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脳外科麻酔の現場

脳外科麻酔についての備忘録 An actual spot of the neurosurgical anesthesia.

10.03.04.02. 手術室外でのカプノメータ(1)

目次
10.03.04.02. 手術室外でのカプノメータ(1)
○ カプノグラフィ、特に手術室外での使用についての総説
◇Brabani Shankar Kodari, MD : Clinical Concepts And Commentary: Capnography Outside the Operating Room Brigham and Womens’ Hospital, Harvard Medical School, Boston Mass USA
○ 歴史的に麻酔科医は医療従事者のうちで安全のための道具と基準を実行することの先駆者であるように思われる。USAでは1985年以来、麻酔科医の不適切医療(医療事故)の保険料が、劇的に減少している。この間に他の内科系、外科系の専門医ではこのような減少は見られていない。
・アメリカ麻酔学会ASA、麻酔患者安全基金APSE、英国及びアイルランド麻酔医連盟AAGBI、オランダ麻酔科医学会の先見の明に感謝し、カプノグラフィがPtの安全を高めるために麻酔中のモニタリングの基準として取り入れられ信頼されている。最近は多くの発展途上国の麻酔科医もこれらの推薦に従っている。(インドではカプノグラフィは腹腔鏡手術の弁済のために強制的なものになっている)過去25年以上前からカプノグラフィは麻酔ケアの欠くことのできない一部分になっているが、その価値は、そのような状態に限られ、この制限を越えて正しく評価されてはいない。我々の臨床の中では気管挿管され、人工呼吸されているPtを観察するためには特殊なものではない。はじめは手術室でカプノグラフィはモニタされているがICUへカプノグラフィなしで移送されている。気管挿管を確認するためにも、連続的に換気をモニタするためにも、多くのICUはカプノグラフィを持っていない。麻酔科医として我々はカプノグラフィを手術室で鎮静モニタとして使用している。なぜなら我々は意識のある状態と無意識の状態の線は非常に薄いものであると評価しているからであり、Ptは一つの状態から他の状態に移ることができる。しかし多くの施設ではカプノグラフィは手術室の外で、特に非麻酔科医によって実行される処置の鎮静の間に換気のモニタとして使われてはいない。明らかな理由の一つはASAとAAGBIが手術室の中で行っているように、手術室以外での処置の安全性をカバーする単一の協会がないことである。にも拘らず過去2年間に手術室の外におけるカプノグラフィの価値の理解と認識が湧き上がってきた。この「臨床的概念と論評」はカプノグラフィの生理学と臨床的解釈をまとめて、手術室外でのカプノグラフィの最近の状態を更新し、公衆とメディアの気付きを含めて可能な未来の方向性を示唆することである。
○[測定と生理学]
・赤外線技術は二酸化炭素(CO2)測定とモニタリングの方法としては最も一般的で費用的にも素晴らしいものである。1回換気量が少なく、呼吸回数が速い未熟児においてさえ上質のカプノグラフィの波形を生み出すように反応時間を減らし、赤外線技術の正確さを増す努力がなされてきた。
・CO2の数値は通常分圧(PCO2)として表示される。CO2測定装置の部位によって2つのセンサーの型がある。メインストリーム方式とサイドストリーム方式である。メインストリーム法ではセンサーを収納するアダプタは気管チューブと呼吸回路の間に挿入され、CO2の測定は気道を交差して行われる。サイドストリーム法では呼吸ガスはアダプタを介して6本足のサンプリングチューブで赤外線センサーを収納するモニタへと吸引される。赤外線測定装置へのガスの移送によりサイドストリーム法ではカプノグラムの測定と表示は1―4秒遅れる結果となる。
・型通りの成人ではカプノグラムは多かれ少なかれ、全て健康な個人では全く同一の形となる。これからのいかなる変位も、生理的あるいは病理的原因の分析が必要になる。CO2の波形は時間に対して描かれる時間カプノグラム(Fig.1A)かまたは呼気量に対して描かれる容量カプノグラム(Fig.1B)がある。時間カプノグラムは臨床実践的に一般的に使われている。時間カプノグラムは二つの重要な分画を持つ;吸気(phase0)及び呼気である。呼気相はさらに3つの相(phase Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)及び時にpaseⅣ(Fig.1C)に分けられ、肺及び気道からのCO2の展開の生理学に基づいている。phaseⅠはいかなる呼出されたCO2も含まない(死腔ガス、ゼロPCO2)。PhaseⅡではPCO2は急速にCO2を含んだ肺胞ガスとして上昇し、死腔のゼロCO2と入れ替わる。PhaseⅢは肺胞からのCO2の進展を表わす肺胞性のプラトーである。もしも全ての肺胞が同じPCO2ならば肺胞プラトーは完全に平坦になる。実際には肺内にかなり空間的、時間的なミスマッチがあり、結果としてV/Q ratio換気血流比、及びこのような変わりやすいPCO2となる。通常、低いV/Q ratioと長い時間定数(比較的多くのCO2を含んでいる)を伴った肺胞はphaseⅢの後半部分に寄与する。このことは結果として肺胞の部分圧“プラトー”の軽度の上向きスロープとなる。それ故スロープは間接的に肺のV/Q状態を表わす。だから肺胞のプラトーの高さとスロープは換気、灌流、更に重要なV/Q関係の情報を供給する。気道の内径変化の結果としてV/Q ratioに相当な変動がある時にphaseⅢのスロープは誇張されまた遷延したphaseⅡ(Fig.2A)が伴ってくる。この様な環境ではphaseⅡとphaseⅢの角度(α angle)、これは一般に100°であるが、が増加する。気管支拡張薬の治療効果はphaseⅡ,phaseⅢ,α角の変化で判定される。肺胞プラトーの高さは肺胞換気に対する心拍出比と関連している。一定の換気のもとで肺胞プラトーの高さは心拍出量の急な変化で増えたり減ったりする。呼気終末の最大PCO2は数値として表わされ、end-tidal PCO2(PETCO2)呼気終末二酸化炭素分圧と呼ばれる。その値は35―40mmHgの間で変化する。PhaseⅢの終末で呼気の間にCO2のないガスが吸入され、PCO2は急激に減少しゼロになる。PhaseⅢと吸気の下向きの動きの間の角度は一般に90°(β角)(Fig.1A)。しかしながらこの角度は再呼吸があると増える(Fig.2B,C)。時にphaseⅢの終末に先端のblipがあるかもしれない(Fig.1C)。これは一般に小児や妊婦や肥満Ptのカプノグラムで見られる(phaseⅣ)。かなり一定のCO2濃度を含む肺胞ガス区分を急速に初期に空にすることはCO2のトレースのうちのphaseⅢの初期のほぼ水平な部分についての責任がある。しかしながら呼気の流れは呼気の終末に向かって減少するので呼気のCO2濃度は大きく増え、このように先端の急な上昇あるいは上向きな上昇となる。これがCO2の肺胞内への持続的放出のために呼気の後半に肺胞が空になるのが遅れて高いCO2濃度になる訳である。正常では高いCO2を伴った肺胞ガスは気道に残り、口の近くのCO2センサーでは分析されない。しかしながら大きな1回換気量と低頻度の換気をするとガスがCO2センサーまで届き高いCO2濃度を示す。妊娠した対象者は通常機能的残気量が減少し、低い胸郭コンプライアンスでCO2産生が増加しているが、全身麻酔中や大きな1回換気量で間歇的陽圧呼吸IPPVを行った時にphaseⅣを示し易い。
・PCO2は容量カプノグラムvolume capnogramでは呼出された容量に対してプロットされるので波形は1回換気量のいろいろなコンポーネントに関連されうる(Fig.1B)。しかしながらこのカーブの中には吸気のコンポーネントがない。時間カプノグラムと容量カプノグラムの両方でPETCO2に対するPaCO2の差は生理的死腔の代用として使われる(Fig.1B)。正常のPaCO2―PETCO2勾配の差は約5mmHgである。これはCO2を含む肺胞ガスとCO2を含まない死腔ガスの混合のためである。上記の生理学的理解はカプノグラフィの解釈にとって非常に重要である。


