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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

10.09.05. 筋弛緩薬モニタリングの深い原理と広い使用法

目次
10.09.05. 筋弛緩薬モニタリングの深い原理と広い使用法
◇日本臨床麻酔学会第34回大会シンポジウム 日臨麻会誌Vol36,No1,2016,
10.09.05.01. 神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体
・神経筋接合部は多数のニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)が存在し、神経終末から放出されたアセチルコリン(Ach)が受容体に接合することになる
・脱分極された筋肉は収縮を起こす。Achが受容体に結合すると受容体は回転運動によりダイナミックにチャンネル開閉を調節する
・通常終板に存在するAchRは成熟型と呼ばれ、α2βεδの5つのサブユニットで構成される。またシナプス前にはα3β2で構成される神経型AchRが存在し、正のフィードバックを介してシナプス小胞の再動員に寄与している。
・一方胎生期の筋肉や除神経された筋肉上ではεサブユニットがγサブユニットに置換されたα2βγδのサブユニットで構成される未成熟型が発現し、特にスキサメトニウムへの反応性の違いから臨床上問題となることが多い。
・また近年では、従来中枢神経にしか存在しないと考えられていたα7サブユニットのみで構成されるα7AchRが特殊状態下の筋肉に存在する可能性が示唆されており、その生理的役割が注目されている。
・nAchRはリガンド開閉型イオンチャンネルで単一分子内に受容体とチャンネルの2つの機能を持ち合わせる
・未熟児や新生児を扱う際には神経筋接合部の形態的未成熟が示唆されるため筋弛緩薬投与時には成人と同様の反応性を有するとは限らない。
・古くなったAchRはエンドゾームで分解され、半日単位で終板の内側から外側に向かってnAchRが移動して、神経筋接合部が日々入れ替わっている。
・成人の筋肉においてもある種の病的状態、例えば不動化による委縮筋、熱傷後、除神経後などで未成熟型nAchRが発現する。筋弛緩薬への反応性の違いから臨床上注意を要する。
・未成熟型nAchRを多く発現していると考えられる病態ではnAchRの開口時間が延長して高濃度の高カリウム血症となりやすいのでSCCの使用を控えるべきである。
◇笹川智貴ら 神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体 日臨麻会誌Vol36, No1, 2016, p51~56. 日本臨床麻酔学会第34回大会シンポジウム      <5/30/2016>

10.09.05.02. 筋弛緩モニタリングの変遷と種類
・麻酔中の筋弛緩は神経筋遮断薬によるAchRの占拠によって生じるが、Achの約90%が占拠された状態で初めて臨床的な筋弛緩効果が認識される。筋肉によって神経筋遮断薬に対する感受性に差がある。
○筋弛緩後モニタリングの意義
1)神経筋遮断薬の効果発現(気管挿管の至適時期)を知る。
2)追加投与量及びタイミングを知る。
3)手術室退室時に残存筋弛緩がないことを確認する。
・残存筋弛緩がない⇒頭部拳上、舌挺出、握手などに関与する筋肉群の回復⇒4連刺激比TOFR>0.7⇒現在は術後肺合併症あるいは麻酔回復室における危機的呼吸器合併症を回避するためには嚥下、上気道開存を司る筋群の回復が必要⇒TOFR>0.9を回復の目標とすべき。
1) 主観的筋弛緩モニタ(神経刺激装置)
反復刺激による減衰減少fadeの有無を区別できるかどうか TOFR0.4~0.9ではfadeなしと判定される
2) 客観的筋弛緩モニタ
(1) 筋電図モニタelectromyography EMG:手術時に腕が体側に収納されていても測定可能
(2) 筋張力モニタ mechanomyography MMG:研究用のgold standard
(3) 圧電力モニタ kinemyographyあるいはpiezoelectric neuromuscular monitor PzEMG
(4) 加速度モニタ acceleromyography AMG:clinical gold standard 母指が自由に動く(等張性収縮)ことが前提
(5) Phonomyography PMG
○AMGの注意点
(1)用量反応曲線を求めるなどの薬理学的研究には向いていない
(2)薬力学に関する研究ではMMGとの互換性はない
(3)薬力学に関する研究のうち作用発現に関してはEMGと互換性があるがTOF比に関しては互換性がない。PTCに関しては不明
(4)臨床的評価、主観的モニタよりは残存筋弛緩の検出に優れている
・筋弛緩モニタの装着率が上昇するにつれて残存筋弛緩の発生頻度が低下する。
◇小竹文夫ら 筋弛緩モニタリングの変遷と種類 日臨麻会誌Vol36, No1, 2016, p57~61. 日本臨床麻酔学会第34回大会シンポジウム      <5/31/2016>

