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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

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90.07.01. 喘息の麻酔管理

目次
90.07.01. 喘息の麻酔管理
○ [要旨] :喘息Ptの麻酔管理は気管支狭窄を避け気管支拡張を起こすことに焦点が集まっていた。しかしながら喘息の定義が過去10年の間に変化した。喘息は気道の中心部から末梢気道、肺の実質に及ぶ炎症の過程によって特徴づけられる臨床的症候群と定義されるようになった。この概念を心に入れて、喘息は頻度も重症度も世界的に増加している普通の疾患であり、麻酔薬と手技の合理的な選択は必須のものである。この様に我々は喘息のあるPtに対して薬理学的及び麻酔的アプローチの最新情報を追い求めている。実行可能ならば区域麻酔が好ましいが、それは気道刺激と術後合併症を減らすからである。全身麻酔が避けられないならばラリンゲルマスクが気管内挿管より安全である。リドカイン吸入は単独あるいはalbuterol(サルブタモール)と併用でヒスタミンで誘導される気管支収縮を最小化する。プロポフォールとケタミンは気管支収縮を抑制し、麻酔導入中の気管支収縮bronchospasmのリスクを減らす。プロポフォールは気道中枢側の拡張を起こし、エトミデートやチオペンタールよりも信頼できる。ハロタン、エンフルラン、イソフルランは気管支拡張の効能があり、喘息重積状態でも助けになりうる。セボフルランは喘息Ptでは議論のある結果を示した。ベクロニウム、ロクロニウム、シスアトラクリウム、パンクロニウムは気管支収縮を誘導しない。アトラクリウムとミバクリウムは投与量依存性にヒスタミンを遊離し、これらのPtには注意して投与されるべきである。麻酔薬の肺内での活動部位についてのさらなる知識は我々の喘息の病態生理学に対する理解と同調して、喘息を持つ人々に対する最良の麻酔的アプローチを確立するであろう。

○ 喘息は公衆衛生上の大きな問題であり、有病率も高く増加しつつあり、罹患率・死亡率の増加も伴っている。種々の研究によれば生涯の喘息の有病率は成人で11%で、小児ではそれより幾分高い。これらのデータは喘息のために起きる有害な出来事を生じるより広範な状況を麻酔学的実践において挑戦的なものにするのに貢献する。
・それ故、周術期の合併症のリスクの増加を避けるために喘息の病態生理学をよく理解し十分な術前評価をなし、Ptの状況を最適なものにし、最良の薬理学と技術的アプローチと協同することは緊急の問題である。
・喘息の病態生理学的証明は平滑筋の収縮による気道の口径の減少、血管のうっ滞、気管支壁の浮腫、頑固な分泌である。慢性の炎症過程は組織障害とそれに続く再編成である。「気道のリモデリング」という言葉はこれらの構造的変化の進展を言及するのに広く使われている。それは上皮の脱落、上皮下の線維化、上皮内の粘液細胞の数と容積の増加、気道平滑筋の過形成・肥大、気道壁の血管造成などである。細胞外基質、平滑筋、粘液線のこれらの変化は1秒量forced expiratory volume in 1s(FEV1)の減少と気管支の過反応性によって明示される喘息Ptの気道の機能に影響する力を有している。
・気管支痙攣bronchospasmと粘液栓は吸気、呼気の気流をともに閉塞する。呼気気流の抵抗は呼気終末に陽圧の肺胞圧になり、それはair-trappingを生じ、肺と胸郭の過膨張、呼吸仕事量の増加、呼吸筋の機能の変更を生じる。気流の閉塞は一様ではなく灌流するための換気のミスマッチが起こり、動脈血液ガスの変化が起きる。
・喘息の定義は過去10年のうちに変化した。喘息は中枢気道を越えて、末梢気道と肺実質へ広がる炎症過程によって特徴づけられる臨床症候群と定義されている。細気道small airwayが最近、気流閉塞と過敏反応性の部位として認識されている。
・これらの新しい病態生理学的所見を考慮して我々はこのレビューを喘息Ptの麻酔管理のために利用できるデータと基準を概略述べることを試みた。

