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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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130.12. 局所麻酔薬中毒

目次
130.12. 局所麻酔薬中毒
○ 局麻薬中毒治療のチェックリスト
◇ American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine Checklist for Treatment of Local Anesthetic Systemic Toxicity
・局所麻酔薬の全身的中毒(LAST)の薬理学的治療は他の心停止シナリオとは異なる
□ 助けを求める
□ 初期の焦点
□気道確保:100%酸素で換気する
□痙攣抑制:ベンゾジアゼピンが好ましい;心血管系の不安定性のあるPtではプロポフォールは避ける
□人工心肺(の設備のある)が使用できる施設に連絡する
□ 不整脈cardiac arrythmiaの管理
  □BLS及びACLSが薬物の調整と効力の遷延のために必要になる
  □バソプレシン、カルシウムチャンネルblocker、βblocker局所麻酔薬は避ける
  □アドレナリンは<1μg/kgに減らす
□ 脂肪乳剤治療Lipid Emulsion(20%) Therapy (70kgのPtに対する注射投与の値)
  □Bolus1.5mL/kg(lean body mass) 1分以上かけてiv(~100mL)
  □持続注0.25mL/kg/min(~18mL/min:輸液ポンプ使用)⇒15mL/kg/hr
  □Bolus投与を2回目まで繰り返す 心血管虚脱(ショック)では持続的に
  □血圧が引き続き低い場合は注射量を2倍にする 0.5mL/kg/min
  □循環動態が安定して少なくとも10分は注射を続ける
  □推奨される上限量:およそ10mL/kg 最初の30分で
  □LAST後のイベントはwww.lipidresque.org. www.lipidregistry.orgに報告
       <6/22/2016>
◇ 局所麻酔薬中毒 Raffi Kapitanyan et al. April30, 2016                    http://emedicine.medscape.com/article/1844551/-overview
○ 臨床の要点
全般には安全であるが局麻薬は不適切に投与されたり、あるいは適切に投与されたにも拘らず予期せぬ反応を引き起こすことがある。局所および浸潤麻酔の中毒は局所的あるいは全身的でありうる。麻酔薬の全身的中毒はしばしば中枢神経系(CNS)や心血管系を巻き込む。
○ 兆候と症状
局麻薬中毒の兆候は典型的には注射後1~5分で現れるが、発現は30秒から60分までの間になるかもしれない。中毒兆候は次のように分類される。
・CNS中枢神経系 ・心血管系 ・アレルギー系 ・局所組織系
◌CNS兆候:古典的には全身的中毒性は次のようなCNS興奮の症状で始まる
  ・口周囲 および/あるいは 舌のしびれ ・金属様の味覚 ・頭部フラフラ感
  ・めまい ・視覚および聴覚障害(焦点が合わない、耳鳴り) ・失見当識
 より高用量では初期(当初の)CNS興奮状態はしばしば急激にCNS抑制となり次のような様相を呈する。
  ・筋攣縮 ・痙攣 ・意識消失 ・昏睡 ・呼吸抑制と停止 ・心血管抑制とショック
◌心血管系兆候
  ・胸痛 ・頭部フラフラ感 ・息切れ ・発汗 ・動悸 ・血圧低下 ・失神
◌血液学的兆候
  メトヘモグロビン血症はベンゾカインの使用でしばしば報告されている;しかしリドカインとプリロカインもまた関与している。低濃度(1~3%)ではメトヘモグロビン血症は無症状であるが、高濃度(10~40%)では次のような症状のいずれかを伴ってくるかもしれない。
