FC2ブログ

脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

50.07.02 麻酔中の人工呼吸、肺保護換気

50.07.02 麻酔中の人工呼吸、肺保護換気
○ [要旨]
◌背景:低い1回換気量low tidal volumetoと呼気終末陽圧positive end-expiratory pressure(PEEP)を使用した肺保護換気lung-protective ventirationは多くの状態の悪いPtのケアで最良の治療best practiceであると考えられている。しかし、大手術を受けている麻酔下のPtにおけるその役割は未知である。
◌方法:多施設、二重盲検、並行群間比較試験において無作為に400名の成人で、腹部の大手術後に中等度から高度の肺合併症リスクのあるPtを非肺保護換気群と肺保護換気群に割り当てた。一次アウトカムは術後7日以内に起こる大きな肺合併症と肺外の合併症とした。
◌結果:2つの介入グループは基礎的に同様の特性を持っていた。治療企図解析intention-to-treat analysis(ITT)で一次アウトカムは肺保護換気群に割り当てられた200名中21名(10.5%)で起こった。それに比べて、非肺保護換気群では200名中55名(27.5%)であった(相対リスク0.40、95%信頼区間[CI]0.24 to 0.68、P=0.001)。術後7日以上では肺保護換気群中10名(5.0%)が急性呼吸不全のために非侵襲的人工呼吸あるいは気管挿管を必要とした。それに対して非肺保護換気群では34名(17.0%)だった(相対リスク0.21, 95%CI[-0.14 to -0.72], P=0.006)
◌結論:非肺保護換気の治療と比べて肺保護換気戦略は腹部大手術を受ける中等度から高リスクPtで臨床的アウトカムを改善し、ヘルスケアの利用を減らした。
○世界中で毎年2億3000万人以上のPtが全身麻酔と人工呼吸を要する大手術を受けている。術後の肺合併症は有害な臨床的アウトカムとヘルスケア利用の影響を受けている。それ故、これらの合併症の予防は病院内治療の質の物指になっている。以前の大きなコホート研究で全身麻酔を受けたPtの20―30%は、術後肺合併症の中等度から高リスクであった。
・高い1回換気量high tidal volume(10―15mL/kg予測体重)での麻酔が低酸素血症hypoxemiaと無気肺aterectasisを予防するために伝統的に推奨されてきた。しかしながら経験的にあるいは観察研究から機械的換気―特に肺胞の過伸展を起こす高い1回換気量―は人工呼吸器関連肺障害(VILI)を起こし易く炎症性メディエータの全身的放出を通して肺外の臓器障害を起こし易い。
・肺保護換気lung-protective ventirationは低い1回換気量と呼気終末陽圧positive end expiratory ventiration(PEEP)、及びリクルートメント(間歇的肺過膨張)を含めて、急性呼吸促迫症候群ARDSのあるPtの死亡率を減じ、多くの重篤なPtの治療に最も有効な方法であると考えられている。この方法はより広範な人々にとって有益かもしれないと思われているが、一部の医師は外科的状況で肺保護換気の利点に疑問を持っている。特に、高い1回換気量でPEEPなしの麻酔はありふれた方法であり、通常の麻酔で肺保護換気を受けているのは20%以下である。
・Intraoperative Protective Ventiration(IMPROVE) trialを、低1回換気量、PEEP及びリクルートメント操作を組み合わせた予防的肺保護換気の多面的な戦略が、非肺保護換気の標準的治療と比較して腹部外科手術後のアウトカムを改善できるかどうか決定するために行った。
○[方法]試験のデザインと監督
・The IMPROVE試験は研究者主導investigator-initiated、多施設、二重盲検、階層化、対象群別parallel-group、臨床試験である。
・1/31/2011―8/10/2012 7大学教育病院
・40歳以上、2時間以上の待期的腹部大手術で腹腔鏡下あるいは非腹腔鏡下手術を受けた、術前の肺合併症のリスクインデックスが2以上、リスクインデックスは1~5に分かれ高リスククラスは術後肺合併症の高リスクに当たる。手術前2週間以内に人工呼吸を受けたPt、BMIが35以上、術前2週間以内に呼吸不全や敗血症の既往がある、胸腔内あるいは緊急手術を要したPt進行性の神経筋疾患のあるPtは不適格とした。
○[介入]
・volume controlled mechanical ventirationを行い、2つの階層に分けた。
・非肺保護換気群:1回換気量10―12mL/kg予測体重、PEEPなし、リクルートメント操作なし。
・肺保護換気群:1回換気量6―8mL/kg予測体重、PEEP 6―8cm、リクルートメント操作;30cmの持続陽圧気道。
・麻酔中各群とも気道内圧は30cm水柱以下とした。他の換気条件は2群とも同一。
・予測体重predicted body weight;PBWを使用。(♂⇒50+0.91(身長cm-152.4)、♀⇒45.5+0.91(身長cm-152.4)
・動脈血酸素飽和度低下arterial desaturation(末梢血酸素飽和度≦92%)のエピソードがあったら吸入酸素分画FiO2を一時的に100%まで増加するのは許可した。非肺保護換気群のPtで必要ならばPEEPの使用、リクルートメント操作あるいは両方とも許可した。
・術中及び術後期におけるPtケアの全ての観点に関する決定は、全身麻酔、輸液、予防的抗生物質投与、術後疼痛管理はそれぞれのセンターのスタッフの専門的知識と、日常臨床実践に基づいて主治医によって行われる。
○[結果outcome]
・一次アウトカムprimary outcomeは手術後7日以内に起きた大きなmajor肺合併症及び肺外合併症である。大きな肺合併症は、肺炎(標準的基準によって定義された)あるいは急性呼吸不全に対して侵襲的または非侵襲的換気が必要なPtである。重大な肺外合併症は敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック及び死亡である。
・二次アウトカムは、30日以内の観察気管内の、いかなる原因にもよる肺合併症でスケール0(肺合併症なし)から4(最も重症な合併症)に階層化されたもの;手術中の換気に関連した有害事象;術後のガス交換、予測されないICU入院;肺外合併症;ICU及び病院入院期間;術後30日以内に起こったいかなる原因にもよる死亡。
・肺合併症は分けて分析された;特に急性呼吸不全のための侵襲的、非侵襲的換気、術後無気肺の進展、肺炎、急性肺損傷acute lung injury、ARDS,これは標準的基準で定義された。
・肺外合併症は全身炎症反応systemic inflammatory response syndrome(SIRS);敗血症;重症敗血症及び敗血症ショック、及び外科的合併症;腹腔内膿瘍、縫合不全、予期せざる再手術。
○[結果results]
◌[研究対象]2011年1月~2012年8月、腹部手術を待期している計1803名から試験適格性を評価した400名のPtが治療企図解析(ITT解析)に含まれ、術後30日間追跡した。非肺保護換気群の1名が肺保護換気を受けたがそのまま非肺保護群に含めた。基本的両群の特性に差はなかった。開腹手術は主に癌切除で、非肺保護換気群で156名(78.0%)、肺保護換気群で159名(79.5%)だった。P=0.86.  
術中操作非肺保護群 200肺保護群 200P<0.001
1回換気量mean±SD11.1±1.1mL/kg6.4±0.8mL/kg
PEEP06cm(6―8)
Recruitment操作09 (6―12)
外科手術の型、時間差なし
Epidural analgesia差なし
出血量差なし
輸液量差なし
昇圧薬投与差なし
術中PaO2↓rescue5*0 *PEEP1,RM2,PEEP+RM2


