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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

201.11. くも膜下出血

201.11. くも膜下出血
○Vignette; サッカーの練習中に17歳の男子が突然の頭痛と短時間の意識消失。救急部到着時には傾眠傾向で、今までで最悪の頭痛を訴えていた。BP186/97mmHg、神経学的診察では正常、単純頭部CTでびまん性のくも膜下出血あり。側脳室の側頭角temporal hornの拡大が見られた。このPtのさらなる評価と治療はどうすべきか
◌[The clinival problem]
・先行する外傷のないくも膜下出血SAHは、80%の症例は頭蓋内の動脈瘤ANの破裂によって生じる。その他の原因としては血管奇形vascular malformation、及び血管炎vasculitisがある。SAHはUSAでは全脳卒中の5―10%を数える。罹患したPtは他の脳卒中Ptよりも若い傾向があり、生産的生命の大きな喪失となる。生き延びた動脈瘤性くも膜下出血AN-SAHの中で半数は長期間の神経生理学的損失を被り生活の質が低下する。ANを早期に確認し治療することはANの破裂を予防し、初期の破裂による続発症に対処することができる。ANによって生じたSAHではない場合(例えば動静脈奇形AVMに伴う症例の場合)にはインターベンションが適当であるかもしれない。しかし、非動脈瘤性SAHの場合10%までの症例では血管異常を含まないので、外科的あるいは血管内治療は必要とは考えられない。
◌[頭蓋内動脈瘤]
・頭蓋内ANは人口の1―2%に起きる。ANは典型的には頭蓋内動脈の分岐点に形成される。(Fig1.と相互する図)2つの流出分岐の間の壁に血行動態的負荷がかかり、その領域を弱める。頭蓋内ANのリスクは家族歴のある人で増加する。(ANを持つ人の1等身)、そのようなイベントを持つ1等身の親族が2人以上ある人は大きなリスクがあるとされている。ある種の結合組織病(例えばEhless-Danlos症候群)がある人、多嚢胞腎polycystic kidney diseaseのある人ではリスクが増える。AN破裂のリスクの増加と関連した因子には、黒人、ヒスパニック系、高血圧症、現在の喫煙者、アルコール中毒、交感神興奮薬の使用、7mmより大きなANがある。
・頭蓋内の未破裂ANの発見率はCTやMRIがより一般的になり増加した。頭蓋内未破裂ANの治療は議論の起きるところであるがここでは取り扱わない。
・報告されたAN-SAHの頻度は世界中で大きく異なっている。中国での人口10万人当たり2.0例から、フィンランドの人口10万人当たり22.5例まで、変動は各国の検出率の違いを反映していると思われる。USAでは2013年、全国入院Ptサンプル調査で、成人年間10万人当たり14.5人のAN-SAHの入院があった。AN-SAHは男性より女性で多く、頻度は年齢と共に上昇し、50歳台でピークとなる。
・ANが破裂すると頭蓋内の突然の悲劇が起きる。血液は動脈圧と頭蓋内圧が破裂部位と同じになり、出血部位で血栓を作り出血を止めるまでくも膜下腔に流入する。報告された最初の出血または再出血の結果による死亡率は25―50%である。この見積もりは医療を受けずに死亡してしまった人を全て数えているわけではない。
◌[sign and symputome]
・動脈瘤性SAHの極めつけの症状は「人生最悪の頭痛」である。頭痛の症状は突然で、頭痛は激しく、直ちに最大の強さになる(雷に打たれたような頭痛thaunderclip headacheとして知られている)。10―40%のPtでは頭痛は警告の漏れか、「見張りsentinel」が先行している。それで、ANを防ぎ、すぐさまの破裂のリスクを取り除くことができる。
・2つの無作為試験が頭蓋内ANの破裂に対する、血管内治療と開頭手術治療を比較した;International Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT)とBarrowRuptured Aneurysm Trial(BRAT)である。血管内治療よりも開頭手術が明らかに跡形もなく直し、大きな永続性があるにも拘らず、両試験共に、開頭手術より血管内治療の方が1年目の機能的アウトカムが良好であると示した。