  ・チアノーゼ ・呼吸困難 ・めまい、失神 ・皮膚の変色(灰色グレイ) 
・運動不耐性 ・脱力 。頻呼吸 ・疲労
◌アレルギー兆候
  ・発赤 ・蕁麻疹 ・アナフィラキシー(非常にまれ)
○ 診断
全般的に安全であるが局麻薬は不適切に投与されると有害となりうる。あるいは適切に使われても予期せぬ反応を起こすかもしれない。有害な効果は通常、薬物の高い血清濃度によって引き起こされる。それは次のような事柄の1つによって起きるかもしれない。
 ・不注意な血管内注入 ・過剰な注射量および回数 ・薬物クリアランスの遅れ
◌Pt側の因子も毒性に関与する。例えばリドカインは肝で代謝されるので肝機能障害が増えれば毒性のリスクも増える。リドカインはまた蛋白結合性なので低蛋白の状態はリスクを増やすかもしれない。アシドーシスも血清蛋白からのリドカインの分離に有効に働くのでリスクが増す。他の薬物(例えばシメチジン、βblockerなど)との相互作用もリドカインのレベルに影響する。
◌局所及び浸潤麻酔の毒性は限定的または全身的でありうる。麻酔薬の局所的有害効果は不可逆的になるかもしれない。麻酔や麻痺の遷延のような神経血管系の兆候も含んでいる。
◌麻酔薬の全身的毒性はCNSや心血管系を最もしばしば巻き込む。たとえばベンゾジアゼピンのような他の薬剤を同時に投与すると、CNS兆候の進展を隠すかもしれないが心血管系の兆候は隠さない。
◌比較的稀に(4%)局麻薬は免疫系に影響することがある。免疫グロブリンE(IgE)を介するアレルギー反応である。ほとんどの場合はアミノエステルを使用した場合に起こる。いくつかの麻酔薬、特にベンゾカインはメトヘモグロビン血症と呼ばれる血液学的効果を伴っている。
◌CNS毒性は2相性である。初期兆候はCNS興奮性で痙攣のような問題である。それに続く兆候はCNS抑制で痙攣の停止、意識消失が始まり呼吸抑制や停止に至る。
◌心血管系の作用は局麻薬の高い血清レベルで起こる。その効果はリエントリー不整脈を含むかもしれない。心室心拍の促進は心房性不整脈のPtで報告されている。
◌局麻薬中毒の治療には以下のものが含まれる。
・気道管理 ・痙攣抑制 ・心臓不整脈の管理 ・脂肪製剤治療
○ 病態生理pathophysiology
◌局麻薬の作用の発現、効力、作用時間は組織のpHに沿って、薬物のpKa、脂溶性、蛋白結合、血管拡張性で決定される。高濃度の投与により投与量が増加する伴って発症時間が短くなり、効力の強さと作用時間が増加する。同時に不利な/毒性反応の可能性も高まる。
◌薬物のpKa(解離指数)は作用の発現を決定する最初の因子である。低いpKaは組織の浸透性を増加させ、非イオン化した(荷電した)分子の脂溶性を増加させるので作用の発現時間を短くする。pHに近いpKaは浸透性を至適化する。さらに加えて細胞外腔の炎症はpHを低下させ作用発現を遅らせる。投薬の部位もまた因子の一つである:組織や神経鞘のサイズが増加した領域では発現が延びる。以下の因子が効力に影響する。
・好脂溶性の性質を増加させる高い分画係数は麻酔薬の脂質の神経膜内への通過を促進させ、効力を増強する。
・血管拡張は血管の吸収性を増加させ、それにより局所使用可能な薬物を減少させ効力を減ずる。
・エピネフリンあるいは重炭酸ナトリウムの添加はpHを増加し、それによりより脂溶性である非イオン化分子を増加させる。エピネフリンを含んでいるほとんどの局麻薬は防腐剤を含んでいる、これらの溶液のpHは低く調整され、エピネフリンと抗酸化剤の安定性を保っている。
◌次の因子は作用時間に影響する。
・局麻薬にエピネフリンの添加は血管収縮を生じ、全身的吸収を減らすので作用時間の延長をもたらす。
・蛋白結合性は主として作用時間を決定する:蛋白結合率が高いと作用時間が長くなる。
・pHの増加(重炭酸ナトリウムを使用して)は作用時間を延長する。