[方法 methord] 1995―2005, PUBMED, airway obstruction, asthma, bronchial hyper-activity, anesthesia, anesthetics 222文献

[麻酔管理戦略 anaesthetic management strategy]
○[術前評価]
・麻酔科医の責任は術前にPtの肺機能の評価から始まる。Warnerらは喘息Ptの周術期の気管支痙攣bronchospasmと喉頭痙攣laryngospasmの頻度は驚くほど低いということを観察した。彼らは周術期bronchospasmと関連した3因子を確認した。:抗気管支痙攣薬の使用;最近の症状の再燃;最近喘息治療のために内科病院で受診したことである。それで彼らは次のような結論に到達した。
1)喘息はあるが症状のない人は麻酔による重大な有病のリスクは低い、
2)しかしながら喘息のある人は低いけれども重大な有病のリスクは増える、
3)喘息の前歴のない人にも気管支痙攣bronchospasmによる有害な結果は起きる。
・この観点から喘息のPtへのアプローチは反応性の気道疾患の経験の詳細な病歴を含めて次のことを調べるべきである
1)最近の上気道感染症、2)アレルギー、3)喘息に陥る可能性のある因子、4)薬物の使用、発作を引き起こすことができる薬物を含めて、同様に発作を予防するために使われる薬物、5)夜間あるいは早朝の呼吸困難。
さらにPtの気管支の反応性をよりよく理解するために、彼または彼女が寒冷気、ほこり、煙に耐えられるかどうか、以前に彼または彼女が全身麻酔下の気管挿管に耐えられたかどうか知ることは重要である。気管挿管を要するような喘息重積発作のエピソードの記録は、周術期の経過が困難になる前兆である。
・薬物は一般的に喘息の急性のエピソードの導入と関連している。薬物に誘導された気管支の縮小を認識するのは重要で、選択的β1-adrenergic antagonistsは喘息のある人の気道を一般的に閉塞するので避けられるべきである。
・気管支喘息、鼻ポリポージス、アスピリンあるいはアスピリン様の化合物に不耐性の3兆候はアスピリン誘導喘息(AIA)あるいはSamter’s syndromeと名付けられている。これらのPtでは非ステロイド性抗炎症薬NSAIDsと著しい交差感受性があり、重大なbronchospasmと有害な反応を引き起こすかもしれない。それ故、このようなPtはアレルギークリニックに行かせて鎮痛薬の交差反応性の可能性、麻酔薬に対する不耐性を評価してもらうことが重要である。
・肺の理学的検査では正常または喘鳴and/orその他の外膜音が明らかになるかもしれない。術前の喘鳴は周術期経過が困難になると予想される。実際もしも重大な喘鳴の既往と、喘鳴を診察時に聴取したら呼吸器内科に相談することが奨められる。
・喘息の重症な症例では動脈血液ガスや肺機能のような臨床検査を行って呼吸障害の程度を分析することが奨められる。術前のスパイロメトリー検査は気管支拡張治療に対する反応の回復程度と同様に気道閉塞の存在と重症度の評価に意味がある。FEV1の15%の増加は臨床的に重要である。
・喘息Ptでは胸部Xpは急性喘息発作時でも正常である。