◌[アウトカム]
Primary outcome
非肺保護群 肺保護群
重大肺合併症POD≦7 55 (27.5%) 21 (10.5%) adj RR0.40[0.24-0.18],P<0.01
Secondary outcome
肺合併症POD≦7 72 (36.0%) 35 (17.5%) adj RR0.49[0.32-0.74],P<0.001
major肺(grade≧3)       >
major肺,肺外POD≦30       >
抜管後低酸素POD1 差なし
術後換気補助を要す急性呼吸不全で補助換気
侵襲的,非侵襲的≦POD7 34 (17.0%) 10 (5%) RR0.29[0.14-0.61],P=0.001
侵襲的,非侵襲的≦POD13 (18.5%) (6.5%) RR0.36[0.19-0.70]P=0.003
侵襲的,非侵襲的≦POD30       > P<0.001
ICU入院≦POD30 (12.5%)   ≒ (11.0%) RR0.88[0.99-1.59],P=0.67
死亡率 POD30 (3.5%)   ≒ (3.0%) RR1.13[0.36-3.61],P=0.83
median hospital stay  >

○術後合併症の率が予想より多かったが、これは合併症のリスクが低いPtを除外し、合併症の率が増加する腹部大手術のPtを対象にしたからである。
・400名のうち19名が術後肺炎、47名が侵襲的挿管あるいは非侵襲的呼吸管理を要する呼吸不全になった。これは先行研究と差がない。我々の肺保護換気戦略は術後7日以内の換気補助を要したPt数の69%減らした。
○ この研究では、術中の肺保護換気の多面的戦略は、非肺保護換気に比べて術後合併症が少なく、ヘルスケアの使用を減らした。
◇ Emmanuel Futier, et al A Trial of Intraoperative Low-Tidal-Volume Ventiration in Abdominal Surgery N.Engl J Med 2013; 369: 428-37    <9/2/2017>
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。