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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

213. 血管病変に対する血管内治療

目次
213. 血管病変に対する血管内治療
○[経験] Intervention Radiologyは2009年5例、2010年19例(内局麻例6例)
○ [経験] 2011年 未破裂脳動脈瘤:♀9例、破裂脳動脈瘤SAH:♀6例全例緊急手術、AVMによる脳出血:♀1例。

○ 神経放射線学的検査および治療のための麻酔
A. 頭蓋内血管操作 1.麻酔管理を行う上での目標
亜酸化窒素は空気塞栓症を増悪させる恐れがあるため、使用を避ける。
◇ MGH麻酔の手引き 日本語第5版. 稲田英一 メディカル・サイエンス・インターナショナル2008:p566
○ 透視下血管内手術の麻酔 INRの麻酔
I. 挿管全身麻酔法:完全な不動化が得られ、脊髄疾患では頻回の血管造影が行われるので最適である。ロードマップ撮影中は,胸郭運動が妨げとなるので、一時無呼吸とする。亜酸化窒素を避けるべきかは確立していない。
◇ Phillippa Newfield : Hndbook of Neuroanesthesia. 4th edition. 藤田達士訳 Lippincott W&W 真興交易医書出版部. 2012 :p224
○ [伝聞] 第59回日本麻酔科学会において、脳外科手術での神経機能保護---脳外科医と対等に議論するために 脳底動脈先端部動脈瘤全身麻酔下コイル塞栓術 というPBLDのdiscussionで、あるベテラン麻酔科医からの発言。1)最近のINRに使われるdeviceや技術の改良で静脈塞栓の発生率は0.01%ほどしかなく、2)INRの麻酔では笑気を使ったGO麻酔で十分に不動化が得られるので、INRではすべてGO麻酔で維持している。
これに対し座長からは専門医試験では笑気は使ってはいけないとなっているので若い麻酔科医は真似すべきではないとの意見が出された。
○ 亜酸化窒素 4)注意点 (1)基本的注意点:亜酸化窒素の血液/ガス分配係数は0.47と、他の吸入麻酔薬と比較すると小さいが、空気に約80%含まれている窒素(0.014)と比較すると34倍である。これは何らかの閉鎖腔がある場合に亜酸化窒素を併用した麻酔を行うと、窒素が閉鎖腔を離れて血液に入り込む速度よりも34倍の速さで亜酸化窒素が血液から閉鎖腔に入り込むことを意味する。その結果、空気で満たされた閉鎖腔の容積が拡大または内圧が上昇する。弾力性のある隔壁を有する空気で満たされた閉鎖腔(腸内ガス、気胸、肺胞性嚢胞、空気塞栓)であれば容積が拡大し、逆に弾力性のない隔壁を有する閉鎖腔(中耳、脳室、テント上硬膜下腔)であれば内圧が上昇する。   ◇ 日本麻酔学会 麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版 Ⅳ吸入麻酔薬、2009:108   <7/3/2012>