○[喘息の術前管理 preoperative management of asthma]
・可逆性の気道閉塞及び気管支反応性を有するPtではβ2-adrenergic agonist及びコルチコステロイドを使った術前の治療が考慮されるべきである。β2-adrenergic agonistは気管内挿管に続いて起こる気管支収縮を減じることが示されている。この介入によってさえも著しい気管支収縮と喘鳴は挿管に続いて起こる。
・コルチコステロイドとβ2-sdrenergic agonistの複合治療は術前の肺機能を改善し、気管内挿管に続いて起こる喘鳴の頻度を減らす。周術期のコルチコステロイドによる創治癒と感染症に関する否定的な効果についての心配は、周術期のコルチコステロイドによる予防的治療を喘息Ptの研究では立証されていないが、コルチコステロイドで治療された喘息Ptは外科的処置を受けても合併症の頻度は少ないというエビデンスがある。この様にコルチコステロイド[methylprednisolone(40mg/day orally)]とサルブタモールによる術前の複合治療は可逆性の気道閉塞あるいは重症の気管支の過反応性の既往のあるPtで挿管で引き起こされる気管支収縮を最小にすることができる。
・Enrightによれば喘息の術前管理には次のような方法を含むべきである
1. bronchospasmは吸入β2-agonistで治療されるべきである
2. Ptが合併症のリスクに当面しているならば、術前にprednisone 40-60mg/dayあるいはhydrocortisone 100mg/8h毎 iv が奨められる。術前のFEV1<80%が予測される人はだれでもステロイドを受けるべきである
3. 感染症は抗生物質を使って根絶せらるべきである
4. 体液と電解質の不均衡imbalanceは補正されるべきである。高用量のβ2-agonistは低K血症、高血糖、低Mg血症を起こす。その様な不均衡に加えてβ2-agonistへの反応が減少し、不整脈を起こす傾向がある
5. mast cellの脱顆粒及びmediaterの放出を防止する予防的cromolyn治療は続けられるべきである
6. 胸部理学療法は痰のクリアランスと気管支のドレナージを改善する
7. 肺性心cor pulmonaleのようなその他の病態は治療せらるべきである
8. Ptはカルボキスヘモグロビンのレベルを減らすために喫煙をやめるべきである

○[麻酔法の選択 choise of anaesthetic technique]
・喘息に伴った気管支の過敏反応は周術期のbronchospasmの重要なリスク因子である。この潜在的に生命を脅かす麻酔実施中の状態は0.17%から4.2%までさまざまに変わる。全身麻酔の間に気管挿管の有無にかかわらず肺容量の減少と気道壁の液体層の増加に伴って、口蓋あるいは喉頭筋の張力の減少がある。この因子は不安定な気道の状況、気流閉塞及びかなり大きな気道抵抗を起こし易くする。
・気道に医療器具を使用することは副交感神経系を介して反射性の気管支収縮を起こす。加えて気道の機械的刺激は末梢のC-線維の求心路の端末を活性化することがエビデンスで示されている。これらの神経線維はsubstance Pとneurokinin Aを放出して、それらは血管透過性や気管支平滑筋収縮及び局所的血管拡張の増加を生ずる。麻酔科医の目標はbronchospasmを引き起こすリスクを最小にし、刺激のきっかけを避けることであるべきである。
・Groebenらは気管内挿管の効果を、局所麻酔下に気管内挿管を受けた症状のない軽症の喘息を持つ10名のボランティアでの無作為二重盲検試験で明らかにした。彼らは挿管の前後で肺機能検査を行い、操作後にFEV1の50%以上の減少を観察した。しかしながらβ2-adrenergic agonistと局所リドカインの予防的投与後にFEV1の減少は低かった(20%)。
・要約すれば喘息Ptでは気道に器具を挿入することは避けることが望ましく、同時に術後の合併症を減らすだけでなく、区域麻酔がいつでもこの目的のためには考慮されるべきである。
・妊娠は喘息の経過に悪影響を及ぼし、周術期のリスクを増やす。このような訳で区域麻酔は妊娠した喘息Pt及び出産のために選択すべき技術である。特にもしもプロスタグランディンとその誘導体が中絶や手術的分娩のために投与されているならば。
・区域麻酔が実行可能ではなく全身麻酔が求められる時、予防的な抗閉塞治療、揮発性麻酔薬、プロポフォール、オピオイド、適切な筋弛緩薬の選択は麻酔のリスクを最小化する。これに加えて、フェイスマスクとラリンゲルマスクエアウェイの使用は気道の被刺激性が少ないと報告されている。KimとBishopは52人の非喘息Ptで全身麻酔下に気管内チューブかラリンゲルマスクエアウェイを受けたPtの気道抵抗(respiratory system resistence:(Rsr))は気管内挿管を受けたPtよりLMAのPtの方が低いことを観察した。この結果はLMAの使用は気管内挿管よりもより確かな代替案であるという考えを支持している。

