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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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212.03. 脊椎手術術後の視力喪失

目次
212.03. ○ 脊椎手術術後の視力喪失(postoperative visual loss: POVL)
・発生頻度1/1000~3/10000 稀
・発症の時期はさまざま、手術直後から3~4日後までに痛みを伴わない視力喪失
・程度:軽度の視野欠損から完全な光覚の消失までいろいろ
・歴史的には視力喪失は人工心肺や心臓手術との関連が指摘されていたが脊椎手術が複雑化するとともにPOVLの発生率も増加している可能性あり
・眼は(a)網膜中心動脈CRAと(b)一連の後毛様体動脈との二重の血液供給を受けている
・視神経前部(強膜篩状板前方に位置する)は後毛様体動脈の分枝に供給される。これらは終動脈で網膜が虚血に陥るリスクがある。
・視神経後部は軟膜血管によって供給され、時にCRAの分枝にも供給される。
・視神経血液供給の自己調節能が最小であるか存在しない健常人が20%までのぼる。
・POVLの機序は2つ考えられる1)網膜中心動脈閉塞CRAO、2)虚血性視神経症ION
◍CRAOは心臓外科手術後のPOVLの主要な機序で人工心肺後の塞栓症であろう。
・脊椎手術後のCRAOは塞栓だけでなく網膜灌流圧が低下したことによる可能性もある。例えば腹臥位で直接眼球が圧迫される場合(“head rest syndrome”)
・CRAOは通常、偏側性で、眼窩周囲の浮腫を伴うこともある。これは眼球からの静脈流出の減少と、ひいては網膜灌流圧の減少を示す所見。眼底検査で、典型的にはチェリ-レッドスポットがみられる。CRAOの予後はよくなく、有意な視覚の改善はほとんどない。
◍IONは脊椎手術後ではCRAO以上によく見られる。
・虚血状態の視神経が強膜篩状板の前か後ろか(眼窩内か眼窩後か)によって前部視神経虚血症AIONと後部視神経虚血症PIONに分けられる。眼底検査で区別する。
・AIONでは眼底検査で発症時から異常を示すが、PIONでは眼底検査は発症時正常であり、数週間以上経過した後、視神経の死滅とともに異常が現れる。脊椎手術ではPIONの方が起こり易い。
・IONの原因は不明。PTの危険因子として(a)糖尿病の既往または動脈硬化性病変の既往、(b)術前の貧血、(c)術中の低血圧と貧血、(d)大量出血を伴う長時間手術、(e)手術中の血管収縮薬の使用。
・IONはCRAOに比べて両側性にも起こることが多い。CRAOのPtと異なり約40%のION Ptはわずかに視覚の回復をみとめた。AIONは視覚の回復に関して予後良好である。
◍脊椎手術PtのPOVLについてのASA小委員会の勧告
15) ハイリスクPtでは血圧は連続的にモニターすべき(動脈圧モニタリング)。人為的低血圧は高血圧Ptに対しては禁忌。高血圧でないPtで人為的低血圧が安全かどうかは意見の相違あり。
16) 循環血液量を維持するために晶質液とコロイド液を組み合わせて投与すべき。ハイリスクPtでは中心静脈圧CVPモニタリングも考慮すべき
17) Hb値を繰り返し測定すべき。成人の脊椎手術中のHbは常に9.0g/dl以上を維持すべき。
18) 神経麻酔を専門とする麻酔医の間ではα作動薬の長期間にわたる使用がPOVLに関与すると考えられているが、十分な根拠がない。
19) CRAOを予防するために、眼への直接的圧迫を回避する。ハイリスクPtの頭は心臓より高い位置でニュートラルポジションを維持する。
20) 複雑な脊椎手術をハイリスクPtに施行しようとする場合、段階的手術法にすることも考慮すべきである。
21) POVLが疑われた場合、直ちに眼科コンサルトを依頼する。
・いったんPOVLがみとめられ、CRAOを疑ったなら、眼圧を減らすための眼球マッサージ、またアセタゾラミド投与、血栓溶解薬の局所投与などが提唱されているが効果は疑わしい。Hb値やMAPを適正に管理する方が有益。
・MRI検査で下垂体卒中または皮質盲などの原因を除外する。視神経の浮腫はPIONであればMRIで確認される可能性がある。
◍対策:平均動脈圧MAPとHb値を保つ。術前にPtの体位に注意。術前にPOVLについて議論をしておく。腹臥位か側臥位の手術では15分の機に眼球に圧力がかかっていないことを確認する。それでもPOVLの完全回避は困難。
◇ Laurel E. Moore: 失明が脊椎手術の最も不幸な合併症の1つであることを忘れてはいけない 脳神経外科の麻酔 麻酔科エラーブック Catherine Marcucci編 メディカルサイエンスインターナショナル 2010. 543-546

○ 非眼科手術後の眼合併症の対策
・非眼科手術後の視機能障碍post operative visual disturbance POVDは脳外科、脊椎・脊髄外科、心臓手術後に多い。
・POVDの原因:視覚路への圧迫や血流障害、虚血性神経炎、網膜中心動脈閉塞症、皮質盲など
・脳外科手術では下垂体腫瘍や後頭葉腫瘍が主。血流障害として眼動脈分岐部近傍の脳動脈瘤など
・術中の視機能の客観的評価:視覚誘発電位visual evoked potential; VEPのモニタリング
・脊椎脊髄手術でのPOVDは欧米では0.028~0.2%、本邦では不明
・脊椎脊髄手術では後部虚血性視神経炎が最も多く、リスクファクターとして腹臥位手術、長時間手術、大量出血、貧血など
・腹臥位手術による眼圧上昇と眼合併症の関連性は多いとされる後部虚血性視神経炎では否定的
・心臓血管手術後のPOVDの欧米での発生率は0.0009~25.6%。筆者の例では4例/72例(5.6%)うち3例は無症候性。心臓手術では前部虚血性視神経炎が多い
・そのた、TUR-P、頭低位の腹腔鏡手術、根治的頸部覚醒術、鼻・副鼻腔手術、頭低位ロボット手術でもPOVDが多い。
◆ 川口昌彦:非眼科手術後の眼合併症の対策 第60回日本麻酔科学会 シンポジウム注意すべき術中術後合併症の発現と対応2013.5.13.   <6/24/2013>100.08.01. 非眼科手術後の眼合併症 に再掲
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