130.12. 病態生理[注釈] 局麻薬はNa+チャンネル遮断によってその薬理効果を発現する→これが経静脈的に吸収されてNa+チャンネル遮断効果が脳や心臓などの組織で発言すればその量に応じて活動電位抑制効果が発現する。
◌局麻薬のpKa(酸解離定数)が7.4に近いと→作用発現が速くなる
・リドカインpKa=7.7→効果発現が速い
・ブピバカイン、pKa=8.1、ロピバカインpKa=8.1→効果発現遅い、作用時間長い
◌脂溶性が高いほど→局麻薬の作用が強くなる
・テトラカインpKa8.2→脂溶性高く作用時間長い
・ロピバカインpKa8.1→脂溶性高く作用時間長い
◇ Angela M. Pennell MD:脊髄くも膜下麻酔の術前診察で「麻痺したりしませんか?」と尋ねられた。正しく答えられますか。 麻酔エラーブック 第1版 Catherine Marcucci et al 編 メディカル・サイエンス・インターナショナル 2010, p389-392.   
<7/6/2016>

○中毒のメカニズム
◌局麻薬によるCNS中毒性はまず、CNS興奮性としてあらわれ、その後CNS抑制が起きる。この2相性の効果は局麻薬がCNSの抑制的経路をブロックし(その結果刺激する)その後、ついには抑制的及び興奮的経路もブロックし(その結果全体的なCNS抑制となる)ことによって起きてくる。
◌心血管系の効果はこれらの薬物が心臓及び神経組織を通してimpulseの伝導に影響するfast-in、slow-outメカニズムを通してNaチャンネルをブロックして起きる。心臓ではこのことはVmax(すなわち心臓の活動電位のphase0の間の脱分極の率を下げリエントラント不整脈を起こす。加えて洞と房室結節を通す伝導が抑制される。。
○ 病因
・局麻薬はエステル型とアミド型の2群に分けられる
AgentDuration of ActionMaximum Dosage Guidelines
Esters  
ProcaineShort(15-60min)7mg/kg;<350-600
(Novocaine) epinephrine-;11mg/kg <800mg
ChlorprocaineShort(15-30min)epinephrine+;14mg/kg <1000mg
(Nesacaine)  
Amides
LidocaineMedium(30-60min)epinephrine-;4.5mg/kg <300mg
(Xylocaine)Long(120-360min)epinephrine+;7mg/kg 
MepivacaineMedium(45-90min)7mg/kg;<400
(Carbocaine)Long(120-360min)epinephrine+
BupivacaineLong(120-240min)epinephrine-;2.5mg/kg;<175mg
(Marcaine)Long(180-420min)epinephrine+;<225mg total dose
EtidocaineLong(120-180min)epinephrine-;0.4mg/kg<300mg
(Duranest)USA-epinephrine+;8mg/kg
PrirocaineMedium(30-90min)body weight>70kg;600mg
(Citanest)  
RopivacaineLong(120-360min)5mg;<200mg minor nerve block
(Naropin,Anapain)  


非歯科用量 少量ずつ投与する;予期する効果を得る最小の投与量及び濃度にせよ。急速注射を避けよ。

◌ブピバカインの心血管系毒性に伴う多くの不慮の死が起こったのでより毒性の少ない長時間作用性の局麻薬の研究が促進された。この研究によりレボブピバカインとロピバカインが生まれた。
◌ブピバカインは右旋性のR-(+)-エナンチオマーと左旋性のS-(-)-エナンチオマーの50:50ラセミック混合体である。臨床研究によりS-(-)-エナンチオマーであるレボブピバカインはCNS、心血管系への毒性がより少ないということが明らかになった。特に血管内投与した時に致死的となる量がR-(+)-エナンチオマーに比べて78%も多かった。1990年代のさらなる研究により1996年の純粋なS-(-)-エナンチオマーであるロピバカインの導入に至った。ロピバカインはブピバカインのように分離されたブロックを起こす能力があるが、より低濃度で知覚運動解離を起こす。この長時間作用型アミドは臨床使用される前に毒性研究された最初の局麻薬である。ロピバカインもCNS及び心血管系の毒性を持っているがその頻度は極めて低い。
◌局麻薬中毒は不注意な血管内注射や投与量の間違いにより起こる。血管内注入は麻酔薬が推奨範囲内で投与されても中毒は起こりうる。
◌有害な作用が起こった麻酔薬の最少投与量
薬物 最少投与量mg/kg
プロカイン 19.2
テトラカイン 2.5
クロロプロカイン 22.8
リドカイン 6.4
メピバカイン 9.8
ブピバカイン 1.6
エチドカイン 3.4
◌高投与量に加えて高注射スピードも局麻薬の有害作用のリスクを増加させる。
◌リスクを増加させるPt側に因子は次の通り
 ・腎・肝障害 ・代謝性・呼吸性アシドーシス
 ・以前からある心ブロックや心臓の状態 ・妊娠 ・極端な高齢 ・低酸素症
○ 疫学
◌局麻薬中毒の頻度は決定しづらい。これらの薬物は広範囲にいろんな状況で使用されており、ほとんどの中毒反応は報告されていないから。局麻薬による全身的中毒は末梢神経ブロック1000例対1例ほど起きているかもしれない。しかしこれらはほとんど小さな主観的兆候を含んでいるであろう。
◌2012年にUSAではアメリカ中毒管理センター(AAPCC)によればリドカインの単回曝露1238例が報告された。同時に他の局麻薬及び/あるいは表面麻酔薬の単回曝露3849例が起きていた。AAPCCによるリドカイン曝露のうち514例は6歳未満の子供で起きていた。
○ 予後
・酸素化、換気、心拍出が維持されていればPtは通常、余病なしに回復する。治療しなければ、局麻中毒は痙攣、呼吸抑制あるいは停止、低血圧、心血管性ショックあるいは心停止、そして死亡に至る。APCC国家中毒センター2013年次報告によれば、リドカイン曝露の内150例は軽症、67例は中等症、14例は重症で5例の死亡が報告されている。
○ Pt教育
・特定の麻酔薬に有害反応を持つPtには、将来その特定の麻酔薬を避けるように、またその反応を医療者全員に警告するようアドバイスする。もしもPtがあるclassの麻酔薬(エステルあるいはアミド)に有害反応を経験したらそのclassの薬物すべてに対してより高いリスクがある。しかしながらそのエピソードが痙攣を含む場合は将来、痙攣を起こすリスクが増えることはないといって安心させるべきである。   <6/27/2016>
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