[前投薬premedication]
・Ptの十分な鎮静は周術期合併症を避けるためになされるべきである。この目的のためにbenzodiazepineベンゾジアゼピンは安全で気管支の状態を変えない。これに関連してKilらは経口のミダゾラム(0.5mg/kg)の投与は歯科治療を受ける軽症から中等症の喘息の小児で酸素飽和度、呼吸数、脈拍を変えないということに気付いた。それ故、ミダゾラム0.5mg/kgの投与は軽症から中等症の喘息のPtの鎮静のために安全で効果的な手段である。

[吸入麻酔薬 inhalational anaesthetics]
・吸入麻酔薬は気管支拡張作用を有し、気道反応性を減じ、ヒスタミン誘導性のbronchospasmを減らす。そのメカニズムはβ adrenergic receptor刺激が細胞内のcyclic AMPの増加へと導くことによると考えられている。これは直接的な気管支筋の弛緩効果を持っている。増加したcAMPは気管支myoplasm筋細胞原形質内で遊離のカルシウムを結合し、ネガティブフィードバックによって弛緩を生じる。それは抗原抗体を介して酵素生成、さらに白血球からのヒスタミン遊離をも妨害するかもしれない。
・このような理由でハロタン、イソフルランのような揮発性麻酔薬は閉塞性気道疾患のPtにおける全身麻酔の方法として永年推奨されてきたし、喘息重積状態の治療としても有用である。デスフルランは例外で分泌を増加し、咳、喉頭痙攣、気管支痙攣を生じうる。
・今までのところセボフルランを使った研究は論争を引き起こしそうな結果を示している。Rookらは喘息のないPtで気管挿管後にセボフルラン、イソフルラン、ハロタンの気管支拡張効果を比較した。彼らの研究ではハロタンは気道抵抗性Rrsの減弱でイソフルランより有意に有効とは言えなかった。それでもなおセボフルランはハロタンやイソフルランよりもRrsを減らした。
・Habreらは喘息のある小児とない小児でセボフルランで麻酔して肺機能を研究した。軽症から中等症の喘息のある小児でセボフルラン麻酔下の気管内挿管はRrsの増加を伴っており、喘息のない小児では見られなかったと結論付けた。にも拘らず明らかな臨床的に有害なイベントは観察されなかった。そしてScalfaroらの研究によればセボフルラン麻酔の前に吸入サルブタモール投与による治療はRrsの増加を予防できた。
・Correaらはセボフルランで麻酔された正常ラットで呼吸メカニズムと肺の組織学的分析を行った。セボフルラン麻酔は気道レベルには作用せず、肺の末梢で肺組織を固くし、器械的不均一性を増加させることを認めた。さらに加えてTakalaらはブタでセボフルラン麻酔後に気管支肺胞洗浄液の中に肺の炎症性メディエータが増加しているのを評価し、セボフルランは肺のロイコトルエンC4、NO3-、NO2-産生の増加及び炎症反応を示唆していることを報告した。

