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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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90.07. 気管支喘息Ptの麻酔

目次
90.07. 気管支喘息Ptの麻酔
○ 気管支喘息Ptの周術期呼吸管理
・気管支喘息は気道の慢性炎症性障害
・繰り返し起こる咳、喘鳴、呼吸困難
・可逆性の気道狭窄と気道過敏性の亢進
・好酸球、リンパ球、マスト細胞などの浸潤。気管上皮の剥離を伴う慢性の気道炎症
・多くのPtで環境アレルゲンに対するIgE抗体が存在。IgE抗体を持たないPtでも気道炎症、リンパ球活性化。
・累積有病率:乳幼児5.1%、小児6.4%、成人3.0%(15~30歳で6.2%)
・麻酔下の手術症例が喘息に罹患している率は1.5~2.5%。
・全身麻酔中に喘息発作を起こす頻度は0.1~2%、喘息を有している場合は2~10%
○ 重症度分類
・現在行われている治療と、その結果の症状の有無が重要
・喘息症状の強度、頻度、日常の最大呼気流量値peak expiratory flow PEF、1秒量とその日内変動、日常の喘息症状をコントロールするのに要した薬物の種類と量
・軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型
・治療ステップ 1, 2, 3, 4
・現在の治療を考慮した喘息重症度の分類(成人)
○ 術前治療薬
・1)長期管理薬(コントローラ)と2)発作治療薬(レリーバ)
1) 喘息症状の軽減、消失とその維持および呼吸機能の正常化とその維持を図る薬物。抗炎症薬と長時間作動性気管支拡張薬⇒術前からの治療薬は手術当日も継続使用
2) 短時間作動性β2刺激薬、ステロイド薬、テオフィリン薬
○ 麻酔計画
・術前診察 1)喘息の詳細
2)アスピリン喘息の有無:成人喘息の約10%はNSAIDsの内服や注射、坐薬の使用直後から1時間程度までの間に発作を起こす。多くは30‐40代→発作の既往があればNSAIDsの使用はすべきではない。
3) 気道感染の有無:上気道炎(感冒様症状)が治癒した後も2wkは発作の危険性が高い。可能であれば手術の延期を考える
4) アレルギー性疾患の有無→できるだけ避けておく
5) 喫煙の有無:少なくとも術前4‐8wkの禁煙
6) 症状の有無:現在、喘鳴などの喘息症状があれば発作中なのか確認する。発作中であればできれば症状安定するまで手術延期する。
⇒理学的所見、呼吸機能検査所見、PEF値、血液ガス所見から重症度判定する。
・術前の薬物療法
・現在の治療で十分喘息のコントロールが得られている場合はその治療を維持。コントロール不十分な場合は治療を強化する→無治療状態のPtあるいは短時間作用性β刺激薬の頓用しか行われていないPtでは、たとえ症状が稀にしか見られていなくても手術までに時間的余裕があるなら吸入ステロイドを開始したほうがよい
・症状のコントロール不十分な場合や、1秒量orPEF値が予測値の80%未満の場合は経口ステロイド薬の短期集中内服(プレドニゾロン換算0.5mg/kg、3~7日間)を考慮
→時間がなければステロイド点滴静注(evidenceはほとんどない)
・術前6か月以内に気管支喘息の治療のために全身ステロイド薬を投与したPt(経口ステロイド薬常用者を含む)に対しては術前、術中にステロイド薬の点滴静注
 術前:ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン)100~300mg、
メチルプレドニゾロン(デポメドロール)40~80mg
 術中:ヒドロコルチゾン100mg or メチルプレドニゾロン40mg 8時間毎
・高用量の吸入ステロイド薬常用Ptで周術期に吸入が行えない場合は全身性ステロイド薬に切り替え、吸入可能になったらできるだけ早期に減量中止する
・β2刺激薬:吸入使用困難→短時間作用性吸入β2刺激薬のネブライザ吸入:サルブタモール(ベネトリン)、スピロベント、セレベント、ホクナリン、メプチン、ベロテック
・テオフィリン徐放性製剤常用Pt→内服再開までアミノフィリン点滴静注。血中濃度測定し中毒域を確認
・麻酔計画
・局麻で可能な手術は局麻で。全麻でも気管挿管回避できるならマスクやLMAで。
・麻酔中の喘息発作による死亡、不可逆的脳損傷は局麻でも起こりうる
・LMAやマスクでは誤嚥の危険性あり→喘息発作誘発→誤嚥性肺炎⇒必要な場合はためらわずに気管挿管。痛み、不安で発作誘発もある。
・spinal anesthやepidural anesthの場合、麻酔範囲がTh5以上になると胸部交感神経が遮断され、発作誘発の危険性あり
・術後鎮痛
・硬膜外麻酔は術後も鎮痛に使う
・麻薬や麻薬拮抗性鎮痛薬で除痛
・NSAIDsやヒスタミン遊離作用のあるモルヒネは避けたほうがよい
○ 麻酔導入および維持の注意点
・ヒスタミン遊離作用の少ない薬物を使用。気管挿管する場合は麻酔深度を十分深くして。
