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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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100.08.06.  周術期の急性腎障害

目次
100.08.06.  周術期の急性腎障害 acute kidney injury : AKI
◍心血管手術後5-20%のPtでAKIが起こる。そのうち腎代替療法を要するAKIは0.4-1.8%。腎代替療法を要するAKIは心血管手術の独立した危険因子の一つ。
・冠動脈バイパス術(CABG)後のPtの血清クレアチニンsCrの濃度上昇率が25%未満であれば死亡率はそれほど高くない。上昇率が上がるにつれて生存率は著しく低下する。
・術前sCr濃度が1.2mg/dlを越えると死亡率が高くなる。1.2mg/dl以下でも上昇率が高い場合は要注意。
◍発症因子:腎血流量低下、近位尿細管上皮細胞障害・壊死、腎内皮細胞の炎症反応、炎症性白血球流入と活性化、腎毒性薬物。
・虚血性AKIが非常に多い:腎血管の異常(自動調節能の失効、腎血管収縮、外側髄質のうっ血)、尿細管異常(構造変化、尿細管閉塞)、炎症
・AKIとは近位尿細管および毛細血管において内皮細胞活性化、傷害、微小血管の血流減少が起こっている病態で、これに炎症性サイトカインが関与している。
◍AKIに関連する病態:心腎症候群cardiorenal syndrome CRS
・Type1:急性CRS 急性心不全からAKIが起こる ACE阻害薬、利尿薬、造影剤などが腎機能を低下させる ・Type2:慢性CRS ・Type3:急性RCS renocardiac syndrome 
・Type4:慢性RCS ・Type5:二次性CRS  
・腹部コンパートメント症候群
◍AKIの診断
分類基準:RIFLE criteria (Risk, Injury, Failure, Loss, End stage kidney disease)
sCr、GFR、尿量で分類
・バイオマーカー:好中球ゼラチナーゼ関連リボカイン;NGAL、シスタチンC、N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ;NAG
・血漿NAGL濃度がAKIの早期マーカーとして有用で腎代替療法の必要性を予測する。血漿NAGL >150ng/ml…AKIが発症する確率が高い。シスタチンC;24時間かかる。NAGは12時間で結果が出る。
○ 心血管手術関連AKIの危険因子
◍術前のAKI危険因子:
・腎毒性のある薬物;造影剤、アミノグリコシド系抗菌薬、NSAIDs、ACE阻害薬
・糖尿病、肥満、やせ、栄養失調(低アルブミン)
・心原性ショック、脱水やアレルギーなどによる非心原性低血圧、AAA stent術などの際に腎動脈を塞栓してしまった場合、心内膜炎
◍術中の危険因子:アプロチニン(トラジロール)、人工心肺の持続時間、高血糖、心原性ショック;人工心肺時間が長いと腎機能が悪化する;アドレナリン、ノルアドレナリン、バソプレッシンが出て腎血流が低下する
◍術後のAKI危険因子:腎毒性因子;横紋筋融解症、ミオグロビン、高血糖  
・心原性ショック、非心原性低血圧、高用量のカテコラミン投与も良くない、不整脈
○ AKIの予防
・血行動態を安定させることが第1
・腎毒性のある薬物の投与に注意:アプロチニンの使用は止めるように勧告されている。腎臓の自己調節を妨げる造影剤、ACE阻害薬、NSAIDs。膠質液HESも慎重投与。
・アプロチニン(トラジロール)はCABGのPt:Manganoの論文 NEJM2006 止血薬のアプロチニンはアミノカプロン酸、トラネキサム酸に比べて転帰がかなり悪い。5年生存率も悪い。尿細管壊死を起こす。
・アプロチニンとACE阻害薬の組み合わせはoff pump, on pumpに拘わらず腎機能障碍のリスクが高い。
◍造影剤使用当日の手術は避ける。造影剤は血管収縮を介する髄質の虚血と糸球体細胞への直接細胞毒。造影剤を使った当日はsCrが非常に高いが1日経つとかなり低下する。検査翌日以降の手術にした方がよい。造影剤使用量を1.36ml/kg以下にするとAKI発症率が低下する。造影前と後に生理食塩水を投与するのが有効。
・腎臓の自己調節を妨げる薬物に注意:NSAIDs、ACE阻害薬、ARB、術後鎮痛のNSAIDs(ロピオン)も良くないのでは。
・膠質液には注意:リンゲル液よりも膠質液HESの投与、およびその投与量の増加によって、腎代替療法を要するPtが増え、90日死亡率も高くなる。
○ 薬物による予防:ドパミンもフロセミドもマンニトールも腎保護作用はない
・心臓手術において腎保護目的でドパミン2㎍/kg/min持続点滴しても無効
・フロセミド0.5㎍/kg/minは腎機能障害を起こす頻度が高い。
・ドパミンを単独またはマンニトールと併用すると尿細管機能の指標となるβミクログロブリン排泄率を上昇させる。
・低用量のドパミンは確かに尿量を増やすが腎保護作用はない。
◍hAMPヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド:心不全治療薬
・hANP+ナトリウムペプチド受容体A(NPR-A)結合してcGMPをメッセンジャーとして生物学的活性を増やす⇒末梢血管を拡張させる⇒不用意に投与すると血圧↓。
・hANPはレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系をブロックする⇒尿量を増やす
・ピークのsCr濃度を減らす⇒腎代替療法を必要とするPtも少ない。
◍スタチン(HMG-Co A還元酵素阻害薬)は有意な腎保護作用は認められない。死亡率はスタチン服用Ptの方が低かった。
◍術前に貧血があったPtの弁膜症手術でエリスロポエチン(EPO)を1回投与するとAKIの発症率が低くなる。
◍fenoldopam(日本未承認) 短時間作用型ドパミン(D1)作動薬で、平滑筋弛緩、腎血管拡張、尿細管におけるナトリウム再吸収阻害作用があり腎保護に働く。
・0.1㎍/kg/minの24時間点滴でAKIを予防できた。
○ 腎代替療法:腎機能障害が起こってしまったら、持続的血液透析CHD、持続的血液濾過CHF、持続的血液透析濾過CHDF、血液透析
◍腎代替療法の開始基準  NEJM 2009, 361; 1627-38
1. 輸液投与に無反応な乏尿 (尿量<100ml/6時間)
2. 高カリウム血症 (>6.5mmol/L)
3. 重症アシドーシス (pH<7.2)
4. 高BUN濃度 (>70mg/dl)
5. 高血清クレアチニン濃度 (>3.4mg/dl)
6. 臨床的に重大な臓器浮腫 (例:肺水腫)
1~6のいずれか1つでも満たした場合に開始する
◇ 三高千惠子:周術期急性腎障害の疫学、機序、予防、治療 LiSA 別冊’13 vol 20, 2013, 52-60
○ [注釈] 心血管外科のdataであるが脳外科麻酔でも参考にできる。特に危険因子となる薬剤に注意。造影剤は無造作に術直前に使用している場合がある。術中のドパミンの中・高用量での使用は避けるべきなのか不明。マンニトールとの併用も多い。  <8/9/2013>
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