Fig.1A:Time capnogramはsegment(区分),phase(位相),angke(角度)を示している。Inspiratory segment(吸気区分)はphase0、expiratory segment(呼気区分)は3つの相Ⅰ,Ⅱ,Ⅲに分けられる。呼気の終末のCO2の最大値はPETCO2と任命される。肺胞死腔のためにPaCO2より約5mmHg低い。PhaseⅡとphaseⅢの角度はαangleで、phaseⅢとinspiratory downstroke吸気下降流の間の角度はβangle。
Fig.1B:volume capnogram(PaCO2対呼気容量):容量カプノグラムはtidal volume1回換気量の細分を示す。CO2のarea under curveは有効肺胞換気量。Area above CO2 curve及び動脈血PaCO2線以下は生理的死腔。2つの三角形のpとqが含まれるphaseⅡに垂直に線が引かれる。これは生理的死腔を解剖学的及び肺胞死腔に分ける。
Fig.1C:全身麻酔下の帝王切開中に記録されたtime capnogramでphaseⅣ(phaseⅣの詳細は参考文献4を参照)    PETCO2=end-tidal PCO2.

○[カプノグラフィの臨床的解釈]
・臨床的情報はカプノグラフィの3つの情報源から得られる:PETCO2の数値、カプノグラムの波形、PETCO2とPaCO2の差である。
・数値は鑑別診断の道具として使われる(table.1)。一方、カプノグラムの波形はより特殊な診断の手掛かりを提供する(Fig.2A-O)。カプノグラフィをそれ自身で診断的道具として使うのは困難である。しかしながら、もしもPETCO2の数値の変化やCO2の波形の変化は心拍数や血圧、呼吸流量、肺吸入圧、分時換気量などの付随するデータと共に使われたならカプノグラフィの診断的正確さが高まるであろう。Tauzらは55歳の男性の麻酔中にPETCO2値が徐々に増加した症例の報告を行った。これは後から心拍数の増加と体温の上昇を伴っていた。Ptの循環動態、呼吸変化、麻酔器の全体的かつ系統的チェックでは麻酔システムの欠陥や気道閉塞は明らかにされなかった。18L/分の分時換気量にも拘らずPETCO2値は65mmHgまで上昇し続けた。悪性高熱症malignant hyperthermiaの診断がなされた。MHの治療が開始され、高二酸化炭素血症、高熱は急速に改善された。
・PaCO2―PETCO2勾配は生理的死腔の代用品であるが、V/Q関係の評価に有用である。変化する勾配は不安定な肺内のコンプライアンスまたは抵抗のダイナミックな変化の結果として循環血行動態あるいは変化する肺胞換気量を示している。もしも勾配が臨床的管理の結果、安定化するならば、肺胞換気と灌流の安定性が達成されたと推量することができる。このカプノグラフィの価値のある効用はICUの環境では活用されていない。

Fig.2
A. 引き延ばされたphaseⅡ、拡大したαangle。急峻なphaseⅢは気管支攣縮bronchospasmか気道閉塞を示唆する。
B. 呼気バルブ不調の結果、基線base lineの上昇、alveolar plateauと吸気のdownstrokeの角度が90°から増加。これは吸気中の呼気枝expilatory limbから呼出されたガスの再呼吸のため。
C. 吸気バルブ不調の結果、吸気中に吸気枝から呼出されたガスの再呼吸の結果。(文献5に詳細)
D. PhaseⅡは正常だがphaseⅢのスロープが増加したカプノグラム。このカプノグラムは全身麻酔下の妊婦で観察された。(通常の生理学的変形、文献9)
E. Curare cleft筋弛緩薬の裂け目:Ptは部分的筋麻痺の間に呼吸を試みている。胸部及び腹部の外科的動きもまたcurare cleftと同じようになる。
F. CO2再呼吸の結果基線baselineが上昇する。
G. 食道挿管の結果、残余のCO2が胃から洗い流され、続いてCO2はゼロになるだろう。
H. 自発呼吸のCO2波形、phaseⅢはよく描出されていない。
I. 片側肺移植Ptの二重カプノグラム。PhaseⅢの第1のピークは移植された正常肺からのもの。一方、第2のピークは元の病気の肺からのもの。二重カプノグラムの変形(Staple sign尖塔兆候―破線)はモニタのサイドストリーム・センサーポートにリークがある時に見られる。これは呼出されたPCO2が空気で希釈されるため。
J. 悪性高熱症。ここではCO2は徐々にゼロ基線から増加してくる。CO2産生増加とソーダライムによるCO2吸収を示唆している。
K. 古典的さざ波効果で呼気の休止中の心原性の振り子運動を示している。これらは人工呼吸の呼吸頻度が低い時に、呼吸停止の間に心拍の動きによってセンサー部位で、呼気ガスが行ったり来たり運動の結果起こる。さざ波効果様の波形は呼気停止中に源からのフレッシュガスの前方へのガスが呼気ガスと混ざる時にも起きる。
L. 基線とend-tidal PCO2(PETCO2)の突然の上昇は分泌物か蒸気によるセンサーの汚染による。基線とPETCO2の徐々の上昇はソーダライムが消耗した時に起きる。
M. 自発呼吸Ptの真ん中に間歇的人工換気intermittent mechanical ventiration(IMV)呼吸。人工呼吸と比べた自発呼吸の高さの比較はweaning process離脱中の自発呼吸の評価に有用である。
N. Cardiopulmonary resuscitation, CPR心肺蘇生;各圧迫中の上向きのカプノグラムは心臓圧迫が有効で肺血流量を発生していることを示唆している。
O. 吸気中の再呼吸を示しているカプノグラム。これはMapleson D or Bain circuitの様な再呼吸サーキットでは正常である。

Table 1.
異常PETCO2の原因 PETCO2の増加PETCO2の減少
Metabolic麻酔からの回復(シバリング)
悪性高熱症
Neuroleptic malignant syndrome
Typhoid storm
重症敗血症
Hypothermia低体温
代謝性アシドーシス


