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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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100.07. 人工呼吸中の鎮痛・鎮静・せん妄対策

目次
100.07. 人工呼吸中の鎮痛・鎮静・せん妄対策
・「人工呼吸中の鎮静は必要に応じて最小限に、必要がなければ鎮静なしでもよい」という考えが主流となっている。
○ 鎮静の前に鎮痛を
・鎮静なしで管理するにはまず「適切な疼痛対策」
・Ptの苦痛・疼痛の有無とその原因を探り非薬物的介入が可能かどうか検討し、可能であれば試みる。創部痛などは非薬物的介入では改善が得られないことが多く、しばしば鎮痛薬の投与が必要になる。
○ 鎮痛薬の第1選択は麻薬性オピオイド
・モルヒネ、フェンタニル。レミフェンタニルは全身麻酔時以外では許可されていない。
・麻薬性オピオイドの副作用である呼吸抑制は人工呼吸時にはウィーニング時を除いて問題にはならない。一般に沈溺性を懸念する必要はない。
・術後Ptでは患者自己調節鎮痛法patient controlled analgesia (PCA)が使いやすい。硬膜外鎮痛法(PCEA)と静脈内鎮痛法(iv-PCA)
・内科系Ptでは麻薬性オピオイドの少量持続静注が用いられる。
・麻薬、向精神薬取締法に基づく使用手続きの煩雑さから麻薬拮抗性鎮痛薬が使われることが多いが、ブプレノルフィン(レペタン)、ブトルファノール(スタドール)、ペンタゾシン(ソセゴン)これらの鎮痛の質は良好とは言い難く、レペタン、ソセゴンでは悪心・嘔吐・幻覚・せん妄などの欠点が大きい。肺動脈圧↑、心筋酸素消費量↑など重症Ptでは注意が必要。
○ 疼痛の程度を正しく評価
・Numeric Rating Scale (NRS) 0~10の11段階評価が使いやすい。
・Behavioral Pain Scale (BPS), Critical-Care Pain Observation Tool (CPOT)人工呼吸中のPtの疼痛評価。
・疼痛対策介入の目安:NRS<3、BPS<5、CPOT<2
○ 疼痛の次に鎮静
・不十分な鎮静under-sedationがPtにとって利益がないのは明らか
・深すぎる鎮静over-sedationもVAP(ventirator associated pneumonis)の発生率を増加させる。
・BISモニターの人工呼吸中の使用には有用性が証明されていない。
・適切な疼痛対策を基盤とし、その上でPtが不安感や不快感、苦痛や疼痛などを感じることなく、いかに浅い鎮静状態を安全で快適に維持できるか。この観点からRamsey sedation scale(RSS)は力不足。
・Richmond Agitation-Sedation Scale (RASS), Sedation-Agitation Scale(SAS) が推奨。
○ 鎮静薬の使い分け
1)プロポフォール:GABA受容体に作用。血液脳関門BBBを容易に通過。速やかに効果発現。成人0.3~3.0mg/kg/時
・顕著な循環抑制と呼吸抑制
・小児への投与は禁忌⇒プロポフォール注入症候群PRISの発生の危険性
・急性心不全を伴う心筋症、横紋筋融解症、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、高トリグリセリド血症。成人の発症も報告されている
・PRISは敗血症や中枢神経障害などの重傷病態が基礎にありプロポフォールの長期大量投与に加え、カテコラミンやステロイドを併用されている症例に発症することが多い。遊離脂肪酸代謝不全。
・重症Ptに5mg/kg/時以上の投与速度で48時間以上の投与は避ける。
・代謝性アシドーシスや筋融解の所見を認めた場合は直ちに薬剤投与を中止する。
2)デクスメデトミジン(プレセデックス、DEX):強力かつ高い選択制を有する中枢性のα2アドレナリン受容体作動薬。BBBを容易に通過
・橋背外側の青斑核に存在するα2受容体刺激により発現