10.09.05.03. 筋弛緩モニタリングの機器、モニタリング部位、モニタリングの実際
・筋弛緩薬は神経筋接合部に作用する薬物だが、神経筋接合部に対する作用を直接的に測定する方法はない⇒測定筋の支配神経を刺激し、筋の動きを測定、効果を推測することが筋弛緩モニタリングである。
・モニタリング機器:TOF -Watchが臨床で多用されている
・モニタリング部位:尺骨神経刺激による母指内転筋反応を測定するのが一般的。その他、皺眉筋、短母趾屈筋、咬筋があげられる
・モニタリングの実際:刺激電極貼付時にアルコール綿で清拭脱脂し、黒電極は末梢、白電極は中枢側に貼付する。トランスデューサは動きに対して垂直になるように取り付け、皮膚温の低下にに注意。キャリブレーションを行う。
・麻酔の3要素にうち、鎮痛;客観的評価困難、鎮静;BISモニタ、エントロピー、筋弛緩;筋弛緩モニタ  筋弛緩薬に対する感受性は個体差が大きい。
1)母指内転筋―尺骨神経:
・筋弛緩の発現が呼吸筋(横隔膜など)より遅い=挿管のタイミングの評価には適さない。
・筋弛緩状態からの回復は呼吸筋や短母趾屈筋より遅い=十分な回復を評価するのに適している
2)皺眉筋―顔面神経:
・筋弛緩反応の過程が喉頭筋、横隔膜と類似してる=気管挿管のタイミングにも有効。皺眉筋反応が認められた時点で筋弛緩薬を追加投与すれば、呼吸筋、腹筋の十分な筋弛緩が得られる。
・他の筋に比べて筋弛緩状態からの回復が速い=十分な回復を評価するのに適さない
3)短母趾屈筋―後脛骨神経:
・筋弛緩作用の発現が母指内転筋より遅い=挿管のタイミングの評価に適さない
・回復は母指内転筋より速い=深い筋弛緩状態の維持に適していない、十分な回復を評価するのに適さない
4)咬筋―咬筋神経:
・咬筋は母指内転筋より作用発現時間が速く=気管挿管の指標になりうる。十分な回復を評価するのには適さない。Rocuronium0.6mg/kg投与後の作用発現時間は咬筋では73秒、母指内転筋では111秒であり、気管挿管の指標として適する可能性がある
○気管挿管時のモニタリングの注意点
1)喉頭鏡の挿入(開口の容易さ)のために咬筋の弛緩
2)声門の開大のための喉頭筋の弛緩
3)挿管時の反射の抑制のために横隔膜の弛緩   が必要
・Rocuroniumの現在の挿管量0.6mg/kgは母指内転筋を指標にしたもの。横隔膜のED95:0.5mg/kgで計算すると挿管量は1.0mg/kgになり、十分量のRocuronium投与下では母指の遮断は迅速で安全な挿管の指標となる
○維持時のモニタリング
・母指内転筋でのT2出現時(TOFカウント2はtwitch height 10%に相当)には横隔膜の弛緩はほとんど回復しており、体動が起きてもおかしくない。PTCを指標にすることを推奨する。PTC<5の状態では気管吸引しても咳反射を生じない深部遮断である。
・PTCは高齢者では再出現までの時間が延長し、ばらつきが大きい。6分以上間隔をあけることが必要。テタヌス刺激の後は一時的にTOFの回復を早めてしまう(post- titanic facilitation)
○回復時のモニタリング
・非脱分極性筋弛緩薬に解呪性の高い(回復が遅い)母指内転筋で判定するのが原則
○母指内転筋におけるTOF比を指標とした残存筋弛緩の臨床的影響に対する評価
・1回換気量はTOF比0.5いじょうでは正常だが、TOF比0.8では努力肺活量、嚥下機能、上気道の統合性は障害されている
・至適回復はTOF比1以上が必要である。
◇北島治 筋弛緩モニタリングの機器、モニタリング部位、モニタリングの実際 日臨麻会誌Vol36, No1, 2016, p63~71. 日本臨床麻酔学会第34回大会シンポジウム  
<5/31/2016>
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