[静脈麻酔薬intravenous anaesthetics]
○Ketamineケタミンは静注全身麻酔薬で交感神経興奮性の気管支拡張作用を持ち麻酔と挿管が必要な喘息Ptで可逆性の喘鳴を予防する効果ゆえに魅力的な選択であると考えられている。ケタミンは気管支の筋組織を弛緩させ、ヒスタミンで誘導された気管支収縮を予防し、麻酔導入中のbronchospasmのリスクを減らす。この効果は気管支筋への直接作用と同時にカテコラミンの相乗作用が起源である。それでもケタミンは気管支の分泌を増やすのでアトロピンやglycopyrrolateのような抗コリン薬が共同して使われる。幻覚がケタミンの最も不快な副作用でベンゾジアゼピンでの鎮静を行って小さくすることができる。しかしその効力は対照試験control trialでは示されなかった。以前の研究でケタミンの中枢気道に対する効果が分析されていたが、Albes-Netoらはラットで前もって存在する気管支収縮なしでケタミンは気道レベルではなく肺末梢に作用し、機械的不均一性を増加させ、それは末梢気道の拡張と肺胞の虚脱から生じるのかもしれないということを観察した。
・BrownとWagnerはケタミンとプロポフォールの直接的及び反射誘導された気道収縮に対する局所的な気道に対する効果を調べた。彼らは非喘息動物モデルでケタミンとプロポフォールを直接気道投与 対 気管支動脈投与して、ケタミンとプロポフォールの気管支保護の主たる機序は神経誘導された気管支収縮の抑制であると結論付けた。

○プロポフォールpropofolは広く使われている短時間作動性静脈麻酔薬で、他の薬物より麻酔導入中の気管支収縮が少ないと考えられている。In vitroのデータではプロポフォールは気道平滑筋弛緩作用を持っている。Pizovらは無作為比較臨床試験で麻酔導入のために静注麻酔薬を受けた無症状の喘息Ptと非喘息Ptで喘鳴の頻度を評価した。彼らの観察では喘息Ptも非喘息Ptも両方とも導入にチオバルビツレートを受けたPtはプロポフォールを受けたPtより喘鳴の頻度が多かった。同時にEamesらは喫煙の頻度が多い非喘息Ptの集団においてチオペンタールとエトミデートとプロポフォールを比較して呼吸系の抵抗Rrsを評価した。それによるとプロポフォール麻酔で気管内挿管したPtはチオペンタールや比較的高用量のエトミデートを使ったPtよりもRrsは低かった。喘息がある小児と持たない小児でプロポフォール麻酔の効果を比較するためにHarbeらはプロポフォール、フェンタニルとアトラクリウムで麻酔導入して、プロポフォールの注入と50%N2OとO2で維持した。最終結果は呼吸メカニズムは小児で喘息があってもなくてもプロポフォール麻酔では麻酔メカニズムに変化はなかった。これに関連してPeratonerらは正常のラットで呼吸メカニズムに対するプロポフォールの効果を分析した。そしてこれらのパラメータと肺組織を関連付けてプロポフォールの作用部位を決定した。彼らの観察ではプロポフォールは気道レベルで作動し、中枢気道の拡張の結果として気道システムと肺のインピーダンスを減少させる。
・前述のことを根拠としてプロポフォールはタイミングの良い挿管を要する喘息のPtにとって安全であると考えられる。それにも拘らず、NishiyamaとHanaokaはプロポフォール導入に続いて気管支収縮を起こした2症例を報告した。両Ptはアレルギー問題を持っていて、プロポフォールは卵黄レシチンyolk lecithinと大豆オイルsoybean oilを含んでおり、それが問題を起こしたことは特に明確なことであると仮定された。それによって、プロポフォールはアレルギーのあるPtや薬剤性喘息のあるPtでは注意して使用されるべきである。

[オピオイド opioids]
・オピオイドはヒスタミン遊離するが、気管支反応性が増加したPtでも安全であると考えられている。フェンタニルとその相似体analogueはしばしば麻酔導入に使われているが胸部強直を引き起こし、bronchospasmと誤解される。ゆっくりivすればこの効果はほとんど見られない。しかしながらオピオイド投与後に得られる咳嗽反射の抑制と麻酔レベルの深化は喘息Ptには助けになる。

