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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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90.08. Parkinson病Ptの麻酔

目次
90.08. Parkinson病Ptの麻酔
○ Parkinson病Ptの周術期管理
・パ病は薬物療法が中心で、多種類の薬物を併用していることが多く、周術期の薬物相互作用が大きな問題となる。
◎ パ病の病態:中脳黒質緻密層のドパミン作動神経細胞が変性脱落し、尾状核及び被殻のドパミン量が減少し、相対的にアセチルコリン作用過剰状態になって症状が出現する。
○ パ病の古典的三徴:安静時振戦、筋強直、寡動。 前傾姿勢、小刻み歩行。日本100~150人/10万人。発症は50~65歳
◎ 術前の諸臓器の機能評価
・呼吸器系:換気障害、嚥下機能低下。パ病Ptの1/3は呼吸機能検査で閉塞性パターン。咽頭筋や食道機能障害のため喀痰排泄困難、誤嚥を起こし易く肺炎発症のリスクが高い。
胸郭や腹壁筋に筋強直⇒換気障害必発⇒人工呼吸器からの離脱困難
・循環器系:自律神経障害、パ病治療薬の副作用
起立性低血圧症;レポドパ(L-ドパ)による治療開始以前から起こる。長期ドパミン補充療法→腎血流量、糸球体濾過量増加→水,Na排泄増加→脱水,循環血漿量低下
・精神症状:幻覚、妄想、意識障害を伴うことがある⇒術前に薬物コントロールを。
・術前の薬物投与:ドパミンはBBBを通過できない→通過できるドパミン前駆体L-ドパが用いられる→副作用としてドパミン過剰;錯乱、精神症状、抑うつ、オン・オフ現象、ジスキネジア、悪心嘔吐、心筋感受性亢進、血管内容量減少、起立性低血圧、L-ドパ長期連用によりweaning off現象(作用持続時間短縮、次の内服前に薬効が切れる)、L-ドパの急激な減量・中止で悪性症候群。  L-ドパ [ネオドパストン、マドパー]
L-ドパ:半減期1~3時間と短い→手術直前まで継続、OPE終了後速やかに再開。OPE時間が長い場合は術中経静脈投与もあり。
○パ病で使用されるその他の薬物  
・ドパミン受容体刺激薬;ペルゴリド、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ロピニロール [パーロデル、カバサール]
・抗コリン薬:トリヘキシフェニジル [アーテン、アキネトン、パーキン]
・抗ウイルス薬:アマンタジン [シンメトレル]
・ノルアドレナリン前駆体:ドロキシドパ
・モノアミノ酸化酵素(MAO)-B阻害薬:セレギリン [エフピー]
・末梢性カテーテルO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:エンタカポン
・抗痙攣薬:ゾニサミド [エクセグラン]
◎ 麻酔方法:
・パ病Ptでは呼吸機能↓、分泌物貯留、無気肺、誤嚥、呼吸器感染症を起こし易い⇒可能なら区域麻酔を選択○
○ 揮発性吸入麻酔薬:セボフルラン、デスフルランが術後呼吸機能への影響が少ないが、術中低血圧に注意。△
・チオペンタール:ドパミン放出を抑制するのでパ病を悪化させる可能性があるが臨床で直接症状悪化させた報告はない△
・プロポフォール:ジスキネジアを誘発するので定位脳手術には控えた方がよい。振戦抑制するので使用可○
・PONVを考慮してpropofol中心のTIVAが可○
・ケタミンは交感神経反応過剰となり、使用不可×
・オピオイド鎮痛薬は筋硬直を悪化させる可能性ある、筋弛緩薬使用で可○
・モルヒネは低用量でジスキネジアの発症を減少させるが、高用量では増加する報告あり
・レミフェンタニルは術中使用可○、導入時筋強直や覚醒時のシバリングに注意