Circulatoryターニケット解除

CO2通気による腹腔鏡
アシドーシスの治療

麻酔導入
肺塞栓
高度のhypovolemia
心原性ショック
出血性ショック
Intracardiac shunt
Respiratory低換気Hypoventiration
COPD慢性閉塞性肺疾患
喘息
肺水腫
肺内シャント
過換気
TrachealCO2吸収absorberの消耗
モニタの汚染
Disconnection接続不良
チューブの閉塞

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90.09. 関節リウマチPtの麻酔

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90.09. 関節リウマチPtの麻酔 30.06.
・10年間1177名のRA Ptに全身麻酔、ほとんどが関節全置換術 28~95歳(平均63歳)、女性が90%、体重29~77kg(46kg)、高齢で痩せた虚弱な女性
○RA Pt麻酔の問題点
・RAの障害が心、肺、腎、血管など主要臓器におよびこれら臓器・組織の機能低下する。*・心:30%に心膜炎有症状は10%以下、心嚢水貯留。狭心症や脳梗塞の既往
・肺:50%のPtで種々関節病変により拘束性障害、ADL制限で自覚症状なし。脊椎病変による亀背も拘束性障害。肺線維症、胸水貯留。間質性肺炎
・腎:稀。薬剤性腎症、腎アミロイド―ジス(金製剤)、合併するSjogren症候群による間質性腎症。
・眼病変:RA Ptの20%に合併するSjogren症候群による角結膜炎。眼軟膏、アイパッチ。
・虚血性心疾患、癌、炎症性疾患の発症率が増加する:RAの病理に直接起因する場合もあり、長期に用いられる数多くの抗RA薬およびステロイド治療の影響もある
・筋委縮、脆い血管、貧血などはRA Ptにほとんど必発。強い痛みと運動障害を伴うために全体的に虚弱化する
*・消化管病変:NSAIDs潰瘍の有無
・ステロイドによる糖尿病の有無
・経鼻挿管になる場合の鼻腔の状態、易出血性の有無
○気道確保困難 difficult airway
Compromized cardiac function:myocarditis, vascular disease, pericarditis,
                   :coronary disease
     pulmonary :rheumatoid lung, diffuse infiltrate, drug effect
     renal    : amyloidosis
Ischemic heart disease   :coronary disease
Vulnerable peripheral vessels傷つきやすい末梢血管
Retrognathia下顎後退    :difficult airway
○術前チェックリストのうちRAに特殊な項目
 頸、下顎の可動性検査
 喉頭鏡による喉頭、声帯の検査=輪状披裂cricoarytenoid関節の拘縮→RA Ptの約1/5にみられ時に呼吸困難をきたす
・手術の必要なPtはほとんど長期にステロイドを服用している→周術期ステロイドカバー
 待機手術Ptは通常5~10mgのプレドニゾロンを服用している
 →手術当日はプレドニゾロン中止、ハイドロコーチゾン100mg 麻酔開始1時間前
  Ptの全身状態が悪く循環状態不安定→ハイドロコーチゾン100mg追加iv 4~5時間前
 手術翌日には元のステロイド療法に戻す
*通常、副腎はコルチゾール20mg/day程度を生理的に分泌。ストレス時には200~300mgのコルチゾールを分泌する。長期ステロイド服用Ptは副腎機能低下しておりストレス時の補充を自らできない。PSL15mg/dayはコルチゾール60mg/dayに相当。急性副腎不全のリスクカバーのためにステロイドカバー。
◌小手術:通常内服量のみ。カバーなし。
◌中手術:通常内服。術前にハイドロコルチゾン50mg、8h毎に50mg。翌日から通常通り
◌大手術:通常内服。術前にハイドロコルチゾン100mg、8h毎に50mg。POD1;8h毎に25mg、POD2;12h毎に25mg、pod3;25mg1回、POD4~通常通り。
○使用麻酔薬:ハロタン、セボフルラン、イソフルラン±fentanyl
 RA Ptではすべての鎮静薬、麻酔薬に感受性が高い点に注意が必要。
 術後に遷延する抑制作用にも注意が必要
○手術死亡率:術後1か月以内は0. 2ヶ月以内は2(術前からハローベスト装着Pt)
 術後ハローベスト装着Ptは術後2年以内に25名/75名死亡
○RA Ptの気道確保困難
1)頸椎関節のリウマチ性の破壊に伴う拘縮・不安定性:頸椎の癒合による可動域制限
2)環椎関節の亜脱臼:不安定性。初期は運動制限、後頭部痛。次第に四肢のしびれ。延髄圧迫すると突然死。伸展位で安定、屈曲位で悪化。
3)ハローベスト装着による頸部可動性の消失
4)輪状披裂関節の拘縮:RA Ptの30%程度。声帯固定でチューブ入りにくい。喉頭部痛、嚥下痛、嗄声。発赤や声門部の狭窄あれば抜管後の気道閉塞にも注意
5)下顎後退retrognathia:部分的に側頭下顎関節の破壊による下顎コンディル突起の短縮による
○RAのdifficult airwayの対応 2)3)が多い
1)直の薄いブレード(ミラーブレイド)を使用
2)ラリンゲルマスクエアウェイLMA:全麻、筋弛緩薬使用下に喉頭鏡を使って挿入
3)気管支ファイバースコープを使用:ファイバー挿管口マスク法
 ジアゼパムで導入
 小児用マスクで口のみマスク換気可能を確認
 筋弛緩薬使用
 経鼻挿管。一方の鼻孔を綿球で詰めて
 ファイバースコープは気管内、カリーナ直前まで挿入する
*全身麻酔導入後に頸椎を中間位に保ったままエアウェイスコープAWSで挿管
*自発呼吸温存下経鼻挿管
・fentanyl25~50μg分割投与
 Midazolam0.5mg~1.0mgずつ分割投与
 輪状甲状間膜から4%リドカインで喉頭に麻酔して激しい咳を防止
 鼻腔消毒、リドカイン+アドレナリン(フェニレフリン)使用し#6.0mm tube 10cm挿入
 気管支ファイバーを進めて気管分岐部を同定してチューブ挿入留置
 Propofol等で眠らせる
*術中の体位:長期ステロイドで易骨折性、皮膚脆弱性に注意。体位変換による頸椎症の増悪に注意。
*術後疼痛管理:fentanylによるIV-PCA25-50μg/hr
*周術期危機管理
◌術後、病棟での循環不全
・循環血液量不足(術中の輸液不足や、術後の創からの出血)
・急性副腎不全:長期ステロイド使用による
・心筋梗塞や狭心症、輸液過多による心不全
・術後使用薬剤によるアナフィラキシーショック
・術前に見つかっていない下肢静脈血栓の遊離による肺塞栓
◇ 新井達潤ら 慢性リウマチ患者の麻酔 第4回日米麻酔会議招待講演 日臨麻会誌vol17, no10, 1997, p621-629
*14年目麻酔科医の専門医試験対策ノート 2012年4月20日
*自省と研鑽を促すための麻酔科医ノート2011年8月9日     <4/7/2017>