・ISATでは多施設で、ANが開頭手術でも血管内治療でも適応があると考えられるPtにおいて、1年経過後の要介護あるいは死亡の率が血管内治療群では23.5%で、開頭手術群では30.9%であった。(絶対リスク差は7.4%、95%信頼区間は3.6―11.2)。さらに加えて血管内コイル治療群は開頭手術を行った群よりも7年経過後の死亡率が低く、痙攣のリスクも低かった;再出血はめったにないが、開頭手術群より血管内治療群でより多かった。
・BRATは単一施設内試験であるが開頭手術に比べて血管内治療群で1年目の機能的アウトカムの観点で同等の利点があった。両群の差は3年でも6年でも有意差はなかった。ISATと違ってBRATはエントリー基準としてどちらの治療にも適しているという解剖学的必要性は含まれていないが、無作為に血管内治療に割り当てられたPtの1/3以上は、大半は動脈瘤の解剖学的な点により、あるいは血管内治療より開頭手術を好む外科医のために反対に開頭手術群に代わっている。
・ISATの結果はPtはより低侵襲の治療を好むという事実と同時に、破裂ANの血管内治療への劇的なシフトを結果として起こしていた。しかしながら開頭手術は頭蓋内圧の亢進したPtあるいは脳内血腫により、神経学的欠損を起こしているPtでは好ましい。ANが血管造影では見えづらいPt、及びバイパスによる再血行が必要と考えられるPtでは開頭手術が好ましい。前方循環の40歳以下のPtで神経学的状態が良好な場合も、血管内治療より開頭手術の方が耐久性も大きく、ANの再出血のリスクも低い。従って、Ptは外科医が経験を積んで、技術もあり、開頭手術の血管内治療もできる手術例の多い脳血管センター(high volume center)で治療されるべきである。
◌[SAHとAN治療から起きてくる合併症の治療]
○血管攣縮と脳虚血
・AN-SAH後に血管造影で見られる脳血管の狭窄(血管攣縮vasospasm)はPtの70%で起きる;その過程は一般的にAN破裂の3―4日ごに始まる。ピークは7―10日で14―20日後に解決する。遅発性の脳虚血はPtの1/3で発症する巣症状(局所的)神経学的欠損の臨床症候群で典型的にはAN破裂の4―14日後で、SAHが起きた後の主たる死亡や障害の主原因である。
・一般的に血管攣縮が遅発性脳虚血を起こすと信じられているにも拘らず、最近のエビデンスは、SAH後に起きてくる血管及び神経の変化の多様性がその病因に寄与していると示唆している。遅発性脳虚血は血管造影上の血管攣縮を伴ったPtの1/2以下で進展し、虚血は攣縮が起きている血管から供給されている領域に一貫して起きるのではない。カルシウムチャンネルブロッカーであるニモジピンnimodipineは遅発性脳虚血のリスクを減らし、SAH後の神経学的アウトカムを改善する唯一の薬物であると知られているが(下でさらに論議する)血管攣縮の頻度や重症度を減らさない。意味ありげに血管造影上の血管攣縮のリスクを減らす薬物の臨床試験では、遅発性脳虚血の進展や臨床的アウトカムについて測定できるほどの効果は見られなかった。その結果、血管攣縮以外のSAHの続発症の可能性が、SAH後の貧しいアウトカムのメディエータ―及び治療の可能性のある目標として探索された。
・最近nomodipineが経口的に全てのPtに発症から21日まで投与されることが推奨されている。無作為化試験のCochraneレビューではではnimodipineはSAHのPtの1/3で貧困なアウトカムのリスクを減らした。
・通常の循環血液量と正常のヘモグロビン値の維持は遅発性脳虚血のリスクを減らしたが、血管攣縮の治療の為の予防的な循環血液量の増加とバルンによる血管形成術は(遅発性脳虚血の治療的、放射線科的エビデンスはなく)がっかりする結果になっている。
・鈍麻した、あるいは昏睡のPtにおける遅発性脳虚血を臨床的検査では検索できないかもしれない。TCD(transcranial doppler ultrasonography)経頭蓋骨超音波ドプラー法はSAH後の血管攣縮を検索する非侵襲的検査として広く行われているが、その有用性については議論がある。Perfusion CTは新しく神経学的欠損が認められたPtで脳虚血の可能性のある領域を同定するのに使われうる。血管攣縮があろうとなかろうと臨床的に意味のある遅発性脳虚血が疑われるならば、高循環血液量hypervolemiaと高血圧hypertension(輸液とαアドレナジック薬の静脈内投与によるdouble “H” therapy)は脳灌流を改善するために推奨される。もしも遅発性脳虚血が攣縮している主要脳動脈の領域に起こるならば、脳血管形成cerebral angioplasty、選択的血管内血管拡張療法あるいは両方の方法が高血圧を起こしても臨床的改善が見られない症例では考慮されうる。
○水頭症hydrocephalus