213.01. 脳動脈瘤に対する血管内コイル塞栓術
○ 脳動脈瘤破裂の血管内コイル塞栓術の場合、propofolなどの静脈麻酔薬で過換気にすると脳容量が縮小して血栓が剥がれて再破裂する可能性があるので、揮発性麻酔薬を用い、PaCO2を下げすぎないようにする。体血圧を低くする。筋弛緩薬を十分使って無動化する。SAH症例の場合、術後動脈瘤の血栓化が確実になる翌日まで鎮静を持続し抜管しない、手術終了間際からpropofolか、デクスメデトミジン(プレセデックス)で術後呼吸管理を行う。◇佐藤清貴:血管内治療の麻酔 脳動脈瘤に対する血管内治療:原則として循環を安定化し、無動化できる全身麻酔を選択. Lisa Vol17. No2. 190-193:2010
○ 脳動脈瘤破裂によるSAHの場合、主治医が脳外科なのか、放射線科なのかはっきりしないので術後の安全には十分気を付ける必要がある。気管挿管チューブの抜管は術直後はできるだけ行わない方がよい。
○ [伝聞] 脳外科Drによれば、全てのSAHのPtで術後、気管挿管のまま人工呼吸器に接続するのは望まない。やはり、一般的に脳外科では抜管できるPtは抜管をしてほしい。*抜管基準をよく確認して抜管し、再挿管の可能性も考慮しておくことが必要である。
○ [経験] 30歳台後半♀、8か月前に脳梗塞の既往あり。現在は麻痺などなく回復している。A-comの未破裂脳動脈瘤に対する血管内コイル塞栓術を実施。163cm,65kg.BP105/75、pulse85bpm。Fentanyl120㎍IV→propofol120mgIV→roc36mgIVで挿管。導入後propofol5mg/kg/h+fentanyl(10/1) 1㎍/kg/hで維持したがBP80/40位に低下し、pulse 60bpmになった。脳梗塞の既往もあるので血圧を上げようと、カコージン(1/1)を40~30cc/hでDIV(=IBWで換算して11~8㎍/kg /min)した。BPは130/65位に上昇したが、心拍動が強くカテーテルのコントロールに影響するのでBPを下げるよう要望された。カコージンを中止してBP80/45位になったが、麻酔深度が浅くなり、体動、しゃっくりが出たので、セボフルランを追加し、安定した。血管内治療では侵襲が少ないのでTIVAではBP,pulseの低下が起き、それを避けようとすると麻酔深度が浅くなってしまう。筋弛緩薬で無動化する必要がある。
○ [経験] 血管内治療を全麻でする場合には鎮痛の必要性は少なく、無動化するのが主目的であると思うようになってきた。(導入) fentanyl100~200㎍+propofol2mg/kg、rocuronium6mg/kgで挿管、(維持) AO+propofol 体重cc/kg→1/2体重cc/kgで持続注入、挿管後20分位してからrocuronium 7㎍/kg/min=⇒rocuronium(2/1)を7×IBW×60×1/1000×1/2=0.21×IBWcc/hrで持続注入している。fentanyl50㎍を45~60分毎にIV. 終了は血管造影カテーテルの抜去前に。カテーテル抜去後に、刺入部の圧迫止血があるから。Propofolはさらに刺入部圧迫止血が終わるころにしている。  <10/7/2011>