○ 硬膜外麻酔の併用:可能なら全身麻酔+硬膜外麻酔。周術期抗凝固療法を行う場合は選択しづらい
・オピオイドは筋強直や呼吸抑制のリスクを上昇させるので硬膜外麻酔は局麻薬のみで。
○ 神経ブロック:TAPブロックar 腹直筋ブロック
・手術開始前に0.2%ロピバカインまたは0.25%レボブピバカインを総量40-60mL
・内臓痛は遮断されないのでオピオイド(レミフェンタニル)の併用が必要
○ 筋弛緩薬:ロクロニウム 気管挿管を最小必要量 0.6mg/kg
・筋弛緩モニター TOF Watch使用 TOF count<3
・スガマデクスで拮抗
・アトロピンはBBBを通過し中枢性抗コリン作用+。ネオスチグミンはムスカリン様作用のため閉塞性肺障害のあるパ病では気管支攣縮を起こす可能性あり ×
○ 低血圧対策:循環血液量減少による低血圧が起こりやすい
・絶飲食開始時から持続輸液して血管内容量を補正
・鎮静薬は緩徐に
・CRC輸血を用意
・昇圧薬:フェニレフリンorノルアドレナリン ○
ドパミン受容体の反応性が減少していることがありドパミンは使用しない
・エフェドリン:交感神経終末のノルアドレナリン貯蔵量を減少させるので不可×
・モニタリング:経鼻胃管挿入、ECG、A-line、SPO2、体温、呼気ガスモニター(EtCO2,吸入麻酔薬濃度)、尿量、TOF Watch、BISモニター
◎ 術後鎮痛:呼吸抑制、筋硬直を避けるためオピオイドの使用は避ける
・Epi:0.2%ロピバカイン(アナペイン)、0.25%レボブピバカイン 4-6mL/h。局麻のみで鎮痛不良ならフェンタニル100㎍/日Epi、Epiへのモルヒネ投与は避ける
・肋骨弓下TAPブロック、腹直筋鞘ブロック
・フルルビプロフェン(ロピオン)、ジクロフェナク坐薬(ボルタレンSP)、アセトアミノフェン、デクスメデトミジン
◎ PONV対策:ドロペリドール、メトクロプラミド、プロクロルペラジンは錐体外路症状悪化の可能性があり不可 ×
スコポラミン 中枢性抗コリン作用増強で不可 ×  
ジフェンヒドラミン(H1ブロッカー)はMAO阻害薬投与Ptでは不可×  
デキサメタゾン○保険適応外 ドンペリドン(ナウゼリン坐薬)○
◎ 術後は抗パ薬をなるべく早く再開する(経管投与でも可)
◇古泉真理 ら:Parkinson病患者の周術期管理 Lisa Vol19, No4, 2012, P410-415 <7/13/2015>


90.08.02. Parkinson病Ptの麻酔
○ Parkinson病薬の種類と副作用
・レボドパ[ドパストン]:ドパミンの前駆体=休薬による症状増悪と悪性症候群
・レボドパ+DCIの合剤[ネオドパストン、メネシット、マドパー]=同上
・ドパミンアゴニスト[カバラール、パーロデル、ビ・シフロール=同上
・MAOB阻害薬[エフピー]=術前2週間休薬.オピオイド代謝阻害.ペチジン(オピスタン、デメロール)併用禁忌。フェンタニル、レミフェンタニル、ドロペリドール、エフェドリン併用注意。
・COMT阻害薬[コムタン]=特になし
・アマンタジン[シンメトレル]=特になし
・抗コリン薬[パーキン、アキネトン、アーテン]=麻薬関連薬物として抗コリン薬(アトロピン、スコポラミン)で作用増強
・ノルアドレナリン前駆薬[ドプス]=ハロタンなどハロゲン含有吸入麻酔薬は禁忌
・ゾニサミド[トレリーフ、エクセグラン]=休薬による症状増悪と悪性症候群、MAOB阻害作用あり
○ 手術に伴う絶飲食への対応  パーキンソン病治療ガイドライン2011
1) 手術当日、朝1回1時間程度でレボドパ・DCI配合薬100mgに付きL-ドーパ50~100mgをdiv。2日目以降も同様な対応。症状に応じて増量してよい
2) 長期に経口摂取が不能であれば腸瘻を設置する
・ドパミンアゴニストはレボドパ換算量(プロモクリプチン10mg=レボドパ・DCI配合剤100mg)