・急速投与では末梢性α2B受容体刺激による血管収縮作用により一過性血圧上昇。重症Ptでは初期負荷投与は行わない方がよい。
・維持投与量では交感神経系の抑制が前面に出て除脈、低血圧を示すがプロポフォールより軽度。
・臨床使用量での鎮痛作用は軽度で補助的役割。
・DEXは鎮静下においても刺激によりPtは容易に覚醒し、見当識を保持することが可能。呼吸抑制は軽度である。
・非侵襲的陽圧換気法(non-invasive positive pressure ventiration: NPPV)時の使用可。
・維持投与量 0.2~0.7㎍/kg/時
・深い鎮静が困難で、強い呼吸困難感を訴える重症呼吸不全Ptや。急速に鎮静を必要とする興奮状態のPtなどには効果が得られないことが多い。
3)ミダゾラム:高い脂溶性、BBBを容易に通過。GABA受容体に作用するagonist。
・体内分布容積が極めて大きく持続投与により排泄半減期が延長。48~72時間以上持続投与で覚醒遅延する。
・肝障害や腎障害時にも作用の延長をきたす。
・維持投与量 0.03~0.18mg/kg/h、bolus0.03~0.06mg/kg。
・強い呼吸抑制作用、1回換気量と呼吸数が減少し分時換気量が大きく低下する→重症呼吸不全Ptの人工呼吸管理には利点。
・交感神経抑制作用、心収縮抑制作用、血管拡張作用→低血圧。プロポフォール、DEXより作用は弱く、循環動態の不安定なPtの鎮静には良い適応となる。
・プロポフォール,DEXと比較して長期投与後の覚醒遅延、せん妄、退薬症状、薬剤耐性を生じやすい。認知機能障害→せん妄⇒可能な限り連日の中断 daily interruption of sedation:DISを試みて再評価。
・ベンゾジアゼピン系薬剤は長期精神障害発現の危険因子の可能性あり。
○ 人工呼吸中のせん妄対策:人工呼吸を必要とするような重症Ptにしばしば発生する異常興奮などの精神障害はその多くが精神医学的には「せん妄」。予後に大きく影響し、6か月後の生存率を低下させる独立危険因子。
・せん妄を多臓器障害の一分症としての中枢神経機能障害としてとらえる。
・(1)過活動型hyperactiveせん妄、(2)低活動型hypoactiveせん妄、(3)混合型mixedせん妄がある。
○せん妄の治療薬:
・低酸素血症や呼吸性および代謝性アシドーシス、低血糖などの代謝障害、ショックなどの病態の一部のこともあり、これらを改善すればせん妄の治療は不要なことも多い。
・セレネース、DEX、クレチアピン(非定型抗精神病薬)などが有用である可能性はあるがevidenceはない。人工呼吸Ptの急性期に使用できるせん妄治療薬は今のところない。
・over-sedationを防ぎ、Pt予後を悪化させない鎮静を行う上で有効なのは鎮静プロトコルの導入と毎日1回、持続鎮静を中止してPtを覚醒してみる管理法(DISまたはspontaneous awakening trial: SAT)
・人工呼吸器からの離脱のために自発呼吸試験spontaneous breathing trial; SBT
・ABCDEバンドル:
A) 毎日の鎮静覚醒トライアル(DIS/SAT)
B) 毎日の人工呼吸器離脱トライアル(SBT)
C) AとBの組み合わせ:鎮静鎮痛薬の選択
D) 毎日のせん妄モニタリングと管理
E) 早期離床と運動療法              
◇ 布宮 伸:人工呼吸管理 人工呼吸中の鎮痛・鎮静・せん妄対策 日臨麻会誌, vol35, No1, 2015. P98-105   <5/13/2015>
○ [経験] 従来からの人工呼吸時の鎮静:midazolam(10mg/2mL/Ap)×2Ap + セレネース(5mg/1mL/Ap)×2Ap + fentanyl(100㎍/2mL/Ap)×2Ap/NS250mLを10~50ml/hでdiv。これはやや少なめの投与量だがICUのない病院、病棟でのマニュアル。なお人工呼吸器を使わないときはfentanylを除く。      <5/16/2015>
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