、さらに異なるVLSの効果とそれらの使用上の困難さの説明をする必要がある。
・異なるVLSの効能:最近いくつかの間接型光学的LS及びVLSが使用できるようになったがこれらの装置間の効果の差は難しいようである。これらは大きく3つのカテゴリーに分類され利点と欠点を持っている。
◍マッキントッシュ型:このカテゴリーのVLSはマッキントッシュ型のブレードを持っている。挿入法は基本的に従来型のマッキントッシュLSと同様なので声門を直接見ることもビデオ画面で見ることもできる。Azizらの研究のようにこの型のVLSでの気管挿管成功率は一般的にマッキントッシュLSよりも高いが、声門を明瞭に見られるためには気管チューブのイントロデューサーや、喉頭の外部圧迫が必要である。
◍チューブガイドのない解剖学的形成されたブレード:このカテゴリーのブレードは一般的に解剖学的に形成されているので頸部頭部の屈曲進展せずとも声門を明瞭に見ることができる。この型の1つの大きな制限は声門を直接見ることはできないということである。それで気管内チューブの先端の位置が挿入時に確認できないということである。それ故、声門の明瞭な像がビデオ画面に見える時でさえ、チューブを声門の方へ導くことがしばしば困難になり、この見えない時間に上気道を損傷するかもしれない。
◍チューブガイドのある解剖学的形成されたブレード:このカテゴリーのVLSは解剖学的に形成されたチューブガイド付きのブレードを持っている。チューブは声門の方へ導かれるようになっている。チューブの先端は装置を挿入する前ですらビデオスクリーンに捉えられている。チューブ先端の位置は気管挿管の全ての経過中、持続的に確認されている。
・DAと予測された、あるいはシミュレーションされたPtで、異なるVLSで比較した研究は少ない。それ故、どのLSが挿管繰り返しの数を減らし、DAのPtの損傷を減らせるか、公式の無作為試験が必要である。
○ 困難さの説明
VLSがDAのPtで役割があると決定した時でさえ、幾人かのPtでは失敗するかもしれない。VLSを使ってのDAの原因をできるだけ知る必要がある。DAのPtでのそれぞれの装置での役割を確立するために、画面の曇り(分泌物、血液、吐物)によるかすみ、あるいは開口制限によるブレードの挿入困難など、いくつかの困難の原因は説明できる。マッキントッシュのブレードによるものと異なるVLSによるDAの原因は分からない。たとえばチューブガイドのない解剖学的形成のVLSで声門が明瞭に見えているのにチューブを声門に導くことができないことがしばしばあるかもしれない。術前にマッキントッシュLSで気管挿管困難を予測する試験をしてVLSでのDAを予想できるかどうか分からない。
○ 結論:直接型LSと比較して間接型光学的LSあるいはVLSはDAのPtにおいて、一般的に声門視がきれいで気管挿管の成功率が高い。このようにDAのPtでVLSは有益な可能性が高い。にも拘らずVLSを使った気管挿管が気道損傷を起こしにくく、無呼吸時間が長くなるかどうか、重篤な気道合併症を起こし易いかどうか十分なエビデンスがない。また、どのVLSが失敗し、術前にDAを予測できるかどうか明らかではない。それぞれのVLSは従来型の直接型LSと比較されるべきであり、他のVLSとも比較されるべきである。その他の挿管道具(気管支ファイバースコープ)とも比較して、DAのPtにおけるVLSの真の有効性を確立すべきである。
◇ Takashi Asai: Videolaryngoscope Do They Truly Have Roles in Difficult Airways? Anesthesiology 116; 2012, p515-517 ◆ Fiadjoe et al: Prospective randomized equivalence trial of the Glidescope Cobalt Videolaryngoscope to traditional direct laryngoscope in neonate and infants. Anesthesiology 116; 622-628, 2012 ◆ Aziz et al: Comparative effectiveness of the C-MAC Video Laryngoscope versus direct laryngoscope in the setting of the predicted difficult airway. Anesthesiology 116: 629-636, 2012    
○ [注釈] これはAzizら、FiadjoeらのAnesthesiology116、2012の論文に対するEditorial Viewである。VLSで声門がよく見えるのは明らかであるが本当にDAに対する有効性があるのかという問題を提起している。EBM、Randomized controlled studyが必要と書いてあるがCase reportなどnarrativeな研究ではだめなのだろうか。  <2/21/2013>

○ M病院にVLSのマックグラース・マックが購入された。  <5/13/2014>

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