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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

90.09. 関節リウマチPtの麻酔

目次
90.09. 関節リウマチPtの麻酔 30.06.
・10年間1177名のRA Ptに全身麻酔、ほとんどが関節全置換術 28~95歳(平均63歳)、女性が90%、体重29~77kg(46kg)、高齢で痩せた虚弱な女性
○RA Pt麻酔の問題点
・RAの障害が心、肺、腎、血管など主要臓器におよびこれら臓器・組織の機能低下する。*・心:30%に心膜炎有症状は10%以下、心嚢水貯留。狭心症や脳梗塞の既往
・肺:50%のPtで種々関節病変により拘束性障害、ADL制限で自覚症状なし。脊椎病変による亀背も拘束性障害。肺線維症、胸水貯留。間質性肺炎
・腎:稀。薬剤性腎症、腎アミロイド―ジス(金製剤)、合併するSjogren症候群による間質性腎症。
・眼病変:RA Ptの20%に合併するSjogren症候群による角結膜炎。眼軟膏、アイパッチ。
・虚血性心疾患、癌、炎症性疾患の発症率が増加する:RAの病理に直接起因する場合もあり、長期に用いられる数多くの抗RA薬およびステロイド治療の影響もある
・筋委縮、脆い血管、貧血などはRA Ptにほとんど必発。強い痛みと運動障害を伴うために全体的に虚弱化する
*・消化管病変:NSAIDs潰瘍の有無
・ステロイドによる糖尿病の有無
・経鼻挿管になる場合の鼻腔の状態、易出血性の有無
○気道確保困難 difficult airway
Compromized cardiac function:myocarditis, vascular disease, pericarditis,
                   :coronary disease
     pulmonary :rheumatoid lung, diffuse infiltrate, drug effect
     renal    : amyloidosis
Ischemic heart disease   :coronary disease
Vulnerable peripheral vessels傷つきやすい末梢血管
Retrognathia下顎後退    :difficult airway
○術前チェックリストのうちRAに特殊な項目
 頸、下顎の可動性検査
 喉頭鏡による喉頭、声帯の検査=輪状披裂cricoarytenoid関節の拘縮→RA Ptの約1/5にみられ時に呼吸困難をきたす
・手術の必要なPtはほとんど長期にステロイドを服用している→周術期ステロイドカバー
 待機手術Ptは通常5~10mgのプレドニゾロンを服用している
 →手術当日はプレドニゾロン中止、ハイドロコーチゾン100mg 麻酔開始1時間前
  Ptの全身状態が悪く循環状態不安定→ハイドロコーチゾン100mg追加iv 4~5時間前
 手術翌日には元のステロイド療法に戻す
*通常、副腎はコルチゾール20mg/day程度を生理的に分泌。ストレス時には200~300mgのコルチゾールを分泌する。長期ステロイド服用Ptは副腎機能低下しておりストレス時の補充を自らできない。PSL15mg/dayはコルチゾール60mg/dayに相当。急性副腎不全のリスクカバーのためにステロイドカバー。
◌小手術:通常内服量のみ。カバーなし。
◌中手術:通常内服。術前にハイドロコルチゾン50mg、8h毎に50mg。翌日から通常通り
◌大手術:通常内服。術前にハイドロコルチゾン100mg、8h毎に50mg。POD1;8h毎に25mg、POD2;12h毎に25mg、pod3;25mg1回、POD4~通常通り。
○使用麻酔薬:ハロタン、セボフルラン、イソフルラン±fentanyl
 RA Ptではすべての鎮静薬、麻酔薬に感受性が高い点に注意が必要。
 術後に遷延する抑制作用にも注意が必要
○手術死亡率:術後1か月以内は0. 2ヶ月以内は2(術前からハローベスト装着Pt)
 術後ハローベスト装着Ptは術後2年以内に25名/75名死亡
○RA Ptの気道確保困難
1)頸椎関節のリウマチ性の破壊に伴う拘縮・不安定性:頸椎の癒合による可動域制限
2)環椎関節の亜脱臼:不安定性。初期は運動制限、後頭部痛。次第に四肢のしびれ。延髄圧迫すると突然死。伸展位で安定、屈曲位で悪化。
3)ハローベスト装着による頸部可動性の消失
4)輪状披裂関節の拘縮:RA Ptの30%程度。声帯固定でチューブ入りにくい。喉頭部痛、嚥下痛、嗄声。発赤や声門部の狭窄あれば抜管後の気道閉塞にも注意
5)下顎後退retrognathia:部分的に側頭下顎関節の破壊による下顎コンディル突起の短縮による
○RAのdifficult airwayの対応 2)3)が多い
1)直の薄いブレード(ミラーブレイド)を使用
2)ラリンゲルマスクエアウェイLMA:全麻、筋弛緩薬使用下に喉頭鏡を使って挿入
3)気管支ファイバースコープを使用:ファイバー挿管口マスク法
 ジアゼパムで導入
 小児用マスクで口のみマスク換気可能を確認
 筋弛緩薬使用
 経鼻挿管。一方の鼻孔を綿球で詰めて
 ファイバースコープは気管内、カリーナ直前まで挿入する
*全身麻酔導入後に頸椎を中間位に保ったままエアウェイスコープAWSで挿管
*自発呼吸温存下経鼻挿管
・fentanyl25~50μg分割投与
 Midazolam0.5mg~1.0mgずつ分割投与
 輪状甲状間膜から4%リドカインで喉頭に麻酔して激しい咳を防止
 鼻腔消毒、リドカイン+アドレナリン(フェニレフリン)使用し#6.0mm tube 10cm挿入
 気管支ファイバーを進めて気管分岐部を同定してチューブ挿入留置
 Propofol等で眠らせる
*術中の体位:長期ステロイドで易骨折性、皮膚脆弱性に注意。体位変換による頸椎症の増悪に注意。
*術後疼痛管理:fentanylによるIV-PCA25-50μg/hr
*周術期危機管理
◌術後、病棟での循環不全
・循環血液量不足(術中の輸液不足や、術後の創からの出血)
・急性副腎不全:長期ステロイド使用による
・心筋梗塞や狭心症、輸液過多による心不全
・術後使用薬剤によるアナフィラキシーショック
・術前に見つかっていない下肢静脈血栓の遊離による肺塞栓
◇ 新井達潤ら 慢性リウマチ患者の麻酔 第4回日米麻酔会議招待講演 日臨麻会誌vol17, no10, 1997, p621-629
*14年目麻酔科医の専門医試験対策ノート 2012年4月20日
*自省と研鑽を促すための麻酔科医ノート2011年8月9日     <4/7/2017>

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