[筋弛緩薬 muscle relaxants]
・どのタイプのムスカリン受容体が刺激されるかによって、気管支の張力が増加するか減少するかが予測される。M2受容体に作用する筋弛緩薬(ガラミン、ピペクロニウム、ラパクロニウム)はM3受容体よりも気管支収縮を起こし、高める。一方,M3受容体に結合すると思われる筋弛緩薬はM2受容体以上あるいは少なくとも同様にはbronchospasmを起こさない。それらに含まれるベクロニウム、シスアトラクリウム、パンクロニウムは安全であると考えられる。
・ムスカリン受容体に対するこれらの直接効果に加えてアトラクリウム、ミバクリウムは投与量依存性にヒスタミンを遊離し、気管支収縮の引き金として考えられ、喘息Ptでは注して使用されるべきである。
・さらに手術の終わりに筋弛緩薬の拮抗reversalにネオスティグミン、フィゾスティグミンは除脈を生じ、分泌物を増加し、気管支の過剰反応性を示すので避けられるべきである。この目的のために筋弛緩薬の投与は手術の終わりには切れるように調節されるべきである。

[局所麻酔薬 local anaesthetics]
・アミド型の局所麻酔薬は自律神経線維の遠心系、求心系神経伝達及び咳嗽や気管支収縮反射のような自律神経反射の減弱あるいは遮断さえ行い、リドカインの中毒閾値の5mg/mL以下の血清濃度で抑制される。喘息のあるボランティアで静注リドカイン1~2mg/体重kgはヒスタミン誘導性の気管収縮を減弱し、気管内吸引や挿管などの気道刺激の反応を減弱させるために使用することができる。Groebenらは覚醒した人で、リドカイン静注と吸入albuterolサルブタモールは単独で投与された時にヒスタミン閾値を十分に増加させた。彼らは気管挿管によるbronchospasmの反射を予防するために術前の治療として吸入albuterolサルブタモールとリドカイン静注を推奨した。代わりにMaslowらは60人の喘息Ptで研究たところ、吸入albuterolサルブタモールは喘息Ptの気管挿管で気道反射を抑制したが、一方リドカインは抑制しなかった。
・リドカイン吸入はその全身投与よりも低い血清濃度で気道刺激反射を抑制する。気管支反応性は軽度の気道の炎症が先行していてもβ2-adrenergic agonistによる前治療で避けられるか、または局所麻酔のための4%溶液2mg/kg投与のリドカインで最小化される。これは最小の気道炎症を持った気管支の過反応性を減弱させるレジメである。加えてHuntらは軽症から中等症の喘息のある50人を対象者としてplaceboあるいはリドカイン4%を8週間投与のどちらかで治療した。その結果はリドカインのネブライザーは有効な治療であった。
・さらに局所麻酔薬は硬膜外から血中に吸収されて化学的刺激に対する気道の過敏性を減弱した。Shonoらは気管支喘息のある男性の症例で2%リドカインで持続硬膜外麻酔を行って、硬膜外注入後に喘鳴は徐々に消失し、持続硬膜外リドカイン注入155分後には完全に消失した症例を報告した。リドカイン持続注入中止後55分で喘鳴は再び出現した。これは喘息Ptにおいて区域麻酔単独であるいは全身麻酔の併用は有効であるという仮説を裏付けるものである。