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90.07.01. 喘息の麻酔管理

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90.07.01. 喘息の麻酔管理
○ [要旨] :喘息Ptの麻酔管理は気管支狭窄を避け気管支拡張を起こすことに焦点が集まっていた。しかしながら喘息の定義が過去10年の間に変化した。喘息は気道の中心部から末梢気道、肺の実質に及ぶ炎症の過程によって特徴づけられる臨床的症候群と定義されるようになった。この概念を心に入れて、喘息は頻度も重症度も世界的に増加している普通の疾患であり、麻酔薬と手技の合理的な選択は必須のものである。この様に我々は喘息のあるPtに対して薬理学的及び麻酔的アプローチの最新情報を追い求めている。実行可能ならば区域麻酔が好ましいが、それは気道刺激と術後合併症を減らすからである。全身麻酔が避けられないならばラリンゲルマスクが気管内挿管より安全である。リドカイン吸入は単独あるいはalbuterol(サルブタモール)と併用でヒスタミンで誘導される気管支収縮を最小化する。プロポフォールとケタミンは気管支収縮を抑制し、麻酔導入中の気管支収縮bronchospasmのリスクを減らす。プロポフォールは気道中枢側の拡張を起こし、エトミデートやチオペンタールよりも信頼できる。ハロタン、エンフルラン、イソフルランは気管支拡張の効能があり、喘息重積状態でも助けになりうる。セボフルランは喘息Ptでは議論のある結果を示した。ベクロニウム、ロクロニウム、シスアトラクリウム、パンクロニウムは気管支収縮を誘導しない。アトラクリウムとミバクリウムは投与量依存性にヒスタミンを遊離し、これらのPtには注意して投与されるべきである。麻酔薬の肺内での活動部位についてのさらなる知識は我々の喘息の病態生理学に対する理解と同調して、喘息を持つ人々に対する最良の麻酔的アプローチを確立するであろう。

○ 喘息は公衆衛生上の大きな問題であり、有病率も高く増加しつつあり、罹患率・死亡率の増加も伴っている。種々の研究によれば生涯の喘息の有病率は成人で11%で、小児ではそれより幾分高い。これらのデータは喘息のために起きる有害な出来事を生じるより広範な状況を麻酔学的実践において挑戦的なものにするのに貢献する。
・それ故、周術期の合併症のリスクの増加を避けるために喘息の病態生理学をよく理解し十分な術前評価をなし、Ptの状況を最適なものにし、最良の薬理学と技術的アプローチと協同することは緊急の問題である。
・喘息の病態生理学的証明は平滑筋の収縮による気道の口径の減少、血管のうっ滞、気管支壁の浮腫、頑固な分泌である。慢性の炎症過程は組織障害とそれに続く再編成である。「気道のリモデリング」という言葉はこれらの構造的変化の進展を言及するのに広く使われている。それは上皮の脱落、上皮下の線維化、上皮内の粘液細胞の数と容積の増加、気道平滑筋の過形成・肥大、気道壁の血管造成などである。細胞外基質、平滑筋、粘液線のこれらの変化は1秒量forced expiratory volume in 1s(FEV1)の減少と気管支の過反応性によって明示される喘息Ptの気道の機能に影響する力を有している。
・気管支痙攣bronchospasmと粘液栓は吸気、呼気の気流をともに閉塞する。呼気気流の抵抗は呼気終末に陽圧の肺胞圧になり、それはair-trappingを生じ、肺と胸郭の過膨張、呼吸仕事量の増加、呼吸筋の機能の変更を生じる。気流の閉塞は一様ではなく灌流するための換気のミスマッチが起こり、動脈血液ガスの変化が起きる。
・喘息の定義は過去10年のうちに変化した。喘息は中枢気道を越えて、末梢気道と肺実質へ広がる炎症過程によって特徴づけられる臨床症候群と定義されている。細気道small airwayが最近、気流閉塞と過敏反応性の部位として認識されている。
・これらの新しい病態生理学的所見を考慮して我々はこのレビューを喘息Ptの麻酔管理のために利用できるデータと基準を概略述べることを試みた。

[方法 methord] 1995―2005, PUBMED, airway obstruction, asthma, bronchial hyper-activity, anesthesia, anesthetics 222文献

[麻酔管理戦略 anaesthetic management strategy]
○[術前評価]
・麻酔科医の責任は術前にPtの肺機能の評価から始まる。Warnerらは喘息Ptの周術期の気管支痙攣bronchospasmと喉頭痙攣laryngospasmの頻度は驚くほど低いということを観察した。彼らは周術期bronchospasmと関連した3因子を確認した。:抗気管支痙攣薬の使用;最近の症状の再燃;最近喘息治療のために内科病院で受診したことである。それで彼らは次のような結論に到達した。
1)喘息はあるが症状のない人は麻酔による重大な有病のリスクは低い、
2)しかしながら喘息のある人は低いけれども重大な有病のリスクは増える、
3)喘息の前歴のない人にも気管支痙攣bronchospasmによる有害な結果は起きる。
・この観点から喘息のPtへのアプローチは反応性の気道疾患の経験の詳細な病歴を含めて次のことを調べるべきである
1)最近の上気道感染症、2)アレルギー、3)喘息に陥る可能性のある因子、4)薬物の使用、発作を引き起こすことができる薬物を含めて、同様に発作を予防するために使われる薬物、5)夜間あるいは早朝の呼吸困難。
さらにPtの気管支の反応性をよりよく理解するために、彼または彼女が寒冷気、ほこり、煙に耐えられるかどうか、以前に彼または彼女が全身麻酔下の気管挿管に耐えられたかどうか知ることは重要である。気管挿管を要するような喘息重積発作のエピソードの記録は、周術期の経過が困難になる前兆である。
・薬物は一般的に喘息の急性のエピソードの導入と関連している。薬物に誘導された気管支の縮小を認識するのは重要で、選択的β1-adrenergic antagonistsは喘息のある人の気道を一般的に閉塞するので避けられるべきである。
・気管支喘息、鼻ポリポージス、アスピリンあるいはアスピリン様の化合物に不耐性の3兆候はアスピリン誘導喘息(AIA)あるいはSamter’s syndromeと名付けられている。これらのPtでは非ステロイド性抗炎症薬NSAIDsと著しい交差感受性があり、重大なbronchospasmと有害な反応を引き起こすかもしれない。それ故、このようなPtはアレルギークリニックに行かせて鎮痛薬の交差反応性の可能性、麻酔薬に対する不耐性を評価してもらうことが重要である。
・肺の理学的検査では正常または喘鳴and/orその他の外膜音が明らかになるかもしれない。術前の喘鳴は周術期経過が困難になると予想される。実際もしも重大な喘鳴の既往と、喘鳴を診察時に聴取したら呼吸器内科に相談することが奨められる。
・喘息の重症な症例では動脈血液ガスや肺機能のような臨床検査を行って呼吸障害の程度を分析することが奨められる。術前のスパイロメトリー検査は気管支拡張治療に対する反応の回復程度と同様に気道閉塞の存在と重症度の評価に意味がある。FEV1の15%の増加は臨床的に重要である。
・喘息Ptでは胸部Xpは急性喘息発作時でも正常である。