213.01.02. 脳神経血管内治療に必要な知識 (4)脳動脈瘤に対する血管内手術の基本手技:simple techniqueによる瘤内塞栓術および親動脈閉塞術の実際:麻酔関連のみ
○ 脳動脈瘤に対する血管内手術:1. Simple technique: deviceによるassistなしに脳動脈瘤のtight packingを目標とする。 2. Adjunctive technique: balloon, double catheter, stentなどを駆使してwide nech aneurysmやgiant aneurysmに対する手技。
・瘤内塞栓術で治療困難な動脈瘤(海綿静脈洞部内頸動脈瘤や出血性椎骨動脈解離)に対する親動脈閉塞。
○ 破裂脳動脈瘤の治療:破裂急性期脳動脈瘤における治療の目的は急性期再破裂予防。
・破裂急性期におけるstent併用コイル塞栓術では出血性・血栓性合併症が多く、日本では破裂急性期のstentの使用は現在みとめられていない。
○ 未破裂脳動脈瘤の治療:未破裂脳動脈瘤の自然歴から余命が10―15年以上ある症例で瘤の大きさが5―7mm以上で検討する。
○ 脳動脈瘤に対する瘤内塞栓術の実際
1. 周術期管理:未破裂・破裂いずれの場合でも局所麻酔に比較して全身麻酔が有利な点が多い。体動がない鮮明な画像が得られる。麻酔科医とコンタクトを取って術中出血時の血圧管理やプロタミン投与。血栓性合併症時の抗血栓療法などの迅速な対応が可能となる。
・全身麻酔のハイリスク症例では局所麻酔下の治療も可能である。
・抗血栓療法の実際:術4日前からクロビドグレル(プラビックス)75mg 1T, 術後1週間はクロビドグレル75+アスピリン100、術後1週―6カ月はクロビドグレル75 1T, 6カ月をめどに終了。
・術中血栓性合併症予防目的に全身ヘパリン化。未破裂例はATCを約2倍、破裂例で約1.5倍を目標とする。出血性椎骨動脈解離や術前再出血はヘパリン化はルーチン化していない…術中出血が多い。
・術中血栓性合併症がない場合はヘパリン化は手技終了時に中止し、プロタミンによるreverseを行う。
・脳血管攣縮期の来院症例は血管内手術が選択されることが多く、塞栓術直後に脳血管攣縮に対する治療が可能である点は血管内治療の利点。
・水頭症を伴う場合は塞栓術直後に腰椎ドレナージを行う…稀に脳室ドレナージが必要になる事がある。
○ 治療手技:血管攣縮を来たした場合はガイディングカテーテルを引き戻して待機するか、血圧に注意しながらニカルピン動注を行う場合もある。
・バイプレーン血管撮影装置の場合、瘤の状態の把握など有利な点が多いが、Ptの被曝線量は多くなる。
○ 術中合併症への対応
◍[術中破裂] 破裂脳動脈瘤で多く1.4―7.2%、未破裂脳動脈瘤では1%以下。
・マイクロカテーテルやコイルによる穿孔はマイクロガイドワイヤーによる穿孔よりも転帰不良が多いとの報告がある(約30% vs 0%)
・マイクロカテーテルやコイルによる穿孔を起こした場合、デバイスを安易に引き戻すことはせず、直ちにバイタルサインの確認と低血圧の維持、ヘパリンのreverse、balloonを誘導している場合には親動脈の一次遮断を行う。コイルを瘤外から巻き始め、これをアンカーとして瘤内にマイクロカテーテルを引き戻しつつ破裂点を塞栓する。十分な塞栓後に造影でextravasationの有無を確認する。
◍[虚血性合併症] 大きな脳動脈瘤、wide neck, balloon-assisited techniqueにおいて起こし易い。動脈瘤内やneckでの血栓塞栓症が原因と考えられる。術前からの抗血小板薬の使用、術中ヘパリン化が有効と報告されている。
・血栓形成をみとめた場合、経鼻胃管からの抗血小板薬追加投与、オザグレルナトリウム投与(カタクロット、キサンボン)。
・血栓溶解やバルンによるPTA(percutaneous transluminal angioplasty)などを検討する。
・血管造影上、側副血行路が十分に発達していると思われる症例でも分枝閉塞が虚血性合併症を引き起こすことがある……PcomA脳動脈瘤においてAllcock testで後方循環からのPcomAの造影が確認されている場合も、PcomAを動脈瘤と共に閉塞した場合に視床穿通枝閉塞を合併することがある。
○ 特殊な脳動脈瘤に対する親動脈閉塞
・親動脈閉塞parent artery occlusion;PAOは瘤内塞栓術で根治困難な特殊な脳動脈瘤(海綿静脈洞部内頸動脈瘤や出血性椎骨動脈解離)に対して行われる。
・PAOは病変部を挟み込むように親動脈をコイル塞栓するinternal trappingと病変部より近位の親動脈をコイル塞栓するproximal occlusionに分けられる。
◍ 1)海綿静脈洞部内頸動脈瘤に対するPAO
・海綿静脈洞部内頸動脈瘤はmass effectにより脳神経症状を呈することがあり、親動脈をコイル塞栓することで動脈瘤への血流遮断するproximal occlusionが治療選択枝の1つとなる。
・内頸動脈瘤に対してPAOを行う場合、虚血性合併症を回避するためにバイパス術による血行再建が必要になることが多い。Balloon test occlusion(BTO)。血行再建当日にPAOを実施している。
・動脈瘤内にコイルを充填せずとも、術後mass effectの増悪を来たし症状が一過性に悪化することがある。
◍ 2)出血性椎骨動脈解離に対するinternal trapping
・出血性椎骨動脈解離は、急性期の再出血率が高く、再出血を来たした場合の死亡率が高いため、発症急性期の外科治療が必要になる。……開頭手術もしくは血管内手術による解離部のtrappingが行われるが最近は血管内治療internal trappingが選択されることが多い。
・椎骨動脈解離部と後大脳動脈、PICAの位置関係、灌流状態によりbypassを行ってからinternal trappingを行う場合がある。
◇ 遠藤英徳 ら:脳神経血管内治療に必要な知識 (4)脳動脈瘤に対する血管内手術の基本手技:simple techniqueによる瘤内塞栓術および親動脈閉塞術の実際 No Shinkei Geka, 40(12): 1107-1118, 2012      <1/24/2013>
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