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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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100.01.05. 術後のオピオイドによる呼吸抑制

目次
100.01.05. 術後のオピオイドによる呼吸抑制
・μオピオイド受容体mu opioid receptor(MOR)作動薬:強力な鎮痛作用と安全性
・MOR作動薬の周術期副作用:徐脈、嘔気嘔吐、呼吸抑制⇒opioid-induced respiratory depression (OIRD)が特に問題となる。
1) 周術期におけるOIRDの発生頻度
・術後痛対策としてオピオイド筋注投与、iv-PCA投与、硬膜外投与した時の呼吸抑制(=呼吸回数の減少)⇒投与経路にかかわらず約1%。
・レミフェンタニルRFは全身麻酔で気道確保して使われるので自発呼吸抑制を心配する必要はあまりない。RFは非特異的エステラーゼで分解、半減期4~8分、超短時間作用性、投与中止後に血中濃度が50%低下するのに必要な時間(context-sensitive half time; CSHT) 3~5分ほぼ一定、投与時間に依存してCSHTは延長しない。
・しかし重篤な呼吸抑制、呼吸停止が生じた医療事故の報告が複数ある
⇒手術終了後、輸液交換、薬物投与により静脈ラインに残存していたRFが意図せず急速投与され、呼吸抑制・呼吸停止をきたす。 最も注意が必要な副作用。
2) 呼吸中枢とOIRDの特徴
・呼吸リズムとパターンを形成する呼吸中枢は脳幹に広く分布する各種呼吸ニューロン群
呼吸中枢にはMORが広く発現、PreBӧtzinger complexを中心にOIRDの機序解明が進められている。
◍低用量のMOR作動薬:吸気時間は保たれるが呼気時間が延長―呼吸数減少、呼吸パターン不規則―低酸素・高二酸化炭素―呼吸ドライブがかかり1回換気量は維持されるか増加する。
・MOR作動薬を緩徐に投与orモルヒネのようにBBB通過が緩徐な場合―呼吸数減少―二酸化炭素上昇―呼吸ドライブがかかり、1回換気量は維持される。
◍高用量のMOR作動薬:吸気時間も延長、呼吸回数はさらに減少―低酸素・高二酸化炭素に対する反応性低下―1回換気量は代償性に維持されず減少。
・急速に投与された場合、RFのようにBBB通過が早い場合―呼吸ドライブがかかり―無呼吸。
3) OIRDへの対応
(1) ASAの解析closed claims analysis 20年間、9799件の申し立てのうちOIRDと考えられるもの;92件―死亡55%、永続的重症脳障害22%
・Pt背景;66%肥満,25%閉塞性睡眠時無呼吸OSASかそのハイリスク,平均年齢30歳台
・術後鎮痛:53%iv-PCA、39%硬膜外・脊髄くも膜下ブロック、46%でオピオイド持続投与。明らかなオピオイド過量16%、鎮静薬投与34%。
・呼吸抑制の発現時間:24時間以内が約90%、
最後のNs訪室から呼吸抑制までの時間;2時間以内39件、そのうち12件は15分以内。パルスオキシメーター装着33%。58%は呼吸モニターなし。
・OIRD発生前訪室時Pt評価;最多は眠気62%、NsのPt評価不適切31%⇒呼吸モニタリングとPtの症状評価、特に眠気と鎮静レベルの評価が重要。
(2) OIRDの危険因子と予防
・高年齢になるほど、呼吸抑制効果に対する感受性は高い
・併用薬物:抗不安薬、抗ヒスタミン薬、吸入麻酔薬
・OSASでは化学受容器からの信号減弱、オピオイドによる呼吸抑制が増強しやすい
・モルヒネ;肝で活性代謝物(M-6-Gなど)が生成され腎排出―腎機能障害でモルヒネ効果増強
(3) OIRDの早期発見のモニター
・SPO2や呼吸回数の測定は不十分:オピオイド過量投与の重症呼吸抑制では初期に呼吸回数の変化なく呼吸パターンが不規則化―チェーンストーク様呼吸―呼吸停止
・術後O2投与下のSPO2では呼吸抑制を過小評価する→高濃度O2投与はオピオイドによる呼吸抑制を増強する可能性がある
(4) ナロキソンによるOIRDの拮抗
・ナロキソンは日本で使用できる唯一のオピオイド受容体拮抗薬:μ、κ、δ全てに親和性あり、特にμに親和性強い。
・呼吸抑制に対する拮抗作用は静注後5分以内に発現、5~15分後にピーク、30分程度で著明に減弱する。
・成人呼吸抑制に対し 0.04~0.08mgIV (0.2mg/1mL/Ap⇒0.2~0.4mL)
・ナロキソンに比べモルヒネの作用時間が長いためナロキソンIV後30分でモルヒネの呼吸抑制が再出現
・遷延性呼吸抑制に対して2~10μg/kg/h持続静注 (100~500μg/50kg/h=0.1~0.5mg/50kg/h)
・ナロキソンは呼吸抑制だけでなく鎮痛効果も拮抗する⇒術後痛増強
・副作用:痙攣、肺水腫、不整脈、異常高血圧、心停止
・重篤な副作用は強い術後痛やストレスに対しopioidを使用したところ過量投与となりナロキソンを投与した症例で発言している―大量カテコラミン放出
⇒症状観察しながら少量ずつ投与(0.04~0.08mg/回)すべき
4) OIRDに対する治療薬の研究の進展
(1)呼吸促進薬
1. 5HT4a作動薬 ヒトでmosaprideのOIRD拮抗作用は認められていない
2. Ampakines CX717 アルフェンタニルによる鎮痛効果に影響しない
3. Ca依存性Kチャンネル阻害薬 頸動脈小体は末梢化学受容器―ここでの酸素センサー
(2) 呼吸抑制のないオピオイド
1. 迅速な作用の発現・消失、2. 確実な効果、3. 調節性が良い、4. 副作用が少ない、5. 確実な拮抗薬が存在する  ⇒RFは理想に近いが強い呼吸抑制作用が残っている。
◇川股知之:術後のオピオイドによる呼吸抑制 臨床麻酔 Vol39,No7, 2015, p967-973
<8/7/2015>
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