○[喘息の術前管理 preoperative management of asthma]
・可逆性の気道閉塞及び気管支反応性を有するPtではβ2-adrenergic agonist及びコルチコステロイドを使った術前の治療が考慮されるべきである。β2-adrenergic agonistは気管内挿管に続いて起こる気管支収縮を減じることが示されている。この介入によってさえも著しい気管支収縮と喘鳴は挿管に続いて起こる。
・コルチコステロイドとβ2-sdrenergic agonistの複合治療は術前の肺機能を改善し、気管内挿管に続いて起こる喘鳴の頻度を減らす。周術期のコルチコステロイドによる創治癒と感染症に関する否定的な効果についての心配は、周術期のコルチコステロイドによる予防的治療を喘息Ptの研究では立証されていないが、コルチコステロイドで治療された喘息Ptは外科的処置を受けても合併症の頻度は少ないというエビデンスがある。この様にコルチコステロイド[methylprednisolone(40mg/day orally)]とサルブタモールによる術前の複合治療は可逆性の気道閉塞あるいは重症の気管支の過反応性の既往のあるPtで挿管で引き起こされる気管支収縮を最小にすることができる。
・Enrightによれば喘息の術前管理には次のような方法を含むべきである
1. bronchospasmは吸入β2-agonistで治療されるべきである
2. Ptが合併症のリスクに当面しているならば、術前にprednisone 40-60mg/dayあるいはhydrocortisone 100mg/8h毎 iv が奨められる。術前のFEV1<80%が予測される人はだれでもステロイドを受けるべきである
3. 感染症は抗生物質を使って根絶せらるべきである
4. 体液と電解質の不均衡imbalanceは補正されるべきである。高用量のβ2-agonistは低K血症、高血糖、低Mg血症を起こす。その様な不均衡に加えてβ2-agonistへの反応が減少し、不整脈を起こす傾向がある
5. mast cellの脱顆粒及びmediaterの放出を防止する予防的cromolyn治療は続けられるべきである
6. 胸部理学療法は痰のクリアランスと気管支のドレナージを改善する
7. 肺性心cor pulmonaleのようなその他の病態は治療せらるべきである
8. Ptはカルボキスヘモグロビンのレベルを減らすために喫煙をやめるべきである

○[麻酔法の選択 choise of anaesthetic technique]
・喘息に伴った気管支の過敏反応は周術期のbronchospasmの重要なリスク因子である。この潜在的に生命を脅かす麻酔実施中の状態は0.17%から4.2%までさまざまに変わる。全身麻酔の間に気管挿管の有無にかかわらず肺容量の減少と気道壁の液体層の増加に伴って、口蓋あるいは喉頭筋の張力の減少がある。この因子は不安定な気道の状況、気流閉塞及びかなり大きな気道抵抗を起こし易くする。
・気道に医療器具を使用することは副交感神経系を介して反射性の気管支収縮を起こす。加えて気道の機械的刺激は末梢のC-線維の求心路の端末を活性化することがエビデンスで示されている。これらの神経線維はsubstance Pとneurokinin Aを放出して、それらは血管透過性や気管支平滑筋収縮及び局所的血管拡張の増加を生ずる。麻酔科医の目標はbronchospasmを引き起こすリスクを最小にし、刺激のきっかけを避けることであるべきである。
・Groebenらは気管内挿管の効果を、局所麻酔下に気管内挿管を受けた症状のない軽症の喘息を持つ10名のボランティアでの無作為二重盲検試験で明らかにした。彼らは挿管の前後で肺機能検査を行い、操作後にFEV1の50%以上の減少を観察した。しかしながらβ2-adrenergic agonistと局所リドカインの予防的投与後にFEV1の減少は低かった(20%)。
・要約すれば喘息Ptでは気道に器具を挿入することは避けることが望ましく、同時に術後の合併症を減らすだけでなく、区域麻酔がいつでもこの目的のためには考慮されるべきである。
・妊娠は喘息の経過に悪影響を及ぼし、周術期のリスクを増やす。このような訳で区域麻酔は妊娠した喘息Pt及び出産のために選択すべき技術である。特にもしもプロスタグランディンとその誘導体が中絶や手術的分娩のために投与されているならば。
・区域麻酔が実行可能ではなく全身麻酔が求められる時、予防的な抗閉塞治療、揮発性麻酔薬、プロポフォール、オピオイド、適切な筋弛緩薬の選択は麻酔のリスクを最小化する。これに加えて、フェイスマスクとラリンゲルマスクエアウェイの使用は気道の被刺激性が少ないと報告されている。KimとBishopは52人の非喘息Ptで全身麻酔下に気管内チューブかラリンゲルマスクエアウェイを受けたPtの気道抵抗(respiratory system resistence:(Rsr))は気管内挿管を受けたPtよりLMAのPtの方が低いことを観察した。この結果はLMAの使用は気管内挿管よりもより確かな代替案であるという考えを支持している。

[前投薬premedication]
・Ptの十分な鎮静は周術期合併症を避けるためになされるべきである。この目的のためにbenzodiazepineベンゾジアゼピンは安全で気管支の状態を変えない。これに関連してKilらは経口のミダゾラム(0.5mg/kg)の投与は歯科治療を受ける軽症から中等症の喘息の小児で酸素飽和度、呼吸数、脈拍を変えないということに気付いた。それ故、ミダゾラム0.5mg/kgの投与は軽症から中等症の喘息のPtの鎮静のために安全で効果的な手段である。

[吸入麻酔薬 inhalational anaesthetics]
・吸入麻酔薬は気管支拡張作用を有し、気道反応性を減じ、ヒスタミン誘導性のbronchospasmを減らす。そのメカニズムはβ adrenergic receptor刺激が細胞内のcyclic AMPの増加へと導くことによると考えられている。これは直接的な気管支筋の弛緩効果を持っている。増加したcAMPは気管支myoplasm筋細胞原形質内で遊離のカルシウムを結合し、ネガティブフィードバックによって弛緩を生じる。それは抗原抗体を介して酵素生成、さらに白血球からのヒスタミン遊離をも妨害するかもしれない。
・このような理由でハロタン、イソフルランのような揮発性麻酔薬は閉塞性気道疾患のPtにおける全身麻酔の方法として永年推奨されてきたし、喘息重積状態の治療としても有用である。デスフルランは例外で分泌を増加し、咳、喉頭痙攣、気管支痙攣を生じうる。
・今までのところセボフルランを使った研究は論争を引き起こしそうな結果を示している。Rookらは喘息のないPtで気管挿管後にセボフルラン、イソフルラン、ハロタンの気管支拡張効果を比較した。彼らの研究ではハロタンは気道抵抗性Rrsの減弱でイソフルランより有意に有効とは言えなかった。それでもなおセボフルランはハロタンやイソフルランよりもRrsを減らした。
・Habreらは喘息のある小児とない小児でセボフルランで麻酔して肺機能を研究した。軽症から中等症の喘息のある小児でセボフルラン麻酔下の気管内挿管はRrsの増加を伴っており、喘息のない小児では見られなかったと結論付けた。にも拘らず明らかな臨床的に有害なイベントは観察されなかった。そしてScalfaroらの研究によればセボフルラン麻酔の前に吸入サルブタモール投与による治療はRrsの増加を予防できた。
・Correaらはセボフルランで麻酔された正常ラットで呼吸メカニズムと肺の組織学的分析を行った。セボフルラン麻酔は気道レベルには作用せず、肺の末梢で肺組織を固くし、器械的不均一性を増加させることを認めた。さらに加えてTakalaらはブタでセボフルラン麻酔後に気管支肺胞洗浄液の中に肺の炎症性メディエータが増加しているのを評価し、セボフルランは肺のロイコトルエンC4、NO3-、NO2-産生の増加及び炎症反応を示唆していることを報告した。