・揮発性吸入麻酔薬
・一般に揮発性麻酔薬は気管支平滑筋弛緩作用がある
・イソフルラン、デスフルランには気道刺激性があり咳込み易い
・気道刺激性が少なく導入覚醒も速やかなセボフルランが最適
・静脈麻酔薬
・プロポフォールとケタミンは気管支拡張作用がある
・チアミラールはpropofolより気管支攣縮を誘発しやすい。Propofolも気管支痙攣報告あり
・ミダゾラムは問題なく使用できる
・筋弛緩薬
・スキサメトニウムSCCはヒスタミン遊離作用があり不可
・パンクロニウム(ミオブロック=製造中止)、ベクロニウム(マスキュラックス)、ロクロニウム(エスラックス)は喘息Ptに安心して使用できる
・拮抗薬として抗コリンエステラーゼ薬(ネオスチグミン)は気管支収縮作用あり使用できない。スガマデックス(ブリディオン)は使用できる⇒ロクロニウムが安全
・鎮痛薬
・オピオイドの一部はヒスタミンを遊離させるのでその作用が少ないものを使用
・fentanylは副交感神経刺激作用があり、喘息には禁忌。Remifentanilは喘息には慎重投与⇒モルヒネよりヒスタミン遊離作用は少なく安全に使える
・pentazocine、エプタゾシン、ブプレノルフィン(レペタン)、ブトルファノール(スタドール=製造中止)は記載なし
・NSAIDsは気管支攣縮を誘発しやすいがアセトアミノフェンは比較的安全
○ 全身麻酔中の喘息発作の症状
1) Ptに意識がないため、自覚症状の聴取ができない
2) 聴診上、両肺野にて喘鳴が認められることが多い
→従量式換気中は気道内圧が上昇。従圧式換気中は1回換気量が減少する
・カプノグラムでは呼気相の立ち上がりが緩徐になる
・フロータイムカーブでは呼気時間の延長が認められる
→気管チューブや蛇管などの機械的狭窄、痰などによる狭窄、片肺挿管、自発呼吸出現などチェック。
・呼気時間が十分確保できていない場合→吸気終末の気道内圧に増減
 吸気の1回換気量が一定→呼気換気量に変動。少ない呼気数回→多い呼気1回
・フローボリュームカーブでは吸気と呼気の1回換気量が異なる
○ 麻酔中に発生した気管支喘息の治療
(1) β2刺激薬
・まずβ2刺激薬を吸入させる。IVより作用発言時間が短く、副作用も少なく、より有効。
・ネブライザーよりスペーサーの方が短時間で効果が得られる
・一度に高用量より少量を一定時間毎に反復投与したほうが治療効果が優れている
 →加圧噴霧式定量吸入器で1~2パフ、20分おき(2回繰り返し可能)
(2) ステロイド
・最も軽症のPt以外ではステロイド全身投与を考慮すべき
・ヒドロコルチゾン200~500mg、メチルプレドニゾロン40~125mg、デキサメタゾンorベータメタゾン4~8mg(div)
・以後、ヒドロコルチゾン100~200mg、メチルプレドニゾロン40~80mg、4~6時間毎
デキサメサゾンorベータメタゾン4~8mg必要に応じて6時間毎div
・アスピリン喘息の場合はコハク酸エステル型ステロイド(サクシゾン、ソルメドロール)の使用を回避する。デキサメタゾンorベータメタゾン
・アスピリン喘息の有無が不明の場合、初回投与では約1時間を目安に点滴
・1日量800mgヒドロコルチゾン、160mgメチルプレドニゾロンが上限
(3) 抗コリン薬
・β刺激薬に加えて使用。イプラトロピウム80㎍(4パフ)を10分おきにスペーサーで投与。50㎍を20分おきネブライザーで投与
(4) アミノフィリン、テオフィリン
・アミノフィリン6mg/kgを等張補液剤200~250mLに溶いて、1/2量を15分、残りを45分で投与。中毒症状(全麻中は頻脈や期外収縮で判断)が現れたら中止
・テオフィリン1日量600mg以上投与例、血中濃度8㎍/mL以上の場合、アミノフィリンは半分以下にする
・β刺激薬に静注アミノフィリンを使用しても有益性はないとの報告あり
(5) アドレナリン
・薬物性や他のアレルゲンによる喘息発作が予測される場合
気道の浮腫が著しい場合
β2刺激薬の吸入でも十分な効果がない緊急時
⇒不整脈、高血圧、心筋虚血、心停止に注意しながら使用する
・アドレナリン0.1%溶液0.1~0.3mL皮下注。心拍数130bpmを越えないようにモニタリングしながら20~30分毎に反復投与or 0.0001%溶液として1mLずつIVする。(β2刺激薬を心臓に関する副作用を考慮して使えないときのみ)
(6) その他
マグネシウム、ロイコトリエン拮抗薬、リドカイン、ニコランジルが喘息発作に有効という報告あり
○ 喘息Ptの人工呼吸管理
・肺の過膨張の予防が重要⇒1)呼気時間の確保、2)気管支の閉塞の解除
・呼気時間の確保:1回換気量5~8mL/kg、I:E比=1:3以上として両相の換気量を一定に
気道内圧は最大50cmH2O未満。平均気道内圧20~25cmH2O未満。PEEPは避ける。
従圧式換気の方が過剰圧を予防しながらより肺を均一に膨らませる
気道内圧や呼気時間の制限のために分時換気量が少なくなり、PaCO2の上昇がみられる場合がある
PaCO2の維持と圧外傷の予防を重視する PaCO2<90mmHg、pH>7.20であればOK.
