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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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10.03.05.03. 吸入麻酔シュミレーション

目次
10.03.05.03. 吸入麻酔シュミレーション
・吸入麻酔薬のシュミレーターとして有名なのはGas Man (http://www.gasmanweb.com/)。亜酸化窒素、ハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルランを選択可能。Ptの体重、麻酔回路、新鮮ガス流量、肺胞換気量、心拍出量を入力すると経時的な各組織での濃度を計算できる。
◍[薬物動態モデル]・臓器のうち血管豊富群(vessel rich group: VRG)、筋肉(MUS)、脂肪組織(FAT)、血管の乏しい組織群(vessel poor group: VPG)からなるモデル
・VRGは脳、心臓、肝臓など。体重の10%程度で心拍出量の75%の血流を占める。静脈麻酔薬で使われる効果部位濃度はVRGでの濃度に相当。
・麻酔薬投与時は肺胞濃度が最重要⇒呼気麻酔薬濃度モニタ
・肺胞から血液への麻酔薬の取り込みは心拍出量と溶解度により規定される。肺胞から血液への溶解度は血液/ガス分配係数。セボフルランの血液/ガス分配係数=0.65⇒平衡状態でセボフルランの血中濃度=肺胞濃度の0.65倍。イソフルランの血液/ガス分配係数=1.4.セボフルランはイソフルランに比べると血液に溶解しにくい。
◍[麻酔の導入]血液/ガス分配係数が大きくなるほど血液に多くの麻酔薬が取り込まれる⇒麻酔導入期には肺胞濃度の上昇が遅れ、麻酔の導入が遅くなる。心拍出量が多いほど麻酔の導入は遅くなる。
・麻酔導入開始後まずVRGに麻酔薬が大量に取り込まれる。VRG容積は小さいので10分程度で動脈血と平衡に達する。
・麻酔導入期には十分なガス流量と高濃度の吸入麻酔薬により急速に肺胞濃度を上昇させる必要がある。麻酔ガスモニタで得られる呼気麻酔ガス濃度は脳内の濃度VRGと乖離があることに注意が必要。
・イソフルランでは肺胞濃度の上昇はセボフルランより遅く10分後でも50%に留まる。VRGの濃度上昇も緩徐。
・1MACまで上昇するのにセボフルラン=4分、イソフルラン=7分程度必要。イソフルランでは静脈麻酔薬で導入後、イソフルランの効果が十分でない可能性がある。
◍[麻酔の維持]・導入期にVRGに取り込まれた後は筋肉(MUS)への取り込みが主。MUSは体重の50%で心拍出量の20%の血流しか受けない。血流に比して容積の大きな組織を満たすには時間がかかる。動脈血と平衡に達するには数時間を要する。これにより麻酔時間による覚醒速度の格差が生じる。
・脂肪組織は体重の20%、心拍出量の6%の血流を受ける。セボフルランの脂肪/血液分配係数48、筋肉/血液分配係数3.1。脂肪組織は筋肉よりも麻酔薬への親和性高い。平衡に達する時間は24時間程度。覚醒時に脂肪組織の麻酔薬が影響することは少ない。肥満Ptでは脂肪組織に麻酔薬が蓄積して覚醒が遅れるという説は、覚醒時の呼吸状態や筋弛緩薬など他の薬物の影響が大きい。
◍[覚醒]・血液/ガス分配係数の小さいセボフルランはイソフルランと比べて覚醒が速い。イソフルランは血液/ガス分配係数が大きく血液中に溶解している容量が大きいから。
・セボフルラン呼気濃度1.5%で4時間麻酔維持後の覚醒。新鮮ガス流量:維持中3L/分、覚醒時6L/分、換気量4L/分→VRG0.5%で覚醒すると→約10分で覚醒→ALVとVRGの乖離あり覚醒早期は呼気セボフルラン濃度は必ずしも脳内濃度の指標にはならない。
・覚醒に重要なのは十分な換気。レミフェンタニルなどopioidの濃度が高い時は自発呼吸が出ない。換気量0.5L/分にするとセボフルランからの覚醒は著しく遅れる。過換気(8L/分)にしてもPaCO2の低下で脳血流量が低下して覚醒は早くならない。
・覚醒時にはMUSの濃度低下が遅れ、筋肉組織にセボフルランが蓄積している。
・覚醒し抜管後に呼吸抑制があるとVRG濃度が再上昇しopioidの呼吸抑制やその他の要因で換気が抑制されるとPtは再度入眠してしまう。
・麻酔時間によって組織での麻酔薬の分圧が異なる。VRGの麻酔薬分圧はALVと平衡に達しているがMUSの分圧は麻酔時間によって異なる。
・呼気セボフルラン濃度1.5%で1時間から6時間維持した場合、麻酔時間による影響は少なく、約10分で覚醒する。吸入中止後30分の濃度は麻酔時間1時間で0.1%、6時間では0.3%で帰室時の覚醒状態は麻酔時間が短い方が良好。
・イソフルランでは長時間になると明らかにVRGの濃度低下が遅くなり、維持濃度1%の1/3(0.33%)で覚醒するとすると1時間の麻酔で10分、6時間では20分が必要。
・VRGでの濃度が維持濃度の50%に低下する時間context-sensitive half-time=50%decrement timeはデスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルランで差がなく、麻酔時間が長くなっても延長しなかった。
・80%decrement timeはデスフルラン=セボフルラン<イソフルラン、エンフルラン。
・90%decrement timeはデスフルラン<セボフルラン
・MAC awakeの2倍程度の濃度で維持すれば麻酔覚醒に必要な時間は麻酔薬による差はないが、それ以上の濃度で維持すればデスフルランやセボフルランは覚醒が速い。
・セボフルランの維持濃度1.0~1.5%では10分程度で覚醒する。0.75%では2分程度で覚醒するが術中覚醒のリスクが増す。2%で維持すると30分後の濃度0.3%で1%で維持すると0.15%となる。
・レミフェンタニルを併用して低濃度セボフルランで維持すると病棟帰室時の覚醒状態が良好となる。
◇ 森本康裕:吸入麻酔シミュレーション Feature Articles Anesthesia 21 Century Vol.11, No2-34, 2009, p26-31 
○ [注釈] 吸入麻酔薬呼気濃度モニタは常識的に装備されているものであり、(M病院では装備されていない)静脈麻酔薬の効果部位濃度のようにシミュレーションしようという話である。セボフルラン、デスフルランはVRG濃度の上昇も覚醒時の濃度低下も速いので、特にレミフェンタニルを併用したバランス麻酔ではこのことを理解すれば必ずしも吸入麻酔薬濃度モニタは臨床的には必要ないようにも思える。もちろんあるにこしたことはない。      <3/20/2014>
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