[静脈麻酔薬intravenous anaesthetics]
○Ketamineケタミンは静注全身麻酔薬で交感神経興奮性の気管支拡張作用を持ち麻酔と挿管が必要な喘息Ptで可逆性の喘鳴を予防する効果ゆえに魅力的な選択であると考えられている。ケタミンは気管支の筋組織を弛緩させ、ヒスタミンで誘導された気管支収縮を予防し、麻酔導入中のbronchospasmのリスクを減らす。この効果は気管支筋への直接作用と同時にカテコラミンの相乗作用が起源である。それでもケタミンは気管支の分泌を増やすのでアトロピンやglycopyrrolateのような抗コリン薬が共同して使われる。幻覚がケタミンの最も不快な副作用でベンゾジアゼピンでの鎮静を行って小さくすることができる。しかしその効力は対照試験control trialでは示されなかった。以前の研究でケタミンの中枢気道に対する効果が分析されていたが、Albes-Netoらはラットで前もって存在する気管支収縮なしでケタミンは気道レベルではなく肺末梢に作用し、機械的不均一性を増加させ、それは末梢気道の拡張と肺胞の虚脱から生じるのかもしれないということを観察した。
・BrownとWagnerはケタミンとプロポフォールの直接的及び反射誘導された気道収縮に対する局所的な気道に対する効果を調べた。彼らは非喘息動物モデルでケタミンとプロポフォールを直接気道投与 対 気管支動脈投与して、ケタミンとプロポフォールの気管支保護の主たる機序は神経誘導された気管支収縮の抑制であると結論付けた。

○プロポフォールpropofolは広く使われている短時間作動性静脈麻酔薬で、他の薬物より麻酔導入中の気管支収縮が少ないと考えられている。In vitroのデータではプロポフォールは気道平滑筋弛緩作用を持っている。Pizovらは無作為比較臨床試験で麻酔導入のために静注麻酔薬を受けた無症状の喘息Ptと非喘息Ptで喘鳴の頻度を評価した。彼らの観察では喘息Ptも非喘息Ptも両方とも導入にチオバルビツレートを受けたPtはプロポフォールを受けたPtより喘鳴の頻度が多かった。同時にEamesらは喫煙の頻度が多い非喘息Ptの集団においてチオペンタールとエトミデートとプロポフォールを比較して呼吸系の抵抗Rrsを評価した。それによるとプロポフォール麻酔で気管内挿管したPtはチオペンタールや比較的高用量のエトミデートを使ったPtよりもRrsは低かった。喘息がある小児と持たない小児でプロポフォール麻酔の効果を比較するためにHarbeらはプロポフォール、フェンタニルとアトラクリウムで麻酔導入して、プロポフォールの注入と50%N2OとO2で維持した。最終結果は呼吸メカニズムは小児で喘息があってもなくてもプロポフォール麻酔では麻酔メカニズムに変化はなかった。これに関連してPeratonerらは正常のラットで呼吸メカニズムに対するプロポフォールの効果を分析した。そしてこれらのパラメータと肺組織を関連付けてプロポフォールの作用部位を決定した。彼らの観察ではプロポフォールは気道レベルで作動し、中枢気道の拡張の結果として気道システムと肺のインピーダンスを減少させる。
・前述のことを根拠としてプロポフォールはタイミングの良い挿管を要する喘息のPtにとって安全であると考えられる。それにも拘らず、NishiyamaとHanaokaはプロポフォール導入に続いて気管支収縮を起こした2症例を報告した。両Ptはアレルギー問題を持っていて、プロポフォールは卵黄レシチンyolk lecithinと大豆オイルsoybean oilを含んでおり、それが問題を起こしたことは特に明確なことであると仮定された。それによって、プロポフォールはアレルギーのあるPtや薬剤性喘息のあるPtでは注意して使用されるべきである。

[オピオイド opioids]
・オピオイドはヒスタミン遊離するが、気管支反応性が増加したPtでも安全であると考えられている。フェンタニルとその相似体analogueはしばしば麻酔導入に使われているが胸部強直を引き起こし、bronchospasmと誤解される。ゆっくりivすればこの効果はほとんど見られない。しかしながらオピオイド投与後に得られる咳嗽反射の抑制と麻酔レベルの深化は喘息Ptには助けになる。

[筋弛緩薬 muscle relaxants]
・どのタイプのムスカリン受容体が刺激されるかによって、気管支の張力が増加するか減少するかが予測される。M2受容体に作用する筋弛緩薬(ガラミン、ピペクロニウム、ラパクロニウム)はM3受容体よりも気管支収縮を起こし、高める。一方,M3受容体に結合すると思われる筋弛緩薬はM2受容体以上あるいは少なくとも同様にはbronchospasmを起こさない。それらに含まれるベクロニウム、シスアトラクリウム、パンクロニウムは安全であると考えられる。
・ムスカリン受容体に対するこれらの直接効果に加えてアトラクリウム、ミバクリウムは投与量依存性にヒスタミンを遊離し、気管支収縮の引き金として考えられ、喘息Ptでは注して使用されるべきである。
・さらに手術の終わりに筋弛緩薬の拮抗reversalにネオスティグミン、フィゾスティグミンは除脈を生じ、分泌物を増加し、気管支の過剰反応性を示すので避けられるべきである。この目的のために筋弛緩薬の投与は手術の終わりには切れるように調節されるべきである。