・休薬期間短縮のため手術は朝1番にするのが良い
・手術当日朝のPD薬は内服継続し、術中追加投与はレボドパ静注薬[ドパストン]をIV or経鼻胃管
・ドパミンアゴニスト貼付薬[ニューロプロパッチ]、皮下注射用ドパミンアゴニスト[アポカイン皮下注]
○PD薬中断の問題点―――PD薬中断が長引いた時
・PD症状の増悪:1)麻酔覚醒時に筋強直:レボドパ静注薬の緩徐静注。振戦:抗コリン薬[アキネトン]緩徐静注
・悪性症候群の発症
○麻酔管理上使用すべきでない薬物
・全身麻酔の合併症を避けるため可能なら区域麻酔での手術が望ましい
・ 起立性低血圧、仰臥位高血圧のPtでは術中の体位による血圧変動に注意
PDと注意すべき麻酔関連薬物
◌吸入麻酔薬
・デスフルラン:記載なし
・セボフルラン、イソフルラン:レボドパ、ドパミンアゴニスト使用Ptで低血圧
・ハロタン:不整脈の可能性
・亜酸化窒素:筋固縮の可能性
◌静脈麻酔薬
・プロポフォール:一時的に振戦を改善、制吐作用あり。ジスキネジア増強。定位脳手術ではPD薬中止するため不可
・チオペンタール:おそらく安全
・ミダゾラム:使用可能、せん妄に注意
・ハロペリドール:錐体外路症状増悪に注意、禁忌
・ドロペリドール:錐体外路症状を増悪し得る、MAOB阻害薬使用Ptで特に注意必要
・ケタミン:筋固縮の可能性
・デクスメデトミジン:記載なし
◌オピオイド
・フェンタニル、レミフェンタニル:筋固縮を増強するので注意。術後鎮痛には好ましくないMAOB阻害薬服用Ptは肝でのオピオイド代謝が阻害されオピオイド過量状態となる。
・モルヒネ:筋固縮の可能性、少量でジスキネジア減少、増量で無動性増悪
・ペチジン(メペリジン):MAOB阻害薬の併用禁忌、興奮、筋固縮、異常発汗、高熱のため禁忌:モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ブプレノルフィンはこの作用はない
◌筋弛緩薬
・スキサメトニウムSCC:高K血症の可能性
・非脱分極性筋弛緩薬:おそらく安全
◌拮抗薬
・スガマデクス:記載なし
・ネオスチグミン:脳血管関門BBBを通過しないため安全に使用できる
◌循環作動薬
・抗コリン薬[アトロピン、スコポラミン]:PD Ptでは嚥下障害、流涎があり、周術期の誤嚥のリスクが高い。抗コリン薬は唾液の粘稠性を増加させ挿管抜管時の誤嚥を助長する可能性あり。術後呼吸不全、抜管後喉頭痙攣。PD薬として抗コリン薬を使用している場合は特に注意が必要
・エフェドリン:MAOB阻害薬使用Ptでは交感神経刺激作用が増強される
・ドパミン:末梢に作用する薬なので使用に問題はないが、作用が減弱する可能性あり
・Caチャンネル阻害薬:頻度は少ないがparkinsonismusを悪化させる報告がある
◌制吐薬
・メトクロプラミド[プリンペラン]、プロクロルペラジン[ノバミン]は中枢性ドパミン拮抗作用のため避けるべき。
・ドンペリドンは末梢作用で使用可。   
◇村岡裕ら. 神経精神疾患と麻酔 Parkinson病 LiSA Vol22. No12, 2015,p2012-2016
○ [注釈] PD Ptに全身麻酔を行うとしたら(他の合併症は考慮せずに)
1)チオペンタールで導入、エスラックスで挿管し、Des+レミフェンタニルRFで維持。リバースはブリディオンを使う。ワゴスは使えるがアトロピンは使えないのでよろしくない。
2)propofolで導入、エスラックスで挿管、propofol+RFでTIVA.エスラックスを使えばジスキネジアもない。ブリディオンでリバース。
・術後鎮痛はアセトアミノフェン[アセリオ]+NSAIDs[ロピオン、ボルタレンsp]+blockまたは局麻
・術中の昇圧はフェニレフリンまたはノルアドレナリン   <2/8/2016>

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