○[術中気管支痙攣の治療 treatment of intraoperative bronchospasm]
・もしも術中に喘鳴が出現したらbronchospasm以外の喘鳴の原因を除外しなければならない。(気管内チューブの機械的閉塞、気管支内挿管、肺内誤嚥、肺塞栓、肺浮腫、緊張性気胸及び陰圧吸気negative pressure inspiration など)第1段階は静注あるいは吸入経路あるいは両方によって麻酔を深くする。低酸素血症を予防するために100%酸素を投与すべきである。
・定量噴霧式吸入器でβ2-agonistを気道から投与されるべきである。機械的換気中のエアロゾル化された薬物の配分は十分ではなく、噴霧された投与量の1%から3%程度の少なさであると見積もられ、実際Ptの肺には陽圧換気で届くという事実を考えることは重要である。肺に届くエアロゾルの量は呼吸時間を増やし、呼吸数を減らしネブライザー一杯の量を増やし、Y-ピースとカテーテルcatheter mountの間に、あるいはジェットネブライザーが使える時には呼吸器回路のY-ピースの吸入側の枝にベブライザーを位置させることによって改善される。
・エピネフリンの皮下注あるいは静注は重症のbronchospasmのPtを助けることができる。コルチコステロイドも利用されるがその活性の発現には投与後、4-8時間を要する。
・ロイコトルエン受容体拮抗薬と肥満細胞mast cell阻害薬は急性の気管支痙攣には役に立たない。アミノフィリンの静注は始めてよいが、頻脈、血圧上昇により、有用性が限られる。結果としてメチルキサンチンはもはや急性の再燃には勧められない。
・スムーズな(緩徐)覚醒は気管支攣縮のリスクを最小にする。導入時に気道確保困難がなければ、深麻酔下の抜管を試みることができる。もしも深麻酔下抜管が禁忌ならばPtは麻酔回復室post anesthesia care unitに挿管されたまま、気管内チューブに容易に耐えられるようにオピオイドを投与される。Ptが覚醒して適切な気道反射があるならば抜管する。抜管時にbronchospasmを予防するためにリドカイン静注が使われるかもしれない。

○[喘息重積状態時の吸入麻酔薬 inhalation anaesthesia in status asthmaticus]
・喘息重積状態は気管支閉塞の程度が発症時から重篤であるか、悪くなってから通常30~60分の治療で軽快しないものをそう呼ぶ。治りにくい(手におえない)喘息重積という用語は積極的薬物介入にも拘らずPtの悪化が24時間以上続く状態をいう。
・従来の気管支拡張薬が失敗した時には集中治療医はケタミンや吸入麻酔薬などの薬をしばしば使用する。この様な状態で深い鎮静は酸素化を改善するだけでなく中枢の代謝的必要条件を減らす。
・ハロタン、エンフルラン、イソフルラン、ジエチルエーテルなどの吸入麻酔薬による治療が治りにくい喘息重積発作の管理に成功裏に使われてきた。Iwakuらは喘息重積状態のPtをイソフルラン吸入で治療し、1回換気量 tidal volume、pH、PaCO2が麻酔後改善しこれらのPtをICUに入室させ人工換気を行ってイソフルランで治療しなかったPtよりもその時間が短かったことを確認した。
・QueとLusayaは帝王切開で出産中に喘息重積状態のPtにセボフルランを使って成功した。Schltzは26歳の女性で、郊外の救急病院の救急部で従来の治療で失敗した喘息重積状態のPtにセボフルランを使ったと報告している。セボフルランをおよそ150分投与し、Ptの状態を安定させ、3次施設へ固定翼の飛行機で輸送した。Mazzeoらは8歳の少年をケタミンとセボフルランで治療し、重篤な長時間の高炭酸血症hypercapneaにもかかわらず血行動態が不安定になることなく治療した。酸素化は続けられ合併症なく成功裏に回復した。

○[結論 conclusions]
・いくつかの麻酔薬が手に負えない喘息重積状態にさえ使用されている。それにも拘らず喘息の病態生理の理解が変化したという事実、我々がしばしば使っている麻酔薬が、喘息Ptでみられる慢性炎症を起こし過敏反応があり、リモデリングした肺の活性の部位や機序についての記載はない。
・これらのメカニズムの知識は麻酔管理における大いなる変革を刺激し、麻酔科医と集中治療医がこれらのPtに麻酔薬と技術を最適化させるであろう。そして過反応性を抑制し、気管支拡張を起こすだけでなく、基礎にある炎症過程とリモデリングを減少あるいは抑圧するのに効力がある新しい薬物の開発を研究者に働きかけるであろう。それ故、麻酔の合併症と不利益な事象は強く最小化され、Ptにも医師にも有益になるであろう。 
◇ S.M. Burbran et al. Anaesthetic management in asthma MINERVA ANESTESIOL 73, 2007, p357-65    <3/25/2017>
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