・脳の底部で大きな血管を取り巻いているくも膜脳槽を通じている脳脊髄液の正常の循環を血管外に流出した血液がブロックするために、SAHのすぐ後に水頭症が起きるかもしれない。水頭症の発症の見積もりは15―85%である;ほとんどの症例は臨床的に重要ではない。水頭症が脳症encephalopathyを引き起こすような症例では、水頭症の管理は典型的には脳室外瘻の造設である。それによって一般的には神経学的に改善される。代替案として腰椎ドレナージlumbar drainagが急性水頭症の治療として行われ、血管攣縮のリスクを減弱する;しかし閉塞性水頭症と、脳室内圧の上昇を生じる実質内血腫の場合は腰椎ドレナージは禁忌である。慢性の症候性水頭症はPtの1/3まで発症し、脳脊髄液の永久的分流のためにV-P shunt脳室腹腔シャントで治療される。水頭症はSAH後、数日から数週間で発症するかもしれない。当初、回復が良かったPtの状態が平行線か低下する場合は疑わなければならない。
○内科的合併症medical complication
・AN破裂したPtは、多くの危機的な病気では一般的な内科的合併症のリスクがあり、それらはできれば脳神経的集中治療に特化したICUで治療されるべきである。一般的な内科的管理の詳細な議論はこの文献の範囲を越えているが、ゴールは正常循環血液量euvolemia、正常体温、低血糖や著しい高血糖を避け、電解質バランスを保ち、頭蓋内圧の上昇の再燃を避けるために十分な換気(昏睡Ptのために)が必要である。
・深部静脈血栓はSAH後には比較的よくあることで、特に動かないようにされたPtでは、通常の予防が推奨される。通常の間歇的空気圧迫や、破裂ANが治療されたのち、24時間からPtが動けるようになるまで未分画ヘパリンが推奨される。しかしながらPtが多くの侵襲的治療を受けなくてはならない場合は深部静脈血栓の予防の為の抗凝固にはリスクが伴う。
◌[未確定な領域]
・インターベンション後の血圧と循環血液量の状態volume statusと遅発性脳虚血の適切な管理のゴールは未確定である。SAHのリスクを減らすための戦略を導く無作為比較試験のデータが少しある。無症候性の深部静脈血栓の症例を同定するためにデザインされたスクリーニングプロトコルがあるが価値は不明である。SAHは甲状腺と副腎機能に影響があるが明らかなインターベンションの利点を示すにはデータが不足している。
・血管内治療の付属物としてバルン先端マイクロカテーテル、ステント、流路変更ステントなどが、広基ネックの紡錘形AN処理のために開発されたが、それらの付属物はしばしば抗血小板治療を要し、出血のリスクが付随している。これらの付属物は急速に発展しているのでリスクと利点に関するデータがもっと必要である。
◌[ガイドライン]
・アメリカ心臓病協会AHAとアメリカ脳卒中学会ASAの執筆陣はAN-SAHの管理のために2012年にガイドラインの更新、出版した。この論説における推奨は全般的にこれらガイドラインと内容が一致している。
◌[結論と推奨]
・the vignette文章の初めに記載したPtの臨床的、放射線科的(画像)所見はSAHと一致する。この出血源を同定するために、カテーテル血管造影が行われた。ANは最も一般的な原因であり、もしも同定されたなら、それに続く30日以内に再出血のリスクが非常に高い;それで我々は直ちに治療することを推奨する。無作為試験のデータは開頭治療よりも血管内治療が全般的な機能性アウトカムは良いことを示している。しかしながら開頭治療(外科的クリッピング)が、ANのある種の顔つき、特徴を根拠に好まれるかもしれない。(例えば、ANの形態的特徴、及び大きな血腫を伴っている場合)あるいは若いPt、無作為試験で開頭試験の耐久性が優れているなど。このPtの年齢、その他の健康状態、ANの部位が前方循環にあることなどの点から、我々は特化した経験ある外科医による開頭治療を推奨した。もしも開頭治療の専門的知識を持った外科医が、そのセンターに居なければ、すぐさまの再破裂のリスクを取り除くために血管内治療が提供されるであろう。
◇Michael T. Lawton, M.D., G. Edward Vates, M.D., Ph.D. Clinical Practice Subarachnoid Hemorrhage N ENGL MED 377; 3 NEJM. ORG July 20, 2017, p257-265
                               <9/27/2012>

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