・PEEPはかけない方がよいという報告が多い。5cmH2O程度のPEEPを付加している報告もある。
○ 術後の注意点
・術中に喘息発作が発生した場合は喘息発作の症状が改善するまで覚醒や抜管をせずに治療を行う
・術中に発作がみられなくても、麻酔終了後、気管チューブ抜管時に発作が発生することが多い
・深麻酔下で抜管した時よりも覚醒後抜管のほうが気道合併症の発生頻度が高い
・手術終了時にLMAを挿入してから気管チューブを抜管しその後麻酔覚醒させる方法を推奨する報告もあるが完全覚醒前の抜管には誤嚥のリスクも指摘されている
・喘息を有する105例の報告で麻酔中に発作を起こしたものは全麻酔例の7%で、術後1wk以内では20%の症例が発作を起こしたという報告があるので注意
◇ 相澤純:気管支喘息Ptの周術期管理~術前評価から術後管理まで Anesthesia 21 Century Vol14, No2-43, 2012, p28-36 <5/27/2015>

90.07.02. 気管支喘息Ptの麻酔経験
○ [経験] 60歳代女性。胆嚢結石症、胆石発作で数回の救急受診歴あり。151.8cm,55.8kg。
既往歴:小児期より喘息発作あり。ステロイド吸入薬の処方は受けているが発作時のみ不定期に吸入している。現在も喘息症状あり、コントロール不良。喫煙はしないが、飲食店経営しており店での間接喫煙のため、朝は呼吸苦ないが、夜帰宅時にはやや呼吸困難になる。アトピー性皮膚炎あり。15歳時に急性虫垂炎で虫垂切除を受けた時に出血多量で輸血を受けた。そのためC型肝炎に罹患し、最近、インターフェロン治療で治癒した。HCV抗体12.1+。40歳代で子宮筋腫のため、腰椎麻酔下に手術を受けた。
術前経過:手術4週間前の肺機能検査:VC:2.06L, %VC: 87.3%, PEF: 47.7%, FEV1.0%;67.05%, FEV1.0; 1.6, %FEV1; 63%⇒PEF, %FEV1 共に80%未満。閉塞性換気障害。SPO2; 96-98%
手術4日前に呼吸器内科で診察を受けた。Wheezing+で、要注意指示あり。シンビコートタービュヘラー60 1日2回、1回2吸入に増量。ホクナリンテープ2mg 1枚貼付。
手術当日:朝 ソルメルコート125mg(div)、ベネトリン0.3mL/NS10mL吸入。
麻酔導入:O2;6L/min mask、アトロピン0.25mg(iv)。Fentanyl 2mL(0.5mLずつ4分割投与)、propofol 100mg(20mgずつ分割投与)、エフェドリン4mg(iv)、エスラックス 40mg (iv)、セボフルラン1.0% nask⇒この時点でカプノグラムは閉塞性の換気パターンを示していた。
挿管:ID 7.0, パーカー気管チューブ、smooth intubation、
AOS(Air2L, O2;2L, Sevo1.0%)+propofol 5mg/kg/h→4mg/kg/h
維持:AO+Sevoflurane 1.6→1.4%
+remifentanil 0.2→0.18→0.16㎍/kg/min
カプノグラムは術中ずっと正常パターンだった。I:E=1:2、従圧式換気。
麻酔時間2時間46分、手術時間1時間48分、気腹時間120分。
術後鎮痛:術中後半からfentanyl(25㎍/mL)を0.5mL/hで持続iv
覚醒:手術終了後15分で気管内吸引した後、深い麻酔状態ではないが完全覚醒前にブリディオン150mg(iv)、気管チューブを抜管。深呼吸可、RR<30回/分、1回換気量>300mL、SPO2:100%、Aldorete Score; 10点
術後鎮痛の為fentanyl(25㎍/mL)を0.8mL/h(=40㎍/h)持続iv。
HCU帰室後、軽度wheezing+だったが、ベネトリン吸入して消失した。
翌朝まで呼吸状態良好、fentanyl 40㎍/hで疼痛なし。SPO2;94%。
4PODに軽快退院。13PODに外来再診、その間、喘息発作はなかった。
○ [問題点] 外来受診時にwheezingが聴取されてもPtは何ともないと言っていたが、もう少し術前喘息コントロールすべきだったかもしれない。麻酔導入維持はSevofluraneでよかった。Fentanylが喘息に禁忌だとすればやはり術後鎮痛は硬膜外ブロックすべきだろうと思う。結果的には問題は起きなかったが。    <6/1/2015>
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