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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

130.12.02. [経験] 上肢の局所静脈麻酔による局麻薬(キシロカイン)中毒(軽症)の経験

目次
130.12.02. [経験] 上肢の局所静脈麻酔による局麻薬(キシロカイン)中毒(軽症)の経験
○ 80歳代女性。身長140cm、体重42kg。合併症;2型糖尿病、内服薬でFBS141~158にコントロール、HbA1C;8.3. 肝機能正常、血清蛋白6.7、Alb3.4. 腎機能;Cre0.46. dementiaなし。ASA2.
◌肘頭骨折に対する観血的骨接合術の目的で局所静脈麻酔(整形外科、自家麻酔)が行われた。3年前に今回の今回の骨折の対側の肘頭骨折に対して腕神経叢ブロック0.375%アナペイン20ml局所静脈麻酔1%キシロカイン20mLで手術が行われたが特に問題はなかった。
◌今回の経過:入室時BP120/60、pulse75bpm。
・患側上腕部をターニケットで駆血後、1%キシロカイン20ml(iv)。
・約5分後に執刀。手術開始後約20分でBP160/80に上昇し、脈拍<60bpm、その後15分間にBP100/60に低下。
・発汗+、気分不良を訴えた。眠気、あくびが出現したが、痙攣はなかった。口唇周囲のしびれ、耳鳴り、金属様の味覚などの症状はなかった。直後に急に創痛が出現したので、麻酔科に診察依頼があった。
・診察時、創痛が極めて強く酸素でマスク換気し、徐脈に対しアトロピン0.5mg(iv)、局麻薬中毒を疑って20%脂肪乳剤であるイントラリポスを急速点滴静注した。閉創のためにセボフルレン1.5%を開始した。10分後に手術終了し、50%酸素でマスク換気しスムーズに覚醒した。発汗、生あくびは消失し気分不良はなくなっていた。
・手術終了時にターニケットの送気チューブが屈曲して効いていない状態になっているのが確認された。
・イントラリポスは100mL点滴終了で中止した。1PODまで経過観察し問題なかった。その後、リハビリを経て24PODに軽快退院となった。
○ 局所静脈麻酔開始後にターニケットの送気チューブが屈曲し、駆血ができなくなりキシロカインが体循環に流入したものと考えられる。  <6/30/2016>

局所静脈麻酔 Bier block
○ Bier block:1908年Bier(脊髄くも膜下麻酔の創始者)が報告した古いblock法。手技が簡単であるが合併症もある。知っていると便利。
・ターニケットを解放した時に局麻薬中毒が起こりうる
・ターニケット加圧による痛みのため麻酔時間に限界がある
・術後鎮痛効果が事実上ほとんどない
・外傷による血腫、開放性骨折あるいはそれに類する状態では禁忌
・ロピバカイン、ブピバカインを使用した場合、ターニケット加圧の失敗時には血中に放出され、心毒性を現す危険性が大きくなる。この心停止は蘇生困難である。
・近位カフを減圧し、遠位カフを加圧する時、両者のバルブや加圧ホースをダブルチェックし、正しく作動していることを確認すること
◇ Surja Sen, MD et al:昔ながらの「Bierブロック」を知っておいて損はない。ただしスピーディな術者には要注意 麻酔エラーブック 第1版 Catherine Marcucci et al 編 メディカル・サイエンス・インターナショナル 2010, p409-412..   <7/7/2016>

脳神経外科手術での局麻薬中毒
◌awake craniotomyなどの目的で神経ブロック(眼窩上神経ブロック、滑車上神経ブロック、頬骨側頭神経ブロック、耳介側頭神経ブロック、大後頭神経ブロック、小後頭神経,大耳介神経ブロックなど)が行われる。頭皮の神経ブロックは投与量が多くなりがちで局麻薬中毒のリスクが高くなる。
・0.3%ロピバカインを調整してPt体重(kg)×1mLを目安として初回投与量をきめ、4時間後に初回投与量の1/2を追加の目安とする(東京女子医大 鎌田)
・10万倍アドレナリン添加1%リドカイン 体重(kg)×0.7mLを極量の目安に、適宜浸潤麻酔を併用して行う
◇ 佐藤裕:その他の麻酔管理 B 神経麻酔のための区域麻酔 神経麻酔第1版 内野博之 編 克誠堂出版 2016, p315-319
○ [注釈] 脳外科麻酔では局麻薬中毒の機会は少ないと思っていたが、上記のようなこともありうる。その際は中毒症状が出てから麻酔科が呼ばれることになる <7/8/2016>
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