[局所麻酔薬 local anaesthetics]
・アミド型の局所麻酔薬は自律神経線維の遠心系、求心系神経伝達及び咳嗽や気管支収縮反射のような自律神経反射の減弱あるいは遮断さえ行い、リドカインの中毒閾値の5mg/mL以下の血清濃度で抑制される。喘息のあるボランティアで静注リドカイン1~2mg/体重kgはヒスタミン誘導性の気管収縮を減弱し、気管内吸引や挿管などの気道刺激の反応を減弱させるために使用することができる。Groebenらは覚醒した人で、リドカイン静注と吸入albuterolサルブタモールは単独で投与された時にヒスタミン閾値を十分に増加させた。彼らは気管挿管によるbronchospasmの反射を予防するために術前の治療として吸入albuterolサルブタモールとリドカイン静注を推奨した。代わりにMaslowらは60人の喘息Ptで研究たところ、吸入albuterolサルブタモールは喘息Ptの気管挿管で気道反射を抑制したが、一方リドカインは抑制しなかった。
・リドカイン吸入はその全身投与よりも低い血清濃度で気道刺激反射を抑制する。気管支反応性は軽度の気道の炎症が先行していてもβ2-adrenergic agonistによる前治療で避けられるか、または局所麻酔のための4%溶液2mg/kg投与のリドカインで最小化される。これは最小の気道炎症を持った気管支の過反応性を減弱させるレジメである。加えてHuntらは軽症から中等症の喘息のある50人を対象者としてplaceboあるいはリドカイン4%を8週間投与のどちらかで治療した。その結果はリドカインのネブライザーは有効な治療であった。
・さらに局所麻酔薬は硬膜外から血中に吸収されて化学的刺激に対する気道の過敏性を減弱した。Shonoらは気管支喘息のある男性の症例で2%リドカインで持続硬膜外麻酔を行って、硬膜外注入後に喘鳴は徐々に消失し、持続硬膜外リドカイン注入155分後には完全に消失した症例を報告した。リドカイン持続注入中止後55分で喘鳴は再び出現した。これは喘息Ptにおいて区域麻酔単独であるいは全身麻酔の併用は有効であるという仮説を裏付けるものである。

○[術中気管支痙攣の治療 treatment of intraoperative bronchospasm]
・もしも術中に喘鳴が出現したらbronchospasm以外の喘鳴の原因を除外しなければならない。(気管内チューブの機械的閉塞、気管支内挿管、肺内誤嚥、肺塞栓、肺浮腫、緊張性気胸及び陰圧吸気negative pressure inspiration など)第1段階は静注あるいは吸入経路あるいは両方によって麻酔を深くする。低酸素血症を予防するために100%酸素を投与すべきである。
・定量噴霧式吸入器でβ2-agonistを気道から投与されるべきである。機械的換気中のエアロゾル化された薬物の配分は十分ではなく、噴霧された投与量の1%から3%程度の少なさであると見積もられ、実際Ptの肺には陽圧換気で届くという事実を考えることは重要である。肺に届くエアロゾルの量は呼吸時間を増やし、呼吸数を減らしネブライザー一杯の量を増やし、Y-ピースとカテーテルcatheter mountの間に、あるいはジェットネブライザーが使える時には呼吸器回路のY-ピースの吸入側の枝にベブライザーを位置させることによって改善される。
・エピネフリンの皮下注あるいは静注は重症のbronchospasmのPtを助けることができる。コルチコステロイドも利用されるがその活性の発現には投与後、4-8時間を要する。
・ロイコトルエン受容体拮抗薬と肥満細胞mast cell阻害薬は急性の気管支痙攣には役に立たない。アミノフィリンの静注は始めてよいが、頻脈、血圧上昇により、有用性が限られる。結果としてメチルキサンチンはもはや急性の再燃には勧められない。
・スムーズな(緩徐)覚醒は気管支攣縮のリスクを最小にする。導入時に気道確保困難がなければ、深麻酔下の抜管を試みることができる。もしも深麻酔下抜管が禁忌ならばPtは麻酔回復室post anesthesia care unitに挿管されたまま、気管内チューブに容易に耐えられるようにオピオイドを投与される。Ptが覚醒して適切な気道反射があるならば抜管する。抜管時にbronchospasmを予防するためにリドカイン静注が使われるかもしれない。

○[喘息重積状態時の吸入麻酔薬 inhalation anaesthesia in status asthmaticus]
・喘息重積状態は気管支閉塞の程度が発症時から重篤であるか、悪くなってから通常30~60分の治療で軽快しないものをそう呼ぶ。治りにくい(手におえない)喘息重積という用語は積極的薬物介入にも拘らずPtの悪化が24時間以上続く状態をいう。
・従来の気管支拡張薬が失敗した時には集中治療医はケタミンや吸入麻酔薬などの薬をしばしば使用する。この様な状態で深い鎮静は酸素化を改善するだけでなく中枢の代謝的必要条件を減らす。
・ハロタン、エンフルラン、イソフルラン、ジエチルエーテルなどの吸入麻酔薬による治療が治りにくい喘息重積発作の管理に成功裏に使われてきた。Iwakuらは喘息重積状態のPtをイソフルラン吸入で治療し、1回換気量 tidal volume、pH、PaCO2が麻酔後改善しこれらのPtをICUに入室させ人工換気を行ってイソフルランで治療しなかったPtよりもその時間が短かったことを確認した。
・QueとLusayaは帝王切開で出産中に喘息重積状態のPtにセボフルランを使って成功した。Schltzは26歳の女性で、郊外の救急病院の救急部で従来の治療で失敗した喘息重積状態のPtにセボフルランを使ったと報告している。セボフルランをおよそ150分投与し、Ptの状態を安定させ、3次施設へ固定翼の飛行機で輸送した。Mazzeoらは8歳の少年をケタミンとセボフルランで治療し、重篤な長時間の高炭酸血症hypercapneaにもかかわらず血行動態が不安定になることなく治療した。酸素化は続けられ合併症なく成功裏に回復した。

○[結論 conclusions]
・いくつかの麻酔薬が手に負えない喘息重積状態にさえ使用されている。それにも拘らず喘息の病態生理の理解が変化したという事実、我々がしばしば使っている麻酔薬が、喘息Ptでみられる慢性炎症を起こし過敏反応があり、リモデリングした肺の活性の部位や機序についての記載はない。
・これらのメカニズムの知識は麻酔管理における大いなる変革を刺激し、麻酔科医と集中治療医がこれらのPtに麻酔薬と技術を最適化させるであろう。そして過反応性を抑制し、気管支拡張を起こすだけでなく、基礎にある炎症過程とリモデリングを減少あるいは抑圧するのに効力がある新しい薬物の開発を研究者に働きかけるであろう。それ故、麻酔の合併症と不利益な事象は強く最小化され、Ptにも医師にも有益になるであろう。 
◇ S.M. Burbran et al. Anaesthetic management in asthma MINERVA ANESTESIOL 73, 2007, p357-65    <3/25/2017>

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10.08.03.04. 術中のフェンタニルの使用方法


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10.08.03.04. 術中のフェンタニルの使用方法
・通常使用しているfentanylの投与量では血中濃度(または効果部位濃度)は1.0~2.0ng/mL程度
・MACは麻酔薬の脊髄反射の抑制度を見たものでありMACawakeは麻酔薬の大脳への作用と関連したもの
・通常のfentanylの使用ではSevoflurane麻酔からの覚醒にほとんど影響しない
・1.0~3.0ng/mLのfentanylはpropofol麻酔からの覚醒に影響していない
・fentanylは基本的に麻酔からの覚醒にほとんど影響しない----麻薬の使用により覚醒遅延が生じるのではなく覚醒遅延の大部分は麻酔薬の相対的または絶対的過剰投与
・麻酔薬濃度の上昇による血圧低下作用は心血管系への直接作用の結果であり、侵害入力抑制の結果ではない----従って術中に麻酔薬濃度を調節する意味はほとんどない。術中の侵害入力を適切にコントロールするためには硬膜外麻酔などの神経ブロック、もしくは麻薬を使用する必要がある
・無意識や無記憶が得られていれば、それ以上高濃度の麻酔薬は必要ない
・fentanylは代謝物の活性は無視できる
・一般的にはfentanylは効果部位濃度が0.8~1.0ng/mL以上で鎮痛効果を発揮する。また2.0ng/mL以上になると呼吸抑制を生じる危険性がある。しかし同一薬物効果部位濃度に対する感受性の個人差がある
・一般的には麻薬を単独で使用している場合には痛みを感じている濃度では呼吸抑制が生じることはない
・術中に適切な鎮痛効果を得るために必要な効果部位濃度は1.5~3.0ng/mL程度。呼吸抑制が生じる効果部位濃度は2.0ng/mL以上である→最悪でも覚醒時のfentanylの効果部位濃度は維持時の2/3にさえなればよい
・一般に侵害刺激は交感神経系を緊張させ、結果として血圧上昇や心拍数増加をきたす。特に心拍数増加は血圧上昇よりも信頼できる指標である。手術刺激に反応して心拍数増加が認められる場合には、fentanylの効果不足を疑い1.0㎍/kg程度追加投与する。術中の体動や自発呼吸の出現も鎮痛効果不足の兆候。
・1.0㎍/kgのfentanylを追加投与しても効果部位濃度は20~30分程度で追加投与前のレベルに復する。手術終了間際であってもfentanylの効果が不足していると判断された場合は追加投与すべき
・気管チューブ抜管後にPtが創部痛を訴えた場合には、その時点で1.0㎍/kg程度のfentanylを追加投与する
・麻酔薬投与中止後、麻酔薬濃度が高いうちに覚醒してきたら(血圧上昇、心拍数増加、自発呼吸の早期発現および頻呼吸などは鎮痛効果不十分のサイン)fentanylを成人なら1.0㎍/kg、小児(幼児以上)なら2.0㎍/kgを追加投与する
・覚醒時に創部痛を訴えたり、不穏になったり高血圧や頻脈が生じたりする大部分の原因は鎮痛不良。鎮痛が十分であれば抜管前後に降圧薬やβ遮断薬が必要になることはほとんどない
・覚醒させるときに呼吸抑制が生じた場合:麻酔薬を中止後、自発呼吸は出現したが呼吸回数が10回/分未満になった場合、麻薬による呼吸抑制。(8回/分以上でも可)
ナロキソンによる拮抗:ナロキソンン0.2mg/2mL/1Ap+NS8mL⇒0.04mg/mL→ナロキソンNS 3mL=0.12mg   成人の場合0.04mgずつ2回までivして経過を見る。呼吸数10~12回/分程度になればOK.拮抗できたらナロキソン0.12mg im
ナロキソンNS 2mL(0.08mg)投与しても拮抗困難な場合はfentanylがかなり過量投与。
・麻薬使用時の術後悪心嘔吐(PONV)に対する対策:女性の手術ではTIVA麻酔が有効(propofolの制吐作用)  droperidol1.0mg程度iv(0.4mL)。droperidol25mg/10mL/1V=1.25mg/mL=1.0mg/0.4mL=0.625mg/0.25mL
○古い文献でremifentanil以前の論文であるがfentanylの使用上の注意がよくわかる
◇萩平哲 術中のフェンタニルの使用方法について 日臨麻会誌Vol26, No7, 2006, p638-645     <2/20/2017>

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120.03.02. 周術期Ptのリスク階層化モデル

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120.03.02. 周術期Ptのリスク階層化モデル
○ 術前評価
1)ASA-PS
Ⅰ.  正常健常Pt
Ⅱ.  軽度の全身疾患を有するPt:喫煙者、機会飲酒、妊娠、肥満(30Ⅲ.  軽度の全身疾患を有するPt:1つあるいは複数の中等症~重症の疾患を持つ、コントロール不良のDM・高血圧、COPD、病的肥満(BMI≧40)、活動性肝炎、アルコール常飲・依存症、永久ペースメーカー、中等度の左室駆出障害、定期的に透析を受けている末期腎不全、未熟児、受胎後<60週、心筋梗塞(≧3ヶ月)、脳血管障害、一時的脳虚血発作、冠動脈疾患、冠動脈ステント挿入
Ⅳ.  生命を脅かす重度の全身疾患のあるPt:最近の心筋梗塞(過去<3ヶ月)、脳血管障害、一時的脳血管障害、冠動脈疾患がありステント挿入後、進行する心筋虚血、重症弁疾患、左室駆出率の高度の低下、敗血症、播種性血管内凝固、急性腎不全、定期的には透析を受けていない末期腎不全
Ⅴ.  手術の如何にかかわらず救命の可能性が低い瀕死のPt:腹部/胸部大動脈破裂、重症外傷、mass効果がある頭蓋内出血、心疾患があるPtの腸管虚血、多臓器不全
Ⅵ.  脳死Pt:臓器移植ドナーとなる脳死Pt

・リスクの低いPtにおける死亡率の予測には優れている。合併症が起きなかったPtの96%を正しく予測できた一方で、合併症を起こしたPtの16%しか予測できなかった

2) Revised Cardiac Risk Index
1 高リスク手術(開腹術、開胸術、腸骨動脈より中枢の血管手術
2 虚血性心疾患の既往
3 うっ血性心不全の既往
4 脳血管疾患の既往
5 インスリン投与の糖尿病
6 術前血清クレアチニン値>2.0mg/dl

6つの因子のうち2つ以上が存在すると周術期イベント(心筋梗塞、肺水腫、心停止など)の発生率が増加する
・非心臓手術の術後に心血管系合併症を発症する群としない群を区別する指標として優れて
いる。CRPやNT-pro-BNPを組み合わせると予測能力がupする。血中クレアチニン値、
eGFR cut point、年齢、末梢血管疾患既往歴の有無、機能的能力、手術手技の違いを因子
として加えると予測能力が改善する。
3) Surgical Apgar Score(SAS)
 01234
推定出血量(mL)>1000601~1000101~600≦100 
最低平均血圧(mmHg)<4040~5455~69≧70 
最低心拍数(bpm)>8576~8566~7556~65≦55

推定出血量、術中最低平均血圧、術中最低心拍数を点数化し、その合計点は術後の重大合併症の発生率と相関する。  合計点数が大きい程、正常。
・開腹手術と血管手術では術後30日以内の重大合併症発症と強く相関する。
◇ 小川真生ら:誌上抄読会 臨床麻酔vol40, No12, 